第289話 首都決戦編 ~えっ? 流星爆弾ですか?~
カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。
「大量破壊兵器で思い付いたんだが、流星爆弾なんてどうだろう?」
「何ですかぁ? 流星爆弾って?」
流星爆弾について説明する幼女、ハイガンベイナ8歳です。
まぁ簡単に言ってしまえばメテオ・ストライク・シャワーの事なのだが、その昔、流星爆弾に汚染された地球を救うために宇宙の果てまで空気清浄機を取りに行くアニメが流行った事がある。
その時の地球は干上がっており放射能に汚染されていると言う設定で、第二次世界大戦で使用した戦艦大和を改造して宇宙戦艦にしてしまうと言うとんでもアニメだった。
それ以降、流星を爆弾みたいに使用するファンタジー作品などもあって、デスマーチアニメでは主人公がそれを使用するなど日本ではそれなりに有名な魔術やスキルとしての設定が結構ある。
で、思ったんだが、「やりゃぁ出来るんじゃね」との思いで実はコッソリと試した事がある。 その結果は何と大成功! てな事で私はメテオ・ストライクが放てるのである。
ドラゴンブレスとの大きな違いは、質量兵器(?)魔術(?)の一種なので、距離によって減衰しない事がある。 つまりは、かなりの遠距離から攻撃が行えるので、相手が待ち構えているであろう距離よりも遠い位置から攻撃が行える事である。
「へぇ、そんな魔術があるんですかぁ。 それってストーンキャノンの大規模版って考えで合ってますぅ?」
「おぅ、ポイントは質量の大きさと音速を越える速度が必要ってのはあるが、大まかな認識は合っているぞ」
「タダの大きな石でぇ、効果はあるんですかぁ」
「質量よりも重要なのは速度だな。 運動エネルギーは速度の2乗に比例する点にあるんだよ。 単純に重さが2倍になれば威力は2倍になるだけだが、速度が2倍になると威力は4倍になるんだ」
「その大きくて早い石を相手が占拠している場所に打ち込むって事ですかぁ?」
「そうだな、最低でも都市が更地になる程度のモノを複数飛ばす予定だ」
「でも大きな石なんですよねぇ。 撃ち落とされて終わりって事になりませんかぁ?」
「いや、それは無理だな。 地球には高速に飛ぶ爆弾にミサイルってのがあるんだが、それを迎撃するのは高性能な迎撃システムでも良くて5割、普通は3割も迎撃できれば高性能に分類されていたくらいだ。 それだけ高速移動する物体ってのは撃墜するのが難しいんだ」
パトリオット3でも、迎撃率なんて3割程度って話だもんな。 5割ってのはアイアンドームならそのくらいは可能なんじゃないかって言われていた程度だ。
超高速滑空体の撃墜なんて、現実的には夢物語だと思っている。 レールガンでミサイルを撃墜できるとか言っている奴がいるけど、ミサイル迎撃の難しさを知らない奴が言っているだけで、個人的には不可能だと思っているくらいだからね。
そりゃぁ何れはレーザーによる撃墜も可能になる日がくるかも知れないケド、レーザーってビックリするくらい射程が短いって知らない人間が多すぎるんだよな。
宇宙空間じゃないんだから、設置型の対ドローン用のレーザーだって射程は500メートルにも満たないって事を知らないんだよな。 ハッキリ言ってしまえばライフルの射程の数分の一しかないって事だ。
ドラゴンブレスの射程が長いのは、どちらかと言えば粒子砲に近い特性を持っているからであって、速度自体はそれ程でも無い。 まぁハッキリ言ってしまえば音速程度なんじゃないかな。
因みにライフル弾の速度はモノにもよるが、音速の2倍~3倍程度である。
そしてメテオの速度は遅くとも音速の5倍、早いモノは10倍を越えるのだ。 撃墜なんて不可能であろう。
まぁメテオと言えば、前面が空気の断熱圧縮によるプラズマ化を起こすくらいだからね。 隕石が輝いて見えるのはそのセイだし、安っぽいSF作品みたいに核爆弾で軌道を変更するなんてのは非現実的なのだ。
要は撃墜される心配なんて必要がないって話だ。 ふふふっ、勝ったな。
とは言え、大気中の加速は現実的では無かったので、実は岩を宇宙空間で生成しなければならないと言う天変地異レベルの魔力だって消費するし、加速もこの星の引力を利用する関係上めっちゃ時間が掛かる。
デスマみたいに、「ん? 遅いな」ってレベルじゃぁ無い。 今日生成したとしたら、着弾するのは明日以降というスパンの長さ。
だから宇宙空間で現在隕石を生成中なのだが、これがまた魔力を馬鹿食いする上に演算能力まで馬鹿食いをしやがる。 誰だ、こんな手間の掛かる馬鹿げた魔術を考え出したのは。
それを実現させようとする私もバカだが、きっとファンタジー作品でメテオ・ストライクを考えた奴は、私以上のバカだと断言できる。
「あのぉ、ベイナ様ぁ」
「ん? 何だ?」
「転移能力をぉ、有している相手にはどう対処するんですかぁ?」
「あっ、…」
「あ?」
「考えていなかった…」
「今からでも中止して、力を温存する方が良いのではぁ?」
「いや、だってほら、全員が転移能力を有しているワケじゃないんだからさ」
「つまりぃ、雑魚の討伐に流星爆弾を使うと言う事ですかぁ?」
「えっとぉ、あるいは偶々昼寝をしている奴とかもいるかも知れないし…」
「はぁ、ベイナ様はぁ、もう少し緩い残念なタイプだと思ってましたがぁ、ガチ勢だったのですぅ」
「ガチの残念認定!?」
何だよ、チクショウ! そりゃ考えなしだったかも知れないけど、そこまで言うこと無いじゃないかっ!
私ってそんなにバカなのかな? うん、よくよく考えてみればそんな気がして来るので悲しくなった。
「ベイナ様ぁ、バカと残念な娘は違うのですよぉ」
「どんなふうに?」
「バカは救いが無いですがぁ、残念な娘には救いがあるのですよぉ」
「例えば?」
「バカは呆れられるだけですがぁ、残念な娘は生温かい目で見られるのですぅ」
「ちっとも嬉しくねぇよっ!」
そりゃ考えてみればそうだよな。 蜘蛛って目が良いんだし、空から流星が降って来れば逃げるだろうさ。 しかも転移持ちが多いと予想される首都決戦ではもしかしたら被害すら出ないかも知れないんだ。
仮に目標の都市を更地に出来たとしても、それじゃぁ意味なんて無いんだもんな。 ちっ、今回こそは楽に制圧出来るって考えていたんだが、流星爆弾は廃案にするしかないか。
「分かったよ、流星爆弾は廃案にする」
「それでぇ、どうやって都市を攻略するんですかぁ?」
「そりゃぁ、前回と同じく遠距離のブレス攻撃から始めるさ」
「ねぇベイナ様ぁ、進歩って言葉を知ってますかぁ?」
「悪かったなっ! 他に良いアイデアが浮かばないんだよっ!」
「まぁベイナ様ですからぁ、当然の結果かも知れないのですぅ」
「ちくせう! 言ってろっ!」
こうして都市の攻略案とも呼べない様なアイデアで、都市を攻略する事になった。 やっぱり私には軍師の才能は無かったらしい。
しかし、相手が少しずつだがパワーアップしている事を考えると、前回以上に苦戦するのは必至だろう。 いや、私だってパワーアップしているんだ。
問題なのは、私がその力を十全に引き出す事が出来ていない事だろう。 我ながら自分の不甲斐無さが恨めしい。
「きっと次回だって大丈夫だ。 私がその分、頑張れば済む話だからな」
「無茶は程々にして下さいねぇ」
「理解しているさ。 次こそは完全に力を制御して見せるつもりだ。 だから二人にはバックアップを頼みたい」
「いいですよぉ、いつもの事ですしぃ」
「ハトリもバックアップするのー!」
そういして私たちは覚悟を決めて、次の都市へと向かうのだった。
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カクヨム版(先行)
魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~
https://kakuyomu.jp/works/16816927862939210704
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新作:
VRMMOゲームをしていたハズが、気が付いたら異世界にいたんだが… ~人を見たら経験値と思え~
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