第44話 幼女愛着 ~えっ? ハエトリグモですか?~
カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。
スケルトンの階層を抜けると、そこはジャングルだった。
とは言え、階層の全てがジャングルってワケじゃない。 上空から見渡してみると、山あり川あり谷ありの中にジャングルもあるってカンジで、地平線の先が見えない。
しかも最悪な事に、水平線が弧を描いていないんだ。
つまりは、地球の様な球体ではなく、何処までも平らな板の上にそれぞれが載っているカンジだったりするのだ。
それに加えて空まであったりするのだから、少なくとも地上じゃぁあり得ない光景だと言える。
まあ、まだダンジョンの中って事だな。 自然界とは思えないし。
そして散見するオーガやオーク。 うん、系統種族の階層ですらないらしい。
困ったな。 となると探すのはエリアボスか? 森の主とか川の主とか。
コレじゃあ探索方針すら立てられないぞ。
あっ、オーガが何かをイジメているみたいだ。 やる事も思い付かないから、取り敢えず行ってみるかな。
アレはハエトリグモ? いや、サイズ的には枕と同じくらい何だけれども、愛らしさは同種のモノだ。
ズングリとした茶色のボディーに可愛らしい八つの瞳。 大きく育てばタチコマっぽくなるのではなかろうか?
いや、成長するのか? ハエトリグモのモンスターだとしても、大きいのか小さいのか、大人なのか子供なのかも判らないぞ。
でもまあ、見捨てるのは無いな。 カワイイは正義なワケだし。
「ウインドカッター」
ハエトリグモに纏わり付いていたオーガ数匹を斬殺し、そっと着地して近付こうとすると、警戒したハエトリグモが、後ずさるようにジャンプした。
おおぅ、益々《ますます》ハエトリグモっぽい。 流石に英語でジャンピングスパイダーって呼ばれているだけの事はあるな。
ハエトリグモって家の中でも見かける小さな蜘蛛だけど、移動するのもジャンプしているのを良く見かけるもんな。
日本でも可愛らしい外見と、美しい瞳から愛好家も多く、タチコマのモデルになった事でも有名である。
「コワくない、コワくない」
成るべく警戒心を与えない様に両手を広げて接近する。 サイズ的には私が餌になっても可笑しくはないんだけれども、前二つにある丸く大きな瞳で見つめられるとキュンキュンする。
『敵?』
「ちがうよー、味方だよー」
『いじめる? いじめる?』
「イジメないよー」
どこでそんな言葉を覚えてくるんだか。
『ごぶりん?』
「誰がゴブリンじゃぁぁぁ~っ! あっ、逃げないでぇ、待ってぇ!」
くっ、大きな声を出したのは失敗だったか。 でもなぁ、少しはなれた所からコテってカンジで頭を傾げている姿が可愛すぐる。
出来れば愛玩動物としてテイムしたいんだけれども、何とかならないかな。
あっ、そう言えばヒドラの肉が大量にあったな。 爬虫類って鶏肉っぽいって言うし、肉食の動物は大抵トリ好きだしな。
アイテムボックスから白身っぽい部分と取り出して、見せ付ける様に振ってみる。
「食べゆ?」
『…たべる』
一歩進んでから投げ渡し、半歩下がる。
おおぅ、最初は恐る恐るってカンジだったのに、一口食べてからガツガツいってらっしゃる。
「おいちい?」
『びみぃ~♡』
「まだいりゅ?」
『もっと~』
「ほい」
さらに一歩進み、追加で数個の白身と、一つの赤身を投げ渡す。
白身を全て平らげた後に、赤身を食べだす。
「どっちがちゅき?」
「白いの~」
そうですか、ササミっぽい白身がお好みですか。 ならもっとお食べぇ。
さらに追加で、今度は白身を手渡す。
「おいちい?」
『びみ、びみぃ~♡』
「よしよし、テイム!」
『むずむずするの~、ママもっとぉ』
「おおぅ、可愛いのぉ」
くっ、悶え殺す気かっ! 仕方が無い、白身の大量追加じゃぁ!
『びみぃ、びみなのぉ~♡』
「よしよし」
うむ、産毛があって蜘蛛なのに中々の手触りだな。 それに追加の肉を上目遣いで要求されると、逆らう事すら出来なくなる。
なんて恐ろしい子。
そう言えば名前を考えないといけないな。 ハエトリグモだから…ハエリ…いや、ハトリでどうだろう。
「お前の名前は今日からハトリ、判った?」
『わかったぁ、はとり、はとりぃ~♪』
私の名前と勘違いしていないよね。 まあ良いか、気長にいけば。
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カクヨム版(先行)
魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~
https://kakuyomu.jp/works/16816927862939210704
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