第52話 幼女俯瞰 ~えっ? 傭兵団ですか?~
カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。
「ベイナ様ぁ、そろそろ起きて下さいよぉ」
「う~む、後一日~っ」
「ポチぃ、やっておしまい」
「承知」
「ぎょえ~っ」
昨日は一日、ベッドの中でふて寝をしていたのだが、二日連続はダメらしい。 くっ、ふて腐れる事すら許されないのか? 理不尽だ!
魔王認定のダメージは思いの外深く、一日中、動く気すら起こらなかった。 ホント何なん?
しかし、世間は当然の様に世知辛く、私に討伐隊を迎え撃てと言う。 憂鬱だ。 まあそれでも、このままでは事態が好転しない事も理解してはいるのだ。
仕方が無い、起きるか。
「ごはんー」
「今から用意しますねぇ」
そう言って、ヘルが朝昼兼用の食事を用意してくれる。 ふーん、意外と家庭的な所もあるんだな。
「はーい、オークとオーガの兜煮ですぅ」
「…あのぉ、目が合ったんでちゅけどぉ」
前言撤回、コイツに期待したのは間違いだったわ。
「あーれぇ、オークとオーガの睾丸煮の方が良かったですかぁ」
「ちょーゆー事じゃないからっ!」
何で寝起きから兜煮なんだ? しかも次点が睾丸煮って何だよ! ムラムラしたらどうするんだよ!
いくら異世界で生きていく心構えが出来たからって、ゲテモノ料理は無理だ。 せめて一般的な食事にして欲しい。
「好き嫌いをしているとぉ、大きくなれませんよぉ」
「ちゅき嫌いの問題じゃない!」
「仕方が無い人ですねぇ。 人間の男を2~3人シメて来てぇ、白子の酒蒸しでも作りますかぁ」
「何で精巣ちばりなんだよ!」
どうあっても私に金玉を食わせたいのか? 何の恨みがあるんだよ!
「元気が出るぅ、料理の定番らしいですぅ」
「違う方向ちぇいで元気になるわっ!」
元気を付け様としてくれるのは有難いのだが、性的に元気になるのは違うと思う。 違うよね?
「感ちゃはちゅるが、ゲテモノは却下だ」
流石に目が合ったオーガを食べる気にはなれないので、マジックバッグから取り出した干し肉を、モソモソと齧る。 うん、定番の不味さだ。
何とか水で流し込み、これからの行動方針を語る。 あっ、ハトリは窓から覗き込んでいるのね。
「今日はこれから、討伐隊を狩る」
『やったー、いっぱい狩るー』
「ふっ、ふっ、ふっ。 人間を狩るのはぁ、久しぶりで腕がなりますぅ」
「ご下命、謹んでお請け致します」
ふっ、ふて腐れていたのは私だけだったか。 そう言えばコイツらって、人類の敵だったけ。
「でぇ、どのようにぃ?」
「たーチ&デちゅトロイ、見つけちだい、殺ちぇ!」
『がんばるー』「了解ですぅ!」「承知!」
ハトリは引き絞られた矢の様に飛び出し、ポチは霧化して音も無く進行する。
それを見届けた私とヘルは、高高度からの魔力探査だ。 ふーん、まだまだ外縁部ってカンジだな。
討伐軍の進行速度は遅く、魔の森の攻略に手間取っている様だ。 見てくれだけは勇ましく、周囲にモンスターの死骸が転がってはいるのだけれど、満身創痍な者達も少なくはない。
あの死骸って、ハトリの気配にビビって逃げたヤツらだよな。 ゴブリンとかコボルトとか、多少はオークやオーガが混じってはいるとはいえ、雑魚感は否めない。
それなのに苦戦しているのはどうしてなのだろう? 思っていた以上に、この世界の人間は弱い存在なのだろうか?
あっ、突出した一人がゴブリンに囲まれて、タコ殴り状態だ。 うへーっ、マジ弱ぇ。 恰好を付けて「サーチ&デストロイ」なんて言っちゃったよ。 あんなの駆除レベルじゃん。
「なぁ、ヘル」
「何ですかぁ?」
「人間って、あんなに弱いのか?」
「ほらぁ、あそこの旗を見て下さい」
「旗?」
「あれはぁ、傭兵団の団旗だと思いますぅ」
「どゆこと?」
「それなりにぃ、実績がある傭兵団だと思いますぅ」
「マジか」
なる程ねぇ、確かに団旗を作る傭兵団なら、寄せ集めって事はないかもね。 でもなぁ、あれじゃぁアロワナにだって食べられるレベルだろ。 魔王討伐隊とは此れ如何に。
「多分、スタンピード用の人員だと思いますぅ」
「つまりはちぇん遣隊?」
「本隊はぁ、騎士などで構成されていると思いますぅ」
「アレよりはマちって事?」
要するに傭兵団は露払いって事か。 でもなぁ、仮にアレの二倍の強さでも、ハトリのブレスで一蹴されるレベルじゃね?
『見つけたのー。 やー』
おっ、早速ハトリの戦闘かな? あれ、何だか一方的な虐殺になっている気がしないでもないが、取り敢えず無視をしよう。
「いざ、参る」
ん、今度はポチが参戦かな? ってコッチも一方的な展開になってない? 気の所為なのかな?
数百人はいた気がしたが、今では数えられる程になってはいる。 多分目の錯覚なので、遠くでも眺めて気分を落ち着けるた方が良さそうだ。
あっ、断末魔が合唱してる…。 うん、ココには傭兵団なんていなかったんだな。 気の所為だよね。
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カクヨム版(先行)
魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~
https://kakuyomu.jp/works/16816927862939210704
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