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第263話 都市決戦編 ~えっ? 人族の日常ですか?~

カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。

「ふぅ、久しぶりにマトモな食事をした気がする」

「そうですねぇ、美味しい料理を作れる事だけが、人族の存在意義だと思いますぅ」

「そこまで言う?」


 久しぶりの料理を堪能《堪能》した幼女、ハイガンベイナ8歳です。


 そしてお腹が一杯になったハトリは、船をぎ始めている。 どうやら疲れていたみたいだな。


 料金を支払って、飲食店を出払う。 ハトリはヘルに背負われており、何だか不思議な光景だった。


「そう言えば、しばらくの間はヘルがハトリの面倒を見ていたんだったな。 今みたいにハトリの世話をしていたりしたのか?」

「ハトリちゃんはぁ、自然児ですからねぇ。 食事の後はぁ、いつもこんな感じですぅ」

「そうか。 ハトリが随分と強くなって驚いていたんだが、訓練メニューとかはどうしていたんだ?」

「そうですねぇ、ハトリちゃんは戦いの場さえ用意しておけばぁ、状況に合わせて勝手に強くなる感じでしたぁ」

「んーむ、でも人間相手の戦いだったんだろ? 訓練相手としては不足している様に感じるんだが」

「相手をさせる人数をぉ、少しずつ増やしていったんですぅ。  取り逃がしたら失格だって言ってたらぁ、全体を見ながら行動する癖が付いたみたいですぅ」

「視野が広くなったって事?」

「そうですねぇ、ある程度先読みする能力を獲得した印象でしたぁ」


 そうか、戦い方が根本的に変わったって事だったのか。 以前は本能のおもむくままに戦っていた印象だもんな。


「それにぃ、神格を得させる為に魂を強制的に取り込ませていたんですけどぉ、それにもすぐに順応した感じでぇ、完全に神格を得た時には使いこなしていた印象でしたぁ」

「そっかぁ。 私なんて絶対命令権以外の部分になんて、目が向かなかったからな。 ハトリみたいに身体強化なんかに使うなんて考えもしなかったよ」


 今なら私にだって、身体強化や他の使い方だって多少は分かる。 それでも未だに神格の全ての力を引き出せているとは思わないケド。


「ハトリちゃんはぁ、本能に従順なんですぅ。 だから新しい力なんかもぉ、すぐに理解出来たんだと思いますぅ」

「なるほどなぁ」


 私は人族の味方になったつもりは無い。 だけど心の何処かでは人族に絶滅して欲しくはないとも思っているんだ。


 そりゃぁ食事とか衣服とか、人族が絶滅したら困るって理由もあるけど、本質的には違う。 蜘蛛と人族となら、人族にシンパシーを感じる自分がいるのだ。


 何だろう、自分を完全に人族から除外したくないと思う感情。 別に人族が優れているとは思わないし、少なくとも半分以上はどちらかと言えば悪人だと思っている。


 だって人族が形成する世の中って、善人よりも悪人が生きやすい世界な気がするからだ。 別に前世の世界だけじゃなくても、この異世界でも戦争は無くならないだろうし、私はそれも人族の本能の一部だと思っている。


 前世での私は、人間は世界をむしばむガン細胞の様な存在だと思っていた。 そして何れは地球そのモノすら滅ぼす可能性が高いとも思っていた。


 二酸化炭素の排出ゼロを目指すって言いながら、片方では排出権をカネで売買するおぞましい存在。 自然保護だか絶滅危惧種どうたらって言っていながら、鯨の保護を目的にする団体は牛肉輸出業者からお金を受け取り、自然保護だってビジネスにする理由いつも探すような連中。


 再生可能エネルギーだって言いながら、平気で野山を伐採して太陽パネルの売買で利益を得たり、ろくな連中がいない。 何がサステナブルだ。 カネにならなければやらないクセに。


 だからと言って別に人嫌いだったワケではない。 そりゃぁ仲の良い友達だっているにはいた。 少なかったけれど。


 この異世界の人間が好きか嫌いかって問われたら、多分嫌いな人間の方が多いだろう。 だからだろうか? 人族を殲滅せんめつしようとする蜘蛛たちに、少し同情の様なモノを感じてしまうのは。


 蜘蛛たちは本能に従い、基本的に真っ直ぐだ。 彼らには善もなければ悪も無い。 そして種族の繁栄を本能から望んでいる。


 だから別に、蜘蛛たちが人間を殲滅してしまったとしても、きっと私の心は痛まない。 それは自然の淘汰とうたか栄枯盛衰にしか感じないからだ。


 だが私は、そんな蜘蛛たちの殲滅を目指している。 半分は私の我侭わがままだし、彼らの生き残ろうとする強い意志も無視して突き進む。


 これからもっと、強い抵抗に合うだろう。 そりゃそうだ。 彼らの生存本能を踏みにじろうとしているだから。


 私に足りていないのは、きっと覚悟だ。 私は黒竜の魂や神としての魂に、全てをゆだねる事を躊躇ちゅうちょしている。 心の何処かで人間のフリをしていたい部分を捨てられないでいる自分がいるのだ。


 多分、人間のフリを止めれば私はもっと強くなれる。 そんな確信がある。


 ハトリが人間のフリをしているのは私の為だろうし、私に関係なければきっと人間などどうでも良いのではないだろうか?


 ヘルは何処か、葛藤かっとうする私を見て楽しんでいる気がする。 時々慈愛の神みたいな目で私を見つめてくるが、忘れてはならない。 コイツは生と死をもてあそぶのが本能である死神なのだ。


「きっとぉ、人間的な部分を全て捨て去ってしまったベイナ様はつまらないですぅ」


 ほらな。 私が人間的な部分を捨て去れない事を分かって言ってやがる。


「ちょっと、一人でブラついてくる」

「じゃぁ私たちはぁ、先に宿でも取っておきますねぇ」

「あぁ、頼む」


 私の強化された気配察知は、街全体の情報を全て私の脳みそに送り付けてくる。 そう、ここで少し別行動を取ってもハトリやヘルの位置は把握出来るし、今まさに路地裏で男の集団が女の子を襲おうとしているのも、手に取る様に把握出来る。


「チッ、転移!」


 一瞬で男達の前に転移で現れ、目視で周囲を把握する。 ちょうど男達が被害者の少女をこうとしている瞬間だった。


「クズだな。 【爆ぜろ!】」


 爆散した男達を見た少女は、恐怖と混乱が入り混じった様な目で私を見てくる。 そりゃそうか、レイプされそうな瞬間に集団殺人事件に出くわした様なモノだからな。


 だが私は、正義の味方としてこの場に現れたワケじゃないんだよな。 ただ脳みその中に雑音の様に入ってくるこの場所にイラついていただけなんだ。


「邪魔したな」


 だから私は、男達の血や臓物ぞうもつまみれた少女をその場に残して、人通りが多い道に出た。


「一人になったのは、失敗だったかな」


 蜘蛛たちとの戦いでみがかれてきた気配察知や魔力探査は、いやが応にも街全体の情報を脳みその中に送り込んでくる。 その中には程度の差こそあれ、雑音も多く含まれている。


 路地裏で飢えて死にそうになっている子供もいれば、盗んだ金で暴飲暴食を行う連中もいる。 幸せのお裾分すそわけと言わんばかりに周囲にピンク色のオーラを振りまくカップルもいれば、妻に鉄製の鍋で死ぬほど殴られている夫もいる。


 ありふれた街の日常なのだろうが、いかんな。 わずらわしさの余り、この街を吹き飛ばしたい衝動に駆られる。


「そうか、私はもう完全に人ではなくなっていたのだな」


 野性で生きている動物は、人の中では生きられない。 精々せいぜいおりにでも閉じ込めて見せ物にでもするのが正解だ。 動物園って娯楽として。


 だったら、野性で生きるバケモノはどうしたら良いのだろうか? そんな疑問が頭をよぎった。



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カクヨム版(先行)


魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~


https://kakuyomu.jp/works/16816927862939210704


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新作:


VRMMOゲームをしていたハズが、気が付いたら異世界にいたんだが… ~人を見たら経験値と思え~


https://kakuyomu.jp/works/16818093086783757902

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