第258話 進撃編 ~えっ? ハトリの戦闘能力ですか?~
カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。
「あっ、あれはヤバい。 逃げろ、ハトリ!」
「とぉなのー!」
蜘蛛の親玉のブレスを両断するハトリを見る幼女、ハイガンベイナ7歳です。
「嘘だろ…」
ハトリが強くなっていたのは確信してが、まさかブレスを両断する程に強くなっていたとは予想していなかった。 いや、強過ぎやん。
蜘蛛の親玉と思われる個体にユックリと向かっていくハトリ。 最早あの程度の個体ではハトリの敵としては不足なのだろう。
あのブレスの出力は、決して弱くは無い。 私だって直撃すれば無傷では済まない程だ。
だが神格を得たハトリにとっては、あの程度のブレスは警戒する程ではないのだろう。 だからと言って、ハトリの防御力がそこまで高いとは思えないのだが。
純粋にハトリの戦闘能力や迎撃能力が高く、簡単に対処してしまえるだけなのだ。 まさかブレスまで両断出来るとは思わなかったケド。
「ゴメンなのー。 ママのお願いだから仕方がないのー」
「コノママ敗レルツモリハ無イ!」
蜘蛛の親玉は、近距離攻撃で何とかやり過ごそうとする。 爪による攻撃。 牙による攻撃。 だがその攻撃たちはハトリの剣捌きによって、簡単に対処されていく。
「本当に強くなったんだな…」
今のハトリを見て思う。 今現在の近接戦闘能力で比べたら、私は必ず負けるだろう。 そりゃぁ反物質弾頭まで使用したら、遠距離での戦いなら私に分があるんだろうけど、ガチでの勝負なら勝敗は分からない気がする。
私だって黒竜や邪神の力を完全にモノにしていないってのもあるが、ハトリは確実にコチラ側、つまり邪神などの超越者の仲間入りを果たしていると感じられた。
もう立派になったとか言うレベルじゃないな。 その気になれば、国の一つや二つは簡単に落とせるレベルだ。
人間の剣聖に苦戦していた頃のハトリはもういない。 て言うか、どうやったらこんな短期間で強くなれるんだ? 私だってこの半年で十分強くなったと思っていたケド、それを突き放す位のスピードで強くなっているんだもんなぁ。
余程、物理強化の一点突破が上手くいったのだろう。 肩で息をする事も無いし、問題だったスタミナ不足も解消されている印象だ。
私は遊撃の役目を忘れて、ハトリの戦いに見入ってしまった。 私ですら攻略方法を決めかねていた親玉を、ハトリは何でもない様に削っていく。
飛び散る親玉の脚や牙。 そんなに時間は経過していないのに、親玉は満身創痍だ。
「トドメなのー!」
「クソガッ!」
そんな親玉の言葉を最後に、肉体が両断されて戦闘が終了した。 周りにいる蜘蛛たちに動揺が走る。 そりゃぁね。 あの戦闘能力は反則だ。
予想すら出来なかった事だろう。 今までの秀逸と呼べる程だった連携は影を潜め、そこからは殲滅戦に移行した。
中には早々に諦めて、都市からの脱出を図る個体なども現れ始めるが、これらは私とヘルの担当だ。
外壁を乗り越えようとする個体は狙撃で仕留め、密集している地点には極大魔術を叩き込む。 ハトリはちゃんと役目を果たしたのだ。
先輩の神々としての意地もあるし、一匹たりとも逃すつもりは無い。 流石にハトリは殲滅戦は苦手な様子だが、もう十分に働いて貰ったので文句は無いよ。
相手が魔術耐性がある蜘蛛だとしても、私やヘルが使用する極大魔術には対処出来るハズもなく、確実に個体数を減らしていく蜘蛛たち。
今まで苦戦していたのは高度な連携があったからこそで、司令塔を失った蜘蛛たちは手強さすらも失っていた。
「強者どもの夢の跡って感じだな」
あの親玉の蜘蛛は知能も随分と高かったらしく、今の蜘蛛たちの反撃など笑える程に弱い。 何と言っても、適切なタイミングで入る邪魔が無いのが顕著だった。
一応周囲を囲って攻撃してきたりしているのだが、未来予測とも思えた行動が含まれていないのだ。 単純な数でボコろうとするだけの攻撃。
そんな連中を始末してから、途中で逃走しようとしている個体も始末する。 最早戦闘と言うより作業だな。
ヘルはやっぱり経験豊富とも言える戦い方で、確実に蜘蛛の数を減らしていく。 あれ? これって私がスコア的に再下位なんじゃね?
長年死神として君臨してきたヘルは強い。 そつが無いと言うか、無駄が無いと言うか。
対する私は、未だにドタバタしている印象がある。 単純な戦闘経験の差なのだろうが、何だか口惜しい気分だな。
魔術の出力では、この半年間での訓練で劣っている印象は受けないのだが、一回の攻撃で仕留める蜘蛛の数が少ないのだ。 いや、よく見るとヘルは相手を一ヶ所に追い込んでから吹き飛ばしているんだな。
そりゃぁ結果に差が出るハズだ。 だが言い訳をさせて欲しい。 黒竜って戦い方が大雑把なんだよ。 私を指導していたイリスだって、力押しでドンって感じだったし。
「ベイナ樣ぁ、ペースが落ちていますよぉ」
「分かってらい!」
何だかこの中だと私だけダメな子みたいで、ちょっと悔しい。 考えてみればこの戦闘経験の少なさが、あの親玉にとっては付け入る隙だったのだろう。
「くそったれぇぇぇ~っ!」
スマートさの欠片も無く、周囲に向けて特大ブレスを放ちまくる。 都市だったモノが瓦礫へと変わっていくがお構い無しだ。
「あらあら、ベイナ様もぉ、まだまだ元気じゃないですかぁ」
「言ってろっ!」
狙いもいい加減で、数撃ちゃ当たるの方式で瓦礫を量産していく。 ふん! どうせ私は未熟者ですよっ!
そうこうしている内に、視界も開け蜘蛛の数も減ってきた。 うん、ラストスパートだ。
「ほらほら、まだ瓦礫の中で息を殺している蜘蛛もいますよぉ」
しれっと気配察知まで使い熟しているし。 ヘルって黙っていれば優秀なんだよなぁ。 流石は最古の神だけはあるって事か。
ヘルに教えを乞うしか無いのだろうか? このまま三人で旅をするなら、私が一番ダメな子になりそうだし。
「今なら特別サービスでぇ、手取り足取り教えますよぉ」
「夜の特別授業とかはいらないからな!」
「えぇ? そこがサービスの目玉ですよぉ」
ハトリを鍛えた手腕には是非とも私もお世話になりたい。 でも後が怖いんだよなぁ。
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カクヨム版(先行)
魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~
https://kakuyomu.jp/works/16816927862939210704
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新作:
VRMMOゲームをしていたハズが、気が付いたら異世界にいたんだが… ~人を見たら経験値と思え~
https://kakuyomu.jp/works/16818093086783757902