第60話 幼女吟味 ~えっ? コース料理ですか?~
カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。
「前菜で御座います」
「うぉーっ、イタリアン形式のコース料理か」
「あらまぁ、うふふぅ♡」
伯爵邸の食堂で、ヘルと私は、出された料理に驚愕した。 下町の感覚がアレだったので、期待度は高くなかったのだが、大違いだ。
これってアレだね。 貧富の差ってヤツだ。
尤も、いくら貴族とはいえ普段からコース料理が出るとは思えないので、少し特別なお祝い料理的なモノなのだろう。
油がふんわり浮かび上がっているのだが、灰汁を綺麗に取っているのか、黄金色で澄んでいる。
「コレは?」
「オークの骨から丁寧に抽出した、旨味スープです」
「おおぅ、豚骨の一種か!」
「変わった味ですけど、美味しいわぁ」
それに朗報もある。 中世ヨーロッパでは存在しなかったスプーンやフォークがあるのだ!
流石に銀のスプーンとは言えないが、少し原始的だが木製のスプーンやフォークが存在する。 まあフォークと言っても、二股に分かれたスパイクみたいなモノだったりするのだが。
しかし手掴みすら覚悟していたので、自前で用意したマイ箸が無駄になったな。
時代考証? 細かいことは良いんだよ! 異世界なんだし。 このスープだって香辛料の味がするが、美味いのだから問題無しだ。
否応なしに期待が膨らむね。 ひゃっほーっ!
スープを堪能し、次の料理を待つ。 わくわく。
「オードブルで御座います」
「もしもし? ナゼに今度はフランス形式?」
「ベイナ様ぁ、何を言っているのですかぁ?」
「いや良いんだ。 葛藤を感じないワケではないんだが、大した事じゃない」
出てきた料理は、パテだか煮凝りだか分からないものだが、コレはコレで良いモノだ。
「コレは?」
「オークの肝臓のパテで御座います」
「ああ、オークのコース料理なワケね」
「何だか全体的にネチョっとしててイマイチですぅ」
だよね。 パテなんて美味しいモノじゃないよね。 肝臓って好き嫌いが分かれるし、個人的にもフォアグラ系統はあまり好きじゃないんだ。 だって日本人なんだもの。
ムワッて言うか、ネチョっていうか、どうして柔らかい食材を摺り潰すしちゃったのか、小一時間ほど説教をしたくなる。
タダでさえ微妙な料理なのに、量がアメリカンサイズなんだ。 そりゃ文句も言いたくなるよ。
「メインディッシュで御座います」
「今度は英語かよ、無茶苦茶じゃん」
「ベイナ様ぁ、何を怒っているのですかぁ?」
「いや、怒っているワケではないんだ。 ただ、遣る瀬無いというか何というか」
「良く分からないですぅ」
だよね、でも聞いてくれ。 インチキ臭いと言うか、知っている言葉を並べただけというか、何だか釈然としないんだ。
「コレは?」
「オークの肋肉のハチミツ焼きで御座います」
「惜しい、香草焼きとか照り焼きとかが食べたかった」
「コレはコレで美味しいですよぉ」
何だろうね。 日本料理のコース料理ならハズレは少ないんだが、アメリカンなコース料理に出て来そうな残念感がある。
いや、良いんだけどね。 ヘルの言っている事は間違いじゃないんだし。 でもココでもアメリカンサイズなんだよ。 てか、お残しはしたくないんだけれど、幼女的には既に苦しいんだよ。
せめてお子様サイズにしてくれないかな? タッパーでのお持ち帰りはアリですかぁ? えっ、貧乏臭い? うっさいわっ。 こちとら代々庶民なんだよ!
「サラダで御座います」
「もう食べられないよ」
「ベイナ様って少食なんですねぇ」
「しかし、あれだけの量を、よく食べられるな」
「胃が複数個あるんですぅ。 女の子の別腹は基本ですよぉ」
「もう何処から突っ込めば良いのか分からないよっ!」
ほんと、別腹って何なんだろうね。 一説によると、胃を強制的に収縮させて、スペースを作る技術らしい。 しかも、女子の中には、意外と可能な人間が多いのだとか。
「デザートで御座います」
「取っておいてくれ。 後で食べりゅ」
「第2別腹起動ですぅ!」
「何だよ、第2別腹って!」
ヘルは意外と大食いだった。 いや、それ以前に魂が主食だとか言っていなかったか? 今更だが、どうして死神がコース料理を食べているの?
「なぁヘル、死神の主食ってホントの所はどうなっているの?」
「乙女のひみつですぅ」
あっ、ハイ。 聴くなって事ですよね。 了解です。
でもアレだな。 コース料理ってテンションは上がるんだけど、即効で飽きるというか、一度に出してもらいたいというか。
やっぱり日本人としては、ラーメンとかカツ丼とか、丼で掻き込む料理が好きだ。 寿司とか天ぷらとか、すき焼きとか鍋物とか、素麺とかざる蕎麦とか、兎に角醤油と味噌を味わいたい。
恋しいなぁ、日本食。 今回のは確かに贅沢な料理なんだろうけど、ソウルフードである米が恋しくなってしまった。
お米が食べたい、オニギリが食べたい、雑炊が食べたい、焼き飯が食べたい。
いや、むしろ炊きたてご飯に鰹節と醤油をかけて、ねこまんまにして食べたい。
ご飯に生卵と醤油をかけて、卵かけご飯にして食べたい。
今なら、米と味噌と醤油の為に、世界制服なら出来そうなきがするよ。 イギリスが紅茶の為にインドを侵略したのは、同じような気持ちだったのかも知れないな。
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カクヨム版(先行)
魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~
https://kakuyomu.jp/works/16816927862939210704
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