第273話 都市決戦編 ~えっ? 市街戦ですか?~
カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。
「1っ! 2つ! 3っ!」
蜘蛛との激しい空中戦を広げる幼女、ハイガンベイナ8歳です。
少し前回の反省を活かして、空中での戦い方を工夫してみた。 先ずは魔力障壁なんだけど、コレは常時展開。 だって痛いからね。
そして飛行魔術なんだが、こちらは黒竜の戦い方を参考にしながらも邪神の力を多めに引き出す感じで対処してみた。 そう言えば神の中にも闘神がいるんだし、戦いが苦手ってワケじゃ無かったんだよね。
まぁハトリの戦い方を参考にしているんだけど、各種の能力ブーストに使っている感じだ。 翼を持つ天使の様な神がいるみたいに、空中戦も慣れればコレはコレでありだなって印象だ。
逃げ惑う蜘蛛を後ろから追い回して、ある程度の距離まで近づくと一気に速度を上げて切り刻む。 蜘蛛の逃げ方が上手い事もあって、それに釣られて私の空中軌道も複雑になっている。
そのセイか以前の様に集中砲火を浴びなくなったんだよね。 戦いながら強くなるってこう言う事なんだなって改めて思う。
それに追い回す事で、蜘蛛たちの飛行パターンなんかが何となく理解出来る様になったのも大きい。 戦法や戦況がコロコロ変化していっている事もあって、どうしても蜘蛛たちの対応は遅れがちになっていた。
今まで蜘蛛に苦戦していたのは、蜘蛛たちの対策マニュアルとでも言うべき戦い方に翻弄されてきたからだ。
空を飛ぶ竜やワイバーンなんかは力押しの戦い方を好ので柳の様に躱す戦法、人間の魔術師なんかは空中戦と言うよりも移動手段として飛行しているので、翻弄する事を優先した戦法。
要するに相手が嫌がる戦法で戦う事で、戦況を有利にする事を学んでいたみたいだ。 ならば今の私はどうかと言うと、とにかく相手の後ろを捉えて確実に一匹ずつ始末していくやり方で、数を減らす事を目的としている。
当然邪魔は入るのだが基本的には無視。 だって強化された魔力障壁は蜘蛛たちの攻撃を無視するには十分な強度があったからだ。
そして気配察知と魔力探査の組み合わせで、例え煙幕を張られた様な状態でも正確に相手の位置を把握している。 今では煙幕なんかは蜘蛛たちにとっては私を見失う不利な戦法になったのだ。
どうやら蜘蛛たちは地上の敵ならば振動なども察知して見えない相手でも対処してくるのだが、空中戦ではその広い視界をフル活用していたみたいだ。
今までの敵なら煙幕の中に閉じ込めて、出てくると思われる場所に待機する方法で相手をフルボッコにしていたみたいだけど、コッチには短距離転移もあるからね。
更にその背後からフルボッコにしてやったら、煙幕を使うのは止めてしまったみたい。 まぁ空中だからって真面目に飛行する理由も無いからね。
そうやって蜘蛛たちの対応力を上回ってしまえば、苦戦するような相手では無くなった。 いやぁ、冷静になるって大切だね。
そして時には一匹ずつ倒したり、時には纏めて吹き飛ばしてみたりしていると相手の底が見えてきた。
「よぅ、マヌケ供! 何なら今の倍の数でも相手してやるぜ!」
蜘蛛たちも挑発されている事は理解しているみたいだが、打つ手が無いと言った所だ。 よし、そろそろ都市への侵入を果たせそうだな。
残りの飛行する蜘蛛たちが片手で数えられる程になった時に、私は市街戦の決意をした。 気が付けば地上からの対空射撃も無くなっているし、いつの間にかヘルにも助けられていたみたいだ。
だが空に残っている敵を見逃す理由もないので、今度は意識を集中して相手の詳細な位置を把握して神力による爆散を試みる。
「【纏めて爆ぜろ!】」
ニートと『傀儡』を相手にしていた時に思い付いたんだけど、呪言って相手の詳細な状態さえ把握してしまえば距離は関係無い気がしていたんだよね。 思った通りだ。
空中で爆散して地上に落ちていく蜘蛛の残骸。 うーむ、我ながら凶悪だな。
少し意識を集中させる必要性から時間が必要なんだが、もう残り少なかったし相手側も攻撃を躊躇していた状況だったからね。 挑戦してみた。
どうやら私は勘違いしていたみたいだ。 黒竜の魂とか邪神の魂とか、私の自由意志とか。
3つあるんじゃなくて、全て合わせて一人の私。 絵の具の様にグチャグチャに混ぜれば良かったんだ。
右手を中心に使うんじゃなくて、両手で何かをする感じって言えば分かるかな? 全ては私の能力だし、分けて考える事が不自然だったって印象だね。
ハトリが神の力を使いこなすのが上手かったんじゃない。 私が難しく考えすぎていただけなんだ。
だから今の私は、自分の力として黒竜や邪神の力を引き出せる。 うん、黒竜としての自覚を持てとか色々言われたからなぁ。 それの悪影響もあったみたいだ。
だからと言って、イリスとの訓練が無駄だったワケではない。 自分にどんな力があるかを把握していないと、使いこなすなんて事は出来ないからね。
「そろそろ行くか」
落ち着きを取り戻した私は、サクッとヘルの近くに転移する。
「待たせちゃったかな?」
「あらぁ? 少し変わりましたぁ?」
「あぁ、少し分かった気がするんだ」
「つまりは心の準備が出来たので、私を全てぇ、受け入れる気になったって事ですかぁ?」
「ちゃうわぃ!」
ヘルは何時だって通常運転だった。 この余裕も自分を深く理解しているからなんだろうな。 何となくヘルを見る目が変わりそうだ。
別にヘルの側に来たのは、ハトリよりもヘルを優先したからでは無い。 今のハトリの状態は、多数に囲まれた状態での立ち回り方とかを学習している最中で、何となく邪魔をしたく無かったのだ。
「じゃぁ何をするんですかぁ? それともナニをしてみますかぁ? 【死になさぁぃ!】」
「いか、今はまだ戦闘中なんだが? 【爆ぜろ!】」
周囲の蜘蛛たちを無視して、ヘルとの談笑を楽しむ。 いや、一応は戦っているんだよ。 爆散させているだけだけど。
「私はぁ、いつでもウエルカムですよぉ。【貴方も死になさぁぃ】」
「いや、遠慮しておく。 【纏めて爆ぜろ!】」
「いけずでうぅ。 【死になさぁぃ】」
「一応、戦闘中なんだが? 【爆ぜろ!】」
「良いじゃないですかぁ。 【死になさぁぃ】」
「余裕、あり過ぎだろ。 【爆ぜろ!】」
そう言い合いながら、都市への城門へと向かう。 そっかぁ、これがヘルが見ていた世界か。
何となくだがこの戦闘で、自分を含めてヘルやハトリへの理解が深まった気がする。 ハトリは未だに激闘中だが、何れは合流できるだろう。
もう心配するのは止めたのだ。 だってハトリはまだまだ強くなりそうな予感がするから。
「さぁ、市街戦に突入するぞ。 【纏めて爆ぜろ!】」
「そうですねぇ、こんな都市はぁ、サッサと攻略してしまいましょうねぇ。 【纏めて死になさぁぃ】」
「同感だ」
そうして邪魔する蜘蛛がいなくなった城門をヘルと二人で潜り抜けた。
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カクヨム版(先行)
魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~
https://kakuyomu.jp/works/16816927862939210704
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新作:
VRMMOゲームをしていたハズが、気が付いたら異世界にいたんだが… ~人を見たら経験値と思え~
https://kakuyomu.jp/works/16818093086783757902