第283話 首都決戦編 ~えっ? 新たなる街へですか?~
カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。
「まさか蜘蛛じゃなくて、ジジイに支配されていた街があるとは思わなかったよなぁ」
「しかも死神を名乗るなんて許せないですぅ」
「ハトリもつまらなかったのー」
自称死神のジジイを始末した後に新たな街へ向かう幼女、ハイガンベイナ8歳です。
「どうして蜘蛛たちはあのジジイを放置していたのだろう?」
「それはぁ、襲撃するメリットが無かったからじゃないですかぁ?」
「まぁなぁ、蜘蛛たちなら勝利出来た気もするが、得られるモノが干からびたジジイとスライムじゃぁ割に合わないか」
「私たちから見たら雑魚でしたけどぉ、普通の蜘蛛なら苦戦していたかも知れないですしぃ」
「そうかぁ? 少し隠れるのが上手いジジイってだけの印象しか無いケド」
「お忘れですかぁ、ベイナ様ぁ。 変態してパワーアップしたじゃぁないですかぁ」
「そう言えばそうだったな。 蜘蛛が相手じゃないとパワーアップした実感が湧かなかったんだよ」
「まぁアレでしたしねぇ」
「雑魚だったのー」
そんな雑談をしていると、次の街が見えてきた。 感覚自体も鋭くなっている様で、ここからでも蜘蛛たちの気配を感じる。 事前に連絡でも受けていたかの様に、臨戦態勢で待ち構えているみたいだ。
「態々《わざわざ》歓迎の準備までしてくれているみたいだけど、何も無駄に飛び込む必要も無いんだよなぁ」
「と、言いますとぉ?」
「この距離なら十分にブレスの射程圏内だし、パワーアップしたヤツを試してみようかと」
「もしかしてぇ、面倒になっていませんかぁ?」
「少しな」
とか言いつつも、魔力をタップリと込めたブレスを準備する。
「ハトリの出番が無くなっちゃうのー」
「たぁーまぁーやぁーっ!」
極太レーザーとなったブレスは一直線で街へと向かい、そして大爆発を起こした。 腹に伝わってくる振動もさる事ながら、爆発の衝撃波が私たちがいる場所まで襲い掛かってきた。
「ベイナ樣ぁ、手加減が無さ過ぎですぅ」
「すっ、すまん」
慌てて魔力障壁を張って、衝撃波を受け流す。 うひょー、こりゃ下手な核兵器よりも凶悪だわ。 衝撃波と共に、捲れ上がった地面の破片などが周囲に降り注いた。
てか、ブレスなら向こう側へ吹き飛ぶのがセオリーだと思っていたのだが、どうやら魔力を込め過ぎると核融合か何かでも起こるみたいだ。
重水素に高出力のレーザーを当てて核融合を行う発電所が私がいた世界では計画されていたが、その現象に近いものなのかも知れないな。
重水素を使うのは調達の簡単さと核融合反応を起こしやすいからなのだが、私が使ったブレスは某劣等生のマテリアルバーストに近い気がする。 いや、強力過ぎない?
そりゃぁ地形だって変形するわな。 これじゃぁ戦術級どころか戦略級の魔術に分類されそうな勢いだもんな。
しかも単純な最適化を受けた私が撃てたって事は、あの黒竜王さんも同じブレスを撃てる可能性があったって事だよな。 あの時にこんなブレスを受けていたら、塵も残さず死んでいた可能性もあったって事か。
そう考えれば私って幸運だったって事だよな。 くわばらくわばら。
そんな事を考えていると、空高く遥か上空に転移の反応が感じられた。
「勘の鋭い連中もいたらしいな」
「思ったよりもぉ、多いのですぅ」
「ハトリの出番が残ってたのー!」
流石は二人と言うべきか、単純に空を見上げただけなのに臨戦態勢を取った。 強化された私と同じ様に感じ取っているんだなと思うと、少し嬉しくなる。
「ファイヤーボール・ガトリング!」
試しに白く輝くファイヤーボールを空に向けて撃ってみるが、悉く転移で躱されてしまう。 やっぱり接近戦でないと無理か。
「迎え撃つぞ!」
「当然ですぅ」
「空歩なのー!」
「へつ?」
空中戦が苦手なハズのハトリが、空中を駆け抜けていく。 えっ、何? 新技?
「驚いている場合じゃ無いですよぉ」
「あっ、そうだな」
慌てて上空へと迎撃に上がるが、本来であれば位置エネルギーの関係上、上空にいる者が優位に戦闘を進められる法則がある。 だがそれは、ドッグファイトの常識であって転移使いには関係が無い。
「ショートジャンプ!」
連中の更なる上空に転移して、急降下で一番高い位置にいる蜘蛛に狙いを定める。
「【爆ぜろ!】」
今度は神力をタップリと込めた呪言で爆裂させる。 魔術回路だけではなく、神力の回路まで最適化された私にとっては、最早意志の強さだけでは抗えない程に呪言の威力も増していた。
低空ではハトリが転移使いの蜘蛛を動物的な反射速度と連撃で応戦している。 そして中くらいの高度ではヘルが受け流す様な戦い方で、こちらは余裕がありそうだ。
残る高高度では私と数匹の蜘蛛が転移と攻撃の合わせ技で、目紛るしく攻守を入れ替えながら戦っていた。 流石にあのブレスに反応出来た連中だけあって、中々一筋縄ではいかない様だ。
「単純に威力だけが上がっても、勝負感や戦闘経験はどうにもならないかっ!」
本当に無理に街に突撃しなくて良かったと思い直す。 本来ならこの数倍か数十倍の相手をしなければならなかったハズなのだ。
それにしても、相手をしている中に矢鱈と転移の使い方が上手い蜘蛛がいる。 的確なタイミングで、背後を取られたりして相手の数を減らす事が出来ないでいるのだ。
だからと言って、落ちるつもりは無いのだが相手はコチラをイラつかせる事に長けているみたいで、フラストレーションが溜まる。
おちょくられる攻撃と言えば良いのだろうか? 威力はそこそこで、出の早い攻撃を時には背後から、時には側面や上面から喰らわされている。
ボクシングで言うなら、ジャブを鱈腹貰っている状態だ。 だが幸か不幸か、そんな攻撃は魔力障壁無しでも竜燐なみの強度を誇る私の防御力を突破する事は無い。
「痛ぇじゃなえかっ、この野郎!」
私は暫く、この蜘蛛たちに甚振られ続けるのだった。
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カクヨム版(先行)
魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~
https://kakuyomu.jp/works/16816927862939210704
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新作:
VRMMOゲームをしていたハズが、気が付いたら異世界にいたんだが… ~人を見たら経験値と思え~
https://kakuyomu.jp/works/16818093086783757902