第251話 再会編 ~えっ? 空中戦ですか?~
カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。
「どわぁぁぁ~っ! 蜘蛛のくせして飛んでんじゃねーよっ!」
蜘蛛との空中戦をする幼女、ハイガンベイナ7歳です。
一人で蜘蛛の殲滅を開始して早数ヶ月。 恐れていた事が起こった印象だった。
そう、遂に空を飛ぶ個体まで現れ始めたのだ。 とは言っても時速にしても300キロ程度が限界な様で、ヘリコプターや新幹線程度の速度でしかない。
それに比較すれば、私は音速の数倍で飛行する事も可能なので、取り囲まれるまではには至っていない。 まぁ言ってみれば、こっちはジェット戦闘機並だからね。
だからと言って安心できる状況かと言えば、そうでもない。 何と言っても相手の数が多いのだ。
「ギガ・エクスプロージョン!」
相手が密集している箇所を見つけては、その空間一帯を攻撃しているのだが、撃墜できる個体は数体程度。 つまり爆心地近くにいた個体が落とせる程度で、その他の個体は魔術障壁か何かを発生しているみたいで効果は薄い。
「もしかして魔術系の異能か何かを獲得した結果なのか?」
そう考えてみれば納得出来る気がする。 空を飛んでいるのは異能によるモノでは無く、飛行魔術だと言う事だ。
もしもハトリの例が当てはまるのなら、飛行可能な時間などにも制約があるんじゃないだろうか? それに魔術障壁の事から考えてみても、魔術師が保有していた異能でも獲得したのではないだろうか?
人間の魔術師は思っていたよりも、ずっと少ない。 事実、私は人間の魔術師には遭遇した事が無いし、そんな魔術師が空中戦が出来るとは思えないのだ。 まぁ相手もいないしね。
だからだろうか? 相手の攻撃手段がブレスと魔術攻撃に限られているし、射程距離が空中戦を行うには短過ぎる。
一纏めに攻撃出来ないのは腹立たしいが、時間さえ掛ければ勝てる印象だ。 まぁ体力勝負になりそうだって事だな。
更に付け加えれば、この数か月間にも数々の実戦をこなし、体力や持久力だって向上している。 負ける要素は無いと言えるだろう。
「とは言え、面倒臭い事には代わりはないんだよな」
何か良い手は無いのだろうか? ブレスなどでも倒せるとは思うのだが、敵が上下左右に分散している関係上、薙ぎ払うなんて事をしても効果が薄いだろう。
いや、待てよ。 相手の防御力を支えているのって、魔術障壁だけなのだろうか? ならば魔術以外の攻撃なら無防備に近い?
これまでの蜘蛛との戦い方って黒竜の力を主力にしたモノだったし、そう言えば最近はマトモに邪神の力って使っていなかったよな。
「試してみるか」
邪神としての魂にアクセスし、その力を引き出しながら溜め込んでいく。
そして、出来るだけ多くの蜘蛛が視界に入る上空まで移動して、力を解き放った。
「【纏めて爆ぜろ!】」
すると、視界に入っていた個体の殆どが空中で爆散し、地上に肉片となって落ちていく。 そっか、神力には抵抗出来ないんだな。
自我が強烈に強い個体なんかには通用しない手法だけど、蜘蛛たちはどちらかと言えば無個性に近いみたいだ。
魔術を使用していた事からも個性は存在するのだろうが、どちらかと言えば本能に近い性格なのだろう。 そりゃそっか。 群れを形成している時点で、軍隊みたいなモノだもんな。
それに奴等が運用している戦術ネットワークとも呼べるモノは、個体の集まりと言うよりは群体意識に近いモノだ。
相手の蜘蛛たちは、一度に大量の仲間を失った事による混乱は少しはあったが、再び組織化された方法で攻撃を再開し始めた。
でも嫌になるな。 犠牲を厭わない戦い方って。 こりゃぁ人間の軍隊じゃぁ勝てないハズだ。
何だか戦い方が人間を対象にしたモノに特化しつつある印象を受ける。 次々に街や都市を落とした実績のある戦い方なのだろうけど、今の私には関係ない。
だって私は人間じゃぁないから。 うん、忘れていたい現実だけどね。
さぁて、攻略方法も分かった事だし、次の攻撃に移るとするかな。
気配察知と魔力探査を同時に使用して、相手の詳細な位置を特定する。 この気配察知と魔力探査の同時運用もこの数か月で習得した新しい技術だ。
中には物陰に移動して、身を隠している個体もいるがバレバレだよ。 こちとら大量の蜘蛛を相手にする事には慣れているんだし、考えている事も大体分かる様になってきている。
どうせ、何処かに追い込んで一斉に攻撃するつもりなんだろ? 一度深追いをして散々なめに合ったからね。
こっちだって日々成長しているのだ。 身を隠してこちらを観察している個体が連携して指示を出しているんだろ?
だから狙う個体は、身を隠しているヤツが優先だ。
「【爆ぜろ!】、【爆ぜろ!】、【爆ぜろ!】」
次々に司令塔を破壊していくと、蜘蛛の連系が段々と弱まっていく。 気分は凄腕スナイパーだ。
そして残るは烏合の衆。
「【纏めて爆ぜろ!】、【纏めて爆ぜろ!】、【纏めて爆ぜろ!】」
気が付いた時には、周囲にはスッカリ蜘蛛の気配は消えていた。 勿論、気配遮断を使っていた個体も全てだ。
「はぁ、何だか気疲れしてしまったな」
私はどこに向かって侵攻してるのかは知らないが、蜘蛛の強さが少しずつ上がってきている気がする。
もしも連中の侵攻ルートを逆行しているのだとしたら、恐らくは古参の経験豊富な個体にも巡り会うのだろう。
言ってみれば、最初に遭遇した蜘蛛は株分けされた新兵で、今回の連中は中堅どころと言った感じだろうか?
それに成体の大きさが、少しずつ大きくなっているのも気掛かりだ。 まぁそれだけ防御力も高かったりするからね。
今はまだ余裕がある。 そう、今はね。
私が行き着く先にはどんなヤツがいるんだろうね。 餌が少なくなった状態で共食いをした強力な個体なんかも含まれるのではないだろうか?
今回は偶々《たまたま》、空の中で起きた遭遇戦だった。 やっぱり航空偵察部隊だったりするのだろうか?
次は航空主力部隊とか言わないよね? そんな不安が頭を過るのだった。
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カクヨム版(先行)
魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~
https://kakuyomu.jp/works/16816927862939210704
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新作:
VRMMOゲームをしていたハズが、気が付いたら異世界にいたんだが… ~人を見たら経験値と思え~
https://kakuyomu.jp/works/16818093086783757902