第268話 都市決戦編 ~えっ? 死闘ですか?~
カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。
「くそっ! 鬱陶しいんだよっ!」
「フッ、愚カナ…」
蜘蛛の親玉と死闘を繰り広げる幼女、ハイガンベイナ8歳です。
短距離転移をお互いが使いながら、出の早い魔術でチマチマと攻撃を出し合う、決定打が出る程ではない状況が続いている。
少し悔しいのは、相手の方が転移の発動速度が早い事だろう。 だが、物理攻撃や魔術の出力では私が上回っている。 そう、負けてはいないのだ。
だが膠着状態に近いのは私は相手に避けられるし、相手は私にダメージらしいダメージは与えられていない。 頑丈さでは圧倒的に私が上なのだ。
正直に言えば、持久戦なら自信がある。 何なら数日間程度なら余裕で戦闘を継続出来るからだ。 だけどなぁ…。
状況としては芳しいとは言えない。 多数に対して分断されている状況だからだ。
ヘルはまぁ、何だかんだと言っても心配はいらないだろう。 日頃はアレだが、戦いになれば手慣れている感があるのだ。
問題はハトリだ。 戦闘能力で言えば負けるとは思わないが、長期戦で唯一人と言う状況が不安だ。
分かれて行動していた時にはヘルがサポートに入っていたみたいだが、今回は違う。 一人での戦いなのだ。
だから本心から言えば、サッサとこの親玉を倒してハトリやヘルとの合流を果たしたい。 だが、そんな私の焦りを利用してくるのがコイツなのだ。
「随分ト、焦ッテイルミタイダナ…」
「ゴチャゴチャうるせぇんだよっ!」
そう、コイツは心理戦まで持ち込んでやがるのだ。 本当に嫌な性格をしてやがる。
「【動くなっ!】、竜爪!」
「グハッ!」
「油断してるから、そうなるんだよっ!」
「チッ、面倒ナ…」
だが解った事もある。 神力による絶対命令権は相手に通用しないのでは無く、一瞬なら効果がある。 そう、レジストまでに少し時間が必要らしいのだ。
だから今度は、神力と物理攻撃でチマチマと相手を削る事にした。 いや、チマチマなどと言ったが竜爪はそんなチンケな技では無い。
威力は十分なのだ。 ただし相手の親玉には再生能力があり、深手も数分もあれば回復されてしまう。 その間は、転移で逃げられまくっているだけなのだ。
コレはどちらかと言えば、私の問題だ。 竜爪は今まで散々使ってきたので、技の出としては早い方だろう。
問題は、神力を使用するための精神集中に少しの時間が必要なのだ。 要は練習不足なのである。
だから有効なコンボだと把握していても、中々チャンスが来ないし連打も出来ない。 くそっ! 折角のチャンスなのにっ!
だが決め手が無いのは相手も同じ様なので、勝敗が決まる事は無い。 一度は相手の爆裂魔術の中を突っ切って直接竜爪で斬り付けたら、大規模魔術は使わなくなったくらいだからね。
私は焦れていた。 だが、実は相手も焦れていたみたいで、ここで大技を出そうとする。 そう、来るのは全力のブレス攻撃だ。
この時、私は確信した。 コイツは私を舐めているのだと。
「いいだろう、お前がその気なら私にだって考えがある」
「ナラバ死ネ!」
そう言って放たれた《《ブレスの中を通って》》、私は相手に接近して行った。 竜燐と魔術障壁を展開すれば、少々痛くて目がチカチカするだけの魔力放出に過ぎない。
確かに建物であれば吹き飛んだろう。 人間なら消し炭すら残らない。 並の魔女ならどうだろう? 大怪我だろうか?
だがな、私は強者が放つ本物のブレスを知っているんだ。
核爆弾なら山を禿山に出来るかも知れないが、アイツのブレスは山だろうが何だろうがドロドロに溶かす位の威力はあったし、お前とは出力の桁が違った。
そう言えば、黒竜王のブレスが掠っただけで左腕を持って行かれたんだっけか。 アレに比べれば、お前のはブレス擬だ。
ブレスを吐き出しつつ膠着している親玉を竜爪で切り刻む。
「竜爪、百華連撃!」
親玉の外観が、少しずつ失われて小さくなっていく。 コイツは諦めるって事を知らないのかな?
そして、再生能力ではどうにもならない位に小さくなった時には、自然とブレスも止まっていた。
「ココマデヤッテモ、勝テナイノカ…」
「相手が悪かったな。 丈夫さに掛けては自信があるんだ。 じゃぁな、【死ね!】」
もう抵抗するだけの気力も残っていなかったらしく、気配が完全に失われた。 素材として売れるだろうか?
そんなバカな事を考えていると、不思議と周囲の気配が把握出来てくる。
あっ、ハトリはまだ戦っているみたいだ。 いや、私よりも大勢を相手にしているのだから当然か。
状況はハトリ有利で進んでいる。 そっか、心配する程でも無かったんだな。 でも立ち回り方が、私よりも上手い気がするのは何故だろう?
じゃぁヘルはどうかって言うと、私の方にユックリと進みながら戦っている。 うん、安定感抜群だな。 下手な軍神よりも強いのではなかろうか?
そして私はと言うと、まるで親の仇にでもあったみたいに蜘蛛たちに襲われている。 不思議だ。 もしかして親玉が本当の親だったのだろうか?
だからと言って襲って来る蜘蛛たちは、私の敵にはならない。 いやぁ、転移しない蜘蛛って楽勝だわ。
「【爆ぜろ!】、【爆ぜろ!】、【爆ぜろ!】、竜爪!」
少し距離がある相手には神力で爆散させ、近過ぎる相手には竜爪で切り刻む。 うん、数が多いだけだな。
相手の連携にも慣れて来た。 こうなれば作業と同じだ。 一体一体、確実に相手を葬っていく。
「やっと合流できましたぁ。 【爆散しなさぁい】」
「よっ、お疲れ。 竜爪!」
お互いが、周囲の蜘蛛を屠りつつ状況確認などを行う。 どうやらヘルはいつも通りらしくって、特筆する部分は無かった。
「んじゃぁ、ハトリと合流して殲滅戦でもするとしよう」
「賛成ですぅ」
戦場は、まだ燻っているのだ。
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カクヨム版(先行)
魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~
https://kakuyomu.jp/works/16816927862939210704
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新作:
VRMMOゲームをしていたハズが、気が付いたら異世界にいたんだが… ~人を見たら経験値と思え~
https://kakuyomu.jp/works/16818093086783757902