第298話 最終決戦編 ~えっ? 大空の彼方ですか?~
カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。
二つの影が線を引き、大空に模様を描く。 時にブツカリ、時に弾ける。
「くたばりやがれぇぇぇ~っ!!」
「ほっほっほっ。 青いのぉ」
大空の彼方で戦う幼女、ハイガンベイナ8歳です。
引き伸ばされた時間の中で魔術を行使して爆発させたり、徹甲弾を放ってみたり、時には直接的な攻撃に出てみたりしているのだが、その全てを躱されてしまう。
いや、現状はもっと絶望的だ。 攻撃した時には躱された後に反撃され、その倍のダメージの攻撃を喰らっているのだ。
このままでは、先に落ちるのは自分であると確信している。 スピードだけで言えば、ほぼ互角。 しかし、空中の運動性能では遥に上回れている。 加えて最悪なのが…。
「ほれっ、油断大敵じゃ」
「ぐはっ!」
相手はコッチの行動が予測出来ているかの如く転移を使って背後から攻撃を加えてくる。 今回の攻撃で言えば、背中を強く蹴られでもしたのか、肺の中の空気を強制的に排出させられた。
遊ばれている事が分かる。 分かってしまう。 しかしどんなに感覚を研ぎ澄まそうが、後手に回ってしまうのだ。
屈辱だった。 目の前でヘルをやられ、ハトリは殺されてしまった。 そして我を失う程に激怒して、やっと自分を取り戻せても、手が届かない遥な高み。
何が足りない? 飛び方か? 最初はどうやって空を飛んだ? 確か重力魔法を使って浮かんでいたダケでは無かったか? なら羽は何のために存在する?
カチッ!
攻撃はどうだった? 初めて格上の相手と戦った時はどうやった? 隠れながら攻撃したのでは無かったか? どうやって勝利した?
カチッ!
転移能力はどうだった? 転移スピードで上回った相手をどうやって攻略した? 相手の転移位置が分かる様になったのではなかったのか?
カチッ!
黒竜王との戦いはどうだった? なぜあんな化け物に勝てたんだ?
カチッ!
大勢の人間を相手にした時は、どうやって殺した?
カチッ!
邪神としては、どうやって敵を殺した?
カチッ!
黒竜としての戦い方は何だった?
カチッ!
これまでの戦いなどで学んだ事が、まるでパズルのピースを当て嵌めるかの様に埋まっていく。 やがてそれは、現実の戦いにも反映されていった。
「熱光学迷彩展開!、積層魔術障壁展開!、連続転移!」
「んなっ! この段階で進化だとっ!?」
気が付くと、失われていた左足も復活していた。 いや、それダケでは無い。 黒い鱗は虹色に輝き、強度が格段に上がった印象を受ける。
『ふむ、この輝きはヒヒイロカネであるな』
≪ママは凄いの! 進化したの!≫
『進化?』
全てのモノが止まって見える世界。 いや、ユックリと時間が流れる世界で、私は魔女が魔術を構築しているのが見えた。
『【魔術の使用を禁ずる!】』
すると、魔女が構築していた魔術が、ボロボロと崩れていく。 すると一瞬驚いた顔をする魔女だったが、すぐに冷静さを取り戻し、呪言を発した。
「【魔術の使用を許可する!】」
呪言を呪言でアッサリと相殺するなんてのは、さすが『記録の魔女』と言ったところか。
そう言えば普通に呪言も使えるんだよなと、感心してしまった。 まぁヘルをダンジョンで飼っていたくらいだ。 その位、普通にやるんだろうな。
いや、それ以前にこの時間感覚が引き伸ばされた世界にも対応している様子を見ると、思考加速も普通に行える様だ。
だからだろうか、内心で「本当に忌々しい魔女だ」などと思ってしまうのは。
それが黒竜としてのプライドか、あるいは邪神としての矜持からだろうか? ただの魔女風情に全力で戦わなくては勝利出来ないのは屈辱でしか無い。
だがこうも思うのだ。「全力を出し切れば勝利出来る」と。
今度は一転して、技の潰し合いが始まった。
「ギガ・エク「【禁ずる!】」、くっ!」
構成しようとした魔術が、発動する前に脆くも崩れ去る。
「【爆ぜろ!】」「【爆ぜぬ!】」
呪言のスピードに至っても互角。 どちらかが先にミスをした方が負ける戦い、そんな状況が続く。
いいぜ、やってやろうじゃないか。 こう見えても私は我慢強いんだ。
魔術や呪言が使えなくったって、私には爪や尻尾がある。
「竜爪!」
しかし斬り殺すつもりで放った竜爪は、魔女がいつの間にか持っていた禍々しい剣に遮られてしまった。
「まさか取って置きのコレクションまでも使う事になるとはのう」
魔女との戦いは、まだ暫く続きそうだ。
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カクヨム版(先行)
魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~
https://kakuyomu.jp/works/16816927862939210704
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新作:
VRMMOゲームをしていたハズが、気が付いたら異世界にいたんだが… ~人を見たら経験値と思え~
https://kakuyomu.jp/works/16818093086783757902