第53話 幼女邂逅 ~えっ? 騎士団ですか?~
カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。
さて、ハトリが人間の腕っぽいものをモチャモチャしているが、私達には時間が無いのだ。
早速、敵の主力と思われる騎士団を探す事にしよう。
「敵の騎ち団を探しゃくする」
「ですよねぇ、ヤッパリもう少し歯応えのある相手が良いですしぃ」
「ちょうだな、我々にとっては初めての人間との交ちぇんだ」
「あのぉ、さっきのはぁ?」
「我々は人間と戦った事は無いのだ!」
「あ、ハイ」
ヘルには何か不満がある様だが、やはり人間との初交戦は気を付けるべきであろう。
モンスターなどとは違って、武器も使用してくるし、防具だって備えているハズだ。 だから気を引き締めて戦うべきなのだ。
まず思いつくのは威力偵察であろうか。 一当てを行って、相手の能力や戦力を把握し、勝利を確実なモノとする。
ふむ、完璧な作戦だ。 個人としては強力ではあるが、軍団としての練度は未熟である我々には、少しばかり慎重であるくらいが重要であろう。
「ハトリとポチ、ちゅう囲を探ちゃくち、実ちゃいに交ちぇんちてみるのだ。 ちかる後に我らが増援とちて駆け付け、敵をちぇん滅ちゅる」
「ハトリちゃんとぉ、ポチはぁ、周囲を探索して実際に交戦してぇ、敵の戦力を把握して頂戴ぃ。 必要ないと思うけどぉ、何なら私達が増援に向かうからぁ」
『かしこまりー』「承知」
うむ、何だかヘルに翻訳して貰った気がしないでもないが、問題無し。 二人は意気揚々と探索に出かけて行った。
「もうちゅこち、緊張感があった方が…」
「心配いりませんよベイナ様ぁ、二人とも見事な戦果を持ち帰ってくれますよぉ」
「うむ、ちょうだと良いのだがな…」
などと思い悩んでいた時が、私にもありました。
程なくして、二人が去って行った方向から聞こえる、人間の悲鳴と、風に載ってくる血臭。 そういや蜘蛛とアンデッドだもんな。 怪我をしても血なんて流さないか。
そして何故か遠ざかって行く戦場は、時間を掛けずに収束していった。 うーむ、どゆこと?
「順調…なのか?」
「あっ、戻ってきたみたいですぅ」
『ただいまー』「帰還致しました」
おおぅ、怪我が無くて何よりだ。 さぁ、ここから私の名軍師としての腕の見せ所だぞ。
「どうだった?」
『美味しくなかったのー』「強敵は見当たりませんでした」
ん、何故に過去形?
「敵のちぇん力は?」
『全部食べたから分からないのー』
「ぶふぉ!」
「ポチは?」
「はて、適当に相手していた所、生きている者が残っておりませんでしたな」
「ぐふぁ!」
まさかの敵軍全滅? 三割とかじゃなくて壊滅、殲滅、鏖殺?
「とっ、兎に角現場に行ってみよう」
「ベイナ様ぁ、見苦しいですぅ」
「わたちは貝になりたい…」
ルンルンステップのハトリに追従して行くと、そこでは何故か鎧が散乱していた。
変だな、私ん記憶が正しければ、散乱してる騎士鎧は、1セットで最低でも一千万円くらいはしたハズだ。 安いと言われているチェインメイルでも六百万円くらいじゃなかったか?
勿論、量産品なんて存在していないので、全て鍛冶師によって作られたオーダーメイドのハズである。 日本では鎧を略奪する目的で戦に参加していた者も多いと聞くし、こっちでも大差は無いのではなかろうか?
では何故中身だけが存在しないのか? ふむ、ここは名探偵の出番かな?
『中身だけキレイに食べたのー、褒めてー』
「あっ、うん、エライエライ」
さて、一応騎士団が存在したっぽい事実もあるし、もう一方も見ておくとするか。
でもその前に、物資の回収だな。 売ればかなりの金額になりそうだし。
「落ちているわちゅれ物を回ちゅうちゅる!」
「忘れているワケではぁ、ない気がしますぅ」
「うっちゃいわっ!」
せっせと落ちている鎧やら剣やら食料などを回収し、証拠隠滅を図る。 よし、これで騎士団なんて存在しなかったって事にならないかな? いたとしてもデュラハン的な何かだったのだよ。
「次に向かうぞ」
「では今度は私の方へご案内致します」
今度はポチに追従して行くと、そこは血の海だった。 あれれ、バンパイア設定は?
私の視線に気が付いたのか、ポチが尽かさず説明を入れる。
「私は処女の血しか飲みませんので」
「グルメかっ!」
意外なポチの趣向は取り敢えず無視するとして、斬殺死体が多いな。 そう言えばバンパイアって、血を操って切り刻めるんだっけか?
それにしてもまあ、背中の傷の多い事。 これって逃げ惑った結果じゃね?
おかしいな、何だか私の知っている威力偵察と違う気がするぞ。 てか、偵察って何だっけ?
もしかして私が知らないうちに「偵察」には「殲滅」の意味が含まれる様になったのだろうか?
えっ、今回は「?」が多すぎる? そこが私も疑問なんだ。 誰か教えてくれよ。
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カクヨム版(先行)
魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~
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