第261話 都市決戦編 ~えっ? 攻撃方法の進化ですか?~
カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。
「死ね!」
私がそう命じると、周囲にいた蜘蛛たちの気配が一斉に消え去った。
今日も今日とて蜘蛛たちを退治する幼女、ハイガンベイナ8歳です。
ハトリやヘルたちと行動を共にし始めてから早数ヶ月、私も随分と魔力の糸による斬撃にも慣れてきた。 今では十本近くの糸を生成する事も出きるし、それを相手に転送で直接送り付ける事も出来る。
かつてはハトリやヘルにペースを落として貰っていた私だが、今では遅れる事も無い。 うん、順調だ。
もう攻略した街や都市なんかは数十には及ぶだろうし、今のペースを持続していけば何れは殲滅も可能だろう。 一時期は蜘蛛の増殖のスピードを脅威に感じていた私だが、随分と心にも余裕が出来たモノだ。
「なぁ、この街の攻略を終えたら少し休暇を取らないか?」
「そうですねぇ、蜘蛛たちも少しずつ強力になってきている事ですしぃ、それが良いかも知れないですぅ」
「ハトリはまだまだ元気なのー!」
そう、私たちは蜘蛛の侵攻ルートを逆算するかの様な道筋で、蜘蛛に支配された都市や街での戦闘を繰り替えしている。 別に街や都市の奪還を目的として行動しているワケではないのだが、結果的には人間達の街などを開放して回っている事になっているのだ。
そんな街の中には人間が戻って来て、再び街に住み着いて再興を試みている場所もあるみたいだ。
だからと言って街の復興などを手伝う気は更々ないのだが、私たちが頑張った結果でもあるので少し嬉しい気分もある。 今更正義の見方になるつもりなんて無いのだが、何となく誇らしいのだ。
だって誰にも認められる事も無く、延々と蜘蛛たちを駆除しているのって修行僧にでもなった気分になるからね。 まぁそんな街などを確認して自己満足に浸りたいのだ。
それにヘルも言っていたが、蜘蛛たちが少しずつ強くなってきているのも気になる。 いったい一番最初に蜘蛛に蹂躙された街か都市には、どんな親玉がいるのだろうか?
今はまだ、梃子摺るって程でも無い。 ハトリが大幅に強化されているってのもあるし、私だってレベルアップしている。
「あらぁ? 何だか誘い込まれたみたいですぅ」
「うへっ?」
「とーなのぉー!」
私たちがいる場所を目掛けて、特大のブレスが叩き込まれる。 いや、特大ブレスだけじゃないな。 それ以外にも個別のブレスや魔術が集中して襲いかかって来る。
特大ブレスはハトリが一刀両断して難を逃れたが、その他の攻撃が鬱陶しい。 視界は白く染め上がり、多数の魔術を叩き込まれた事によって魔力探査が難しくなっている。
確かに気配察知で相手の位置は大体把握出来ているが、まさに一斉攻撃と言った印象で相手の数が増加する一方だ。
これは彼らの生存を掛けた最終攻撃なのだろう。 見方の犠牲を無視した戦い方で、こっちに消耗を強要してくる。
攻撃の中にはダメージを負いそうな魔術なども含まれている為に、無視する事も出来ない。 もしも人間の軍隊なんかだったら、壊滅してもおかしくない攻撃だ。
ハトリは休む暇が無くて、少し息が上がっている。 ヘルはまぁソツなくこなしているが、それ程余裕があるって印象でも無い。
対する私は魔力障壁などを展開しながら、チマチマとした反撃しか出来ていない。 正に体力勝負って印象だ。
いやホント、人間をやめていて良かったよ。 でなければこの攻撃は凌げなかっただろう。
無意識の内に相手を舐めていたのだろうか? 窮鼠猫を噛むなんて言うが、正にそんな感じだ。 相手を追い込み過ぎたのかも知れないな。
いや、私たちは相手を追い込む悪の側なのだ。 何時からか自分たちを街を開放する正義の見方にでもなっていたつもりだったのだろう。
蜘蛛たちは何時だって生存を掛けた戦い方をしているし、彼らは弱肉強食に従って人間達を餌にしていたに過ぎないのだ。 反省、反省。
だから私も弱肉強食に従って彼らを滅ぼそう。 別に食べるために襲っているのではないので、若干後ろめたさはあるが慈悲の心は捨てる。
次々と私たちを滅ぼす意思を持った蜘蛛たちを、丁寧に気配察知でマーキングしていく。 同時に蜘蛛を殺すための魔力の糸も大量生産だ。
「悪いが死んでもらう!」
一斉に転移で魔力の糸を送り付けるが、脳みそが情報過多でオーバーヒートしそうになるのを意思の力で必死に抑え込む。
すると各地で蜘蛛の気配が大量に失われていくのを感じた。 中には脚だけが切断されて悶え苦しんでいる個体もいる様だが、これは仕方がないと諦める。
甚振って殺す趣味は無いのだが、多少狙いが外れたのは不可抗力だ。 こっちだって、精一杯の力で反撃した結果なのだから。
だが効果は覿面だったみたいで、蜘蛛たちからの圧力は急激に衰えていった。 もう勝敗は目前だ。
ハトリは突進力を上げて前へと進み、ヘルは私が殺し損なった個体なんかも含めて掃討を開始する。 そして私は残り少なくなった決死隊と思しき集団を始末していく。
「口惜シイガ、我ラノ抵抗モココマデカ…」
気が付くと相手の親玉らしき個体がハトリの前に立ちはだかっていた。 配下たちの指揮を放棄したのだろうか? ブレスだってハトリには通用しない事は分かっているだろうに、何をしに来たんだ?
「タダデハ死ナン。 貴様等モ地獄ヘ付キ添ッテ貰ウゾ!」
そう親玉が言ったかと思うと、強力な魔力の高まりと共に体全体が白く輝き始める。
「まさか自爆するつもりなのかっ!」
アレはヤバい。 自爆魔術なのかは知らないが、あんなのの巻き添えを喰らうのは御免被りたい。 しかも配下の個体達は殉教するのが当然と言わんばかりに、私たちの逃走を妨害してきた。
私一人なら転移で逃げるのは難しくない。 攻撃に転移を使うようになってから、速度や制度もかなり上がっているからだ。
だが、ハトリやヘルを含めて転移するのは難しいのだ。 一緒に転移するのであれば固まっているか、さもなくばその瞬間だけでも味方の位置が固定しているのが望ましいからだ。
ハトリは最後の足掻きで襲ってくる蜘蛛に対応すべく動き回っているし、ヘルも蜘蛛たち妨害されて私たちに合流する余裕は無い。
「滅びろぉぉぉ~っ!」
私はありったけの糸を生成して親玉の上に降り注ぐ。 脚などの切断には成功しているが、魔力の編み込みが甘いのか胴体の切断までには至らない。
まるで火のついた導火線付きの爆弾を切り刻もうとしているかの様な心持ちだ。 例えば切断する事が出来たとしても、爆発までは防げるかどうかの自信も無い。
くそっ! どうする? 何とか強力な魔力障壁でも展開して凌いでみるか? いや、それなら一層の事吹き飛ばしてみるか?
とにかく時間との勝負だ。
「ハトリ、射線を開けろっ! ドラゴンブレス!」
その直後、視界全面が白色に被われた。
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カクヨム版(先行)
魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~
https://kakuyomu.jp/works/16816927862939210704
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新作:
VRMMOゲームをしていたハズが、気が付いたら異世界にいたんだが… ~人を見たら経験値と思え~
https://kakuyomu.jp/works/16818093086783757902