第292話 首都決戦編 ~えっ? 蜘蛛を統べる王ですか?~
カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。
「ヨクモ我ガ眷属ヲ!」
「ぬかせ、手前で最後だぜ!」
蜘蛛を統べる王と戦う幼女、ハイガンベイナ8歳です。
「死に晒せ! 竜爪!」
「フン、効カヌワッ!」
竜爪と蜘蛛の爪が激しくぶつかり合い火花を散らす。 流石に蜘蛛の親玉なだけはあって、簡単には死にそうに無い。 いや、手数は相手の方が上か。
竜爪で斬り付ける度に一本の脚の爪で受け止められて、残る数本の脚の爪が私を襲う。 私は既に上半身が裸になっているのだが、その皮膚は竜燐で被われている為に傷付く事は無い。
「いい加減にクタバレよっ!」
「ソレハコチラノ台詞ダッ!」
時には斬り付けようとすると転移で相手の後ろに回り込み背後から斬り付け合う。 そんな展開が続いている。
私にせよ蜘蛛にせよ、背中の防御力は全面よりも弱い。 その為に傷を負うのだが、お互いが強い再生能力を持っているが故に、決定打には至らないのだ。
それにブレスを放とうとすればソレが隙となって相手の攻撃をゆるしてしまう為に、お互いが大技を出せずにいる。 そんな状態が続いているのだ。
ある時は地上で、またある時は空中で激しく場所を移動しながら傷を付け合う。 一見すれば千日手の様に見えるかもしれないが、実は違う。
恐らくだが相手の牙は私の竜燐を貫く予感がある。 あの時は竜燐で全身を被っていなかったとは言え、手下の牙ですら私の皮膚を貫通して毒を注入させられたのだ。
とは言え蜘蛛の牙は相手を攻撃するには向いている様子は無く、何方かと言えばトドメの一撃とも呼べる代物で、その前には相手を捕縛する必要がある様に思われた。
要するに相手に捕縛されなければ牙は警戒する必要が無さそうなのだ。 だからと言って油断出来る状態ではないのだが、そこまでの危機感は感じなかった。
犬に例えると分かるだろうか? 相手の頭の位置にさえ気を付けていれば、噛みつかれる事はないのと同じなのである。
それに無防備に口を開けたならば、その時はファイヤーボールでも投げつけて内側から焼き尽くすなんて方法もある気がするのだ。
だからと言って、魔術が効果的な状態では無い。
「ファイヤーボール!」
少し離れて火球を放つと、転移でサクッと避けられる。 ちっ、あくまでも肉弾戦しか手が無いってか?
いや、待て。 ファイヤーボールよりも出が早い技があるじゃないか。
竜爪で斬り付けながら叫ぶ。
「【爆ぜろ!】」
すると、接触しているとレジスト出来なかったのか、相手の脚の一本を吹き飛ばす事に成功した。 それでも再生が始まるのだが、私が脚を削ぐ方が早かった。
「【爆ぜろ!、爆ぜろ!、爆ぜろ!】」
竜爪で斬り付ける度に呪言も合わせて発動させると、相手の脚が一本、また一本と減っていく。 この調子なら勝てるか? と、思っていると転移で距離を取って回復に専念されてしまった。
「ちっ、本当にシブトイ奴だな」
思わず本音で不満が漏れる。 魔術で攻撃しても転移で避けられてしまうし、今では接近戦では警戒して近寄って来ることさえしなくなった。
腹立たしいのは、転移の速度が少しだけ相手が上回っている事だ。 私は「転移!」って呪文を発しなければいけないのに、相手は予備動作無しで転移しやがるのだ。
「クソがっ!」
ゴネてもどうなるワケでも無いのだが、手玉に取られていないだけマシと考えるべきだろうか?
そこからは今度はブレスの撃ち合いになった。 私も黒竜の魂に慣れたのか、一々「ドラゴンブレス!」って言わなくても撃てる様になったのが大きい。
発動速度は互角で、威力に関しては私の方が上だ。 蜘蛛のブレスは発動速度だけは問題ないのだが、異能として取り込んだのが不完全なのか、それとも元々の威力がそれ程ではなかったのかは知らないが、黒竜のブレスト比較すると見劣りするのが現状だった。
正面からの撃ち合いでは威力で勝利し、相手にダメージを与える事にも成功した。 その後の撃ち合いでは威力で勝負しようとはせずに転移で避けている事からも威力で勝っている事は確実だ。
それに引き換え、相手のブレスはこちらの結界で十分に防ぎきる事も確認した。 その分、相手は撃ち合いでも必ず転移で回避しなければいけないので優位には立てている。
しかし、相手にダメージを与えられたのが最初の一回のみなので、それで勝敗が決する事はなかった。 やはり勝負を決めるには接近戦に持ち込む他は無さそうだ。
どこまでも梃子摺らせてくれる面倒な相手だと言えるだろう。
接近戦に入ろうとして正面や背後に転移しても、転移で距離を取られる。 かと言って、転移で逃げる様子すら見せないのは少し妙な印象を受ける。
何か勝算でもあるのだろうか? 本心から言えば直ぐにでも決着をつけたい所だが、ここは慎重に相手を観察しながら戦うべきであろう。
幸いにして、魔力や神力が尽きる様子が無い。 消費するよりも回復が上回っているからだ。
相手の消耗を待つのも作戦としてはありかも知れないな。 実質的には膠着状態だが、相手を消耗させてしまえば何とかなる気もするのだ。
その為には、とにかく相手の魔力を消費させる必要がありそうだな。
「プラズマ・ガトリング!」
「フン、ソノ技ハ先程モ効ナカッタノヲ、モウ忘レタノカ!」
「だと良いんだがな!」
そう言って今回はソフトボール位の大きさのプラズマをブツケ続ける。 前回のプラズマ・ストームとの違いは威力を少し向上させているところだ。
確かに相手の結界には阻まれているのだが、相手の結界がほんの少しずつだが弱体化していくのが確認出来た。 何れは打ち破る事が出来るだろう。
「バッ、バカナ!」
「今更、気が付いたって遅いぜっ! どこまで耐えられるかなっ!」
どっちにしろ、相手には転移で回避するしか残されていない。 だから今回は魔力探査も行っており、何処へ逃げるかも凡その場所だって把握済みだ。
「クソッ、転移!」
「ドラゴンブレス!」
そして転移した先に向けたドラゴンブレスが、相手に直撃した。
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カクヨム版(先行)
魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~
https://kakuyomu.jp/works/16816927862939210704
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新作:
VRMMOゲームをしていたハズが、気が付いたら異世界にいたんだが… ~人を見たら経験値と思え~
https://kakuyomu.jp/works/16818093086783757902