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第287話 首都決戦編 ~えっ? 野生児ですか?~

カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。

「あっ、知らない天井だ」


 嘘ですゴメンなさい、広がる青空に木陰こかげで寝かしつけられている幼女、ハイガンベイナ8歳です。


「ここは何処だろう?」

「あらら、起こしちゃいましたかぁ?」

「いや、自然に目が覚めただけだよ。 それよりハトリは?」

「ハトリちゃんならぁ、食料の調達に出掛けてますぅ」

「んん、食料? それならアイテムボックスとかにまだ沢山残っているだろ?」

「何でもぉ、精が付くモノを調達してくるらしいですよぉ」

「こんな近くに街も何も無い場所でか?」

「ハトリちゃんはぁ、野生児ですからぁ」

「そっか、野生児かぁ」


 忘れそうになるけど、ハトリって元々蜘蛛の魔物で人化しているだけだもんな。 そりゃ自然から食料を調達出来るワケだ。


「でも精が付く食べ物って何だろ? 自然薯じねんじょとかかな?」

「自然薯って何ですかぁ?」

山芋やまいもの一種だよ、私が元いた世界では有名な食べ物だったんだよ」

「芋がですかぁ?」

「元いた世界って言うより国では、自然で採取できる高級品だったんだよ」

「へぇ、芋が高級って何だか変ですぅ」

「そっかな?」

「そうですぅ」


 そりゃね、地球と比べたらこの世界の方が自然だって残っているし、山芋だって珍しくは無いのかも知れないな。


「あっ、ママが起きてるのー!」

「あ、お帰りハトリ。 その背中にブラ下げているのが食料なのかな?」

「まだ生きてるのー!」


 そう言いながら、手足を縛ったウサギが5匹ほど私に見せ付けた。 そのウサギたちは助けを求める様なつぶらな瞳で私を見つめ返してくる。 止めろ! そんな目で私を見るな!


「なぁ、ヘル。 この世界じゃぁウサギって精が付く食べ物扱いなのか?」

「さぁ、そんな話は聞いた事が無いですぅ」


「精が付くのはね、新鮮なウサギの生肝なまぎもなのー!」

「生肝、つまりはウサギの生レバーって事かな?」

「そうなのー!」


 いや、それって食べて大丈夫なモノなのか? とある小説では豚のレバーを生で食べて死にかけるって話があったよな。


「ゴメンハトリ、今は内臓って気分じゃないんだ。 内臓以外の部分を頂こうかな。 確か香草とかがアイテムボックスにあったハズだし」

「そうなのー? 内臓、美味しいのに勿体もったいないのー。 それじゃぁ内臓はハトリが食べるのー」


 そう言ってハトリはウサギたちの首を糸で刎ねる。 うわっ、今度は転がった頭に付いた両目で、恨めしそうににらまれちゃったよ!


「血抜きは料理の基本なのー♪」


 とあるデスマーチな小説では血抜きや皮剥かわはぎは1行で終わるけど、現実ではそうはいかない。


 首を落とした後でも暫くは心臓が動いているのか、ドピュッ、ドピュッと血が吹き出し、その後は糸を引くようにテュルテュルと流れ落ちていく。


 やがてそれがしずくとなる頃には解体が始まっており、取り出した生レバーを美味しそうに頬張ほおばるハトリ。 うん、顔に血が付いているからちょっとしたホラーだよ。


 しかし思いの外、ハトリのナイフさばきは素晴らしい。 いつの間にそんな技術を習得したのかは知らないが、プロ顔負けである。


 あれよあれよと言う間に、ウサギは私が知っている骨付き肉に変わっていた。


「ハトリって、料理が得意だったんだな」

「『狩猟採取』の異能なのー」

「あぁ、そっちか」


 そう言えばハトリも昔は人間を襲っていた時期があったんだっけか。 それと死神と邪神のグループじゃぁ、人里では暮しにくいハズだよな。


 そんな事を考えている間にも料理は着々と進んでいく。 私はハーブなどを各種提供しただけで、後はハトリにお任せである。


 あっ、いい匂いがしてきたぞ。 転がっているウサギの生首はガン無視してウサギの香草焼きを心待ちにしてみる。 いやだって、生首はハトリの眼中にはないらしくそのままなんだよ。


 えっ? 私? いや、触りたくないし。


 ヘルは生首なんて気にもなら無いのか、視線がそこで止まる事は決して無い。 そりゃ転がっているのが人の生首だとしても、興味すらわかないんだろうさ。 だって死神なんだし。


 普通の人間が見たらどう思うんだろな、この集団。


 一人は内臓をつまみ食いした事もあって、口と手が血まみれ。 近くにはウサギの生首が転がり、それを必死に無視している幼女。 そして最後は、黒髪の美女がそれを微笑ましく眺めている。


 サバトかな?


 そんな雰囲気だと言うのに、周囲には少し香ばしい香草焼きの匂いが漂い始めた。 良かった。 ちゃんと食事風景に見えそうになってきたな。


 遠くには動物たちの気配もあるのだが、ヘルが怖いのかそれともハトリが怖いのか寄ってくる様子すら見せない。 まぁね、それが正解だ。


 だが、たまたま風下にいた人間が、こっちに近付こうとした瞬間に爆散する気配があった。 多分ヘルがやったんだろうけど、人間ってこうして見ると愚かな存在なんだな。


 行商人だったのかそれとも旅人だったのかは知らないが、ほんの少しだけ冥福めいふくを祈った。 もしもバカは死ななきゃ治らないんだったら、これで少しは利口になれるだろう。


 だって、人通りが全くない街道の近くなんて普通じゃぁ無いんだから、頭のおかしな連中以外はキャンプファイヤーなんてしないよ。 だだし人外は除く。


「まぁ何だ。 美味しく焼き上がったら、人が来る前に食べ終わるとしよう」

「まぁ、来ることなんてぇ、《《絶対に無い》》んですけどぉ」

「ハトリは火加減も完璧なのー!」


 そりゃぁ死神さんが、人なんて絶対に来ないって言えば、来ないんだろうね。 食事は楽しいに越した事は無い。


「そう言えばウサギの丸焼きって、前世も含めて人生初かも」

「頭は無いのに?」

「まだ人生とか言ってしまう程には頭が無いですしぃ」

「うっさいわっ!」


 こうして食べるウサギの香草焼きは、ビックリするくらい美味しかった。



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カクヨム版(先行)


魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~


https://kakuyomu.jp/works/16816927862939210704


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新作:


VRMMOゲームをしていたハズが、気が付いたら異世界にいたんだが… ~人を見たら経験値と思え~


https://kakuyomu.jp/works/16818093086783757902

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