第256話 進撃編 ~えっ? 再侵攻ですか?~
カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。
「精算を頼む」
「昨晩はお楽しみでしたね、お嬢さん方」
宿屋の娘に嫌味を言われる幼女、ハイガンベイナ7歳です。
昨晩は当然かの様に同じ宿に泊まったのだが、静かな夜にはならなかった。 まぁ、案の定である。
急遽同じ宿に泊まる事になったのだが、部屋に空きがあった事もあって別々になった。 そして当然の様にヘルにる襲撃もあったのだが、ハトリによる「一緒に寝たい」攻撃もあったのだ。
ハトリも寂しかったのだろう。 当然私も寂しかった。 だから結局同じベッドで眠る事になったのだが、その時に寝ぼけたハトリによって抱き締められた。
それが見た目通りの少女による抱き締めであれば問題は無かったのだが、力は闘神のソレである。 正直に言おう。 中身が色々と漏れ出すかと思った。
結果として私は一晩中も助けを求める事になり、安眠は出来なかった。 てか色々な人に迷惑を掛けたとも思う。
対するハトリは私の成分でも吸収したかの様に元気である。 そして助けるフリをして私を弄くり回したヘルも同様である。
その結果が一番の被害者である私が料金を支払った上に、嫌味まで言われているのであるのだから納得はいかない。
「早く蜘蛛の討伐に行くのー! そして強くなったハトリを見て欲しいのー!」
納得はいかないのだが、ハトリの満面の笑みを向けられると文句を言う気にはなれなかった。
「じゃぁこれから都市の攻略に転移で向かうが、ハトリはアタッカー、ヘルはバックアップ、そして私は遊撃だ。」
「分かっていますよぉ」
「了解なのー!」
「別に急いで攻略する必要は無いんだ。 無理だと思ったら、その時は撤退してくれ。 コレは元々、私だけの仕事だからな」
「そんなの気の回しすぎだと思うのですぅ」
「ハトリだけでも十分なのー!」
「それじゃぁ、転移!」
私たちは時間の短縮も兼ねて、転移で攻略中の都市の前までやって来た。 早速、私たちの出現に気が付いた蜘蛛たちが騒ぎ出している様だが襲って来る様子は無い。
私たちが飛べる事を知っているみたいで、都市での防衛に徹するみたいだ。 嫌になるね、学習能力が高い敵なんて。
「じゃぁ早速で悪いんだがハトリ、城門の突破を頼めるかな?」
「余裕なのー! 百剣乱舞なのー!」
「は?」
気が付いた時には、かつて城門だった場所は細切れになっていた。 いや、石とか鉄とかでも補強されているのに、その上から糸による強固な封印まで行われていたんだぜ?
凄まじい威力だ。 だが、蜘蛛たちも一瞬怯んだ様子だったのが、慌ててハトリへの攻撃を仕掛ける。 蜘蛛たちも必死なんだな。
そんな思いを他所に、そこからハトリの快進撃が始まった。 元々は物理よりだったし、剣術もそれなりに上手かった。
だが現状はどうだ? 蜘蛛がある程度ハトリに接近すると八つ裂きになる現象だけが現れる。 オカシイ、斬っている瞬間が全く見えない。
蜘蛛たちも接近するのは危険だと感じ始めたのか、魔術や糸などによる攻撃も加わり始める。 だが、そんな魔術すらも切り裂く少女。
これがハトリの今の力か。 こりゃぁ数でどうにかなる存在じゃないね。
元々目が良かったってのもあるケド、攻撃を最小限度の移動だけで躱してみたり、攻撃自体を切り裂いてみたり。
それに気配察知まで使っている様子まである。 連携したり死角をついてみたり、蜘蛛たちもハトリの進撃を止めようと躍起になっているみたいだけど、効果すら無い。
確かに「無人の荒野でも移動してる」かの様である。
「蜘蛛が足止めすら出来ないなんて…」
「だから言ったじゃないですかぁ。 お仕事モードのハトリちゃんは追い掛けるのが大変なのですぅ」
「見惚れている場合じゃないな。 私たちも後を追うぞ」
「了解ですぅ」
私は一応援護を行う目的で、ハトリ近くの上空へと移動する。 だが昨日とは全く違った対応で、私は主戦力だとすら思われいない様子だった。
蜘蛛たちは明らかにハトリを危険視しており、私やヘルは二の次だ。
「嘘だろ? 斬撃まで飛ばせるのかよ!」
それは漫画やアニメでも見ているかの様だった。 私にだって風魔術で似たような事は出来るが、殺傷能力が違う。 どうやっているのかは知らないが、本当に斬撃を飛ばしているのだ。
風魔術による斬撃なんて、実質的には実用性は無い。 そりゃぁゴブリンとかコボルトとか一般人とかなら切り裂くことは可能だろう。
でも射程だって短いし、防御力の高い相手には傷を付ける事すら不可能だ。 だがハトリの飛ぶ斬撃は違う。
相手が建物だろうが魔物だろうが、魔術だろうが関係ない。 「斬り裂く」との意志の下に、両断されていくのだ。
神力が関係しているのだろうか? 斬撃強化だけでは無い気がする。
あれじゃぁ闘神と言うよりは刀神なのではあるまいか。 いや剣神か。
斬り裂けないモノが無いんじゃないかって位の斬撃力で進攻していくハトリ。 いやはや、確かに極致ってモノは存在するんだな。
苦手な魔術を克服して強くなるんじゃなくて、得意な剣術を神格を得て強化する事を選んだハトリ。 素直にハトリらしいって思うし、結果は予想以上に強くなっていた。
私はハトリによって見逃された「弱い蜘蛛」を狩っていく。 だが視線はついついハトリを追ってしまう。 おや? 今のは縮地かな?
ほんのちょっと手助けして貰うだけの予定が、何だか今では見物人の気分だ。
いや、都市を攻略するつもりは今だってあるし、私の仕事だって認識は変わっていない。 ただ何て言えば良いのかな? 近くで職人の技を見学している感じ?
動きに無駄は無いし、所作の一つ一つが美しい。 そして当然かの様に伴う結果。
蜘蛛たちにとっては悪夢の一日になったに違いない。 私を含めた襲撃者を悉く追い払ってきた彼らが、為す術無く倒れていくのだ。
ヘルも私も、思い出したかの様に襲撃してくる蜘蛛を返り討ちにしながら、ハトリの後を付いていく。
ねぇハトリさん。 強く成り過ぎていませんかぁ?
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カクヨム版(先行)
魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~
https://kakuyomu.jp/works/16816927862939210704
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新作:
VRMMOゲームをしていたハズが、気が付いたら異世界にいたんだが… ~人を見たら経験値と思え~
https://kakuyomu.jp/works/16818093086783757902