第249話 闘争編 ~えっ? 進化種ですか?~
カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。
「マッピング完了、逐次ロックオン。 ファイヤーブリッドレイン、シュート!」
「おおぅ、随分と正確になったじゃねぇか」
「でも親蜘蛛は倒しきれなかったみたいだ」
もう既に、蜘蛛の駆除に慣れてきた幼女、ハイガンベイナ7歳です。
蜘蛛の駆除を初めてから、半年近くは経過したんじゃないかと思う。 駆逐が完了した森や街は数十は下らないハズだ。
その間に、魔術の扱いは上手くなったと思うし、随分と効率も良くなった。 だが今回の様に殺しきれない場合もあるのだ。
「アレってやっぱり、進化種だよね。 魔術結界を張っているみたいだし」
「だな」
最初からその危惧があった蜘蛛の進化、それを達成した個体が稀に現れる様になってきたのだ。 しかも今回は…。
「なぁイリス、あれって砲撃体勢に入っていないか」
「後は任せたぞ。 自力で何とかするんだな」
そう言ってイリスは、ミーティアを連れて自分たちだけ安全な距離にまで転移した。
そして私には極太レーザーか何かに思えるブレスが、一直線に迫って来る。
「ひぃぃぃぃ~っ!」
私は慌てて回避行動に移った。 流石にアレは結界やシールドの類では防げない。 そんな可愛い威力ではないのだ。
そこそこの威力の魔術では防がれるし、その上強力な砲撃までしてくる。 言うなれば今回の親蜘蛛は、強固な移動砲台みたいな個体である。
「ストーンブリッド!」
まぁ効かないのは予想しているのだが、一応質量弾も試しておく。 あっ、やっぱり防がれたか。
アニメや漫画での砲撃の力比べならば、ブレス同士がぶつかり合って押し合うなんて事になるのかも知れないが、現実の力比べはそうはならない。
どちらかと言えばノーガードでの打ち合いになって、防御力の高い方が勝利するイメージだ。 そして現状では、防御力が高いのは親蜘蛛の方である。
「蝶の様に舞い、蜂の様に刺す」って言葉があるケド、私がやりたいのはソレなんだ。 決して力比べなんかじゃない。
とは言え厄介なのは、相手の反応速度なんだよなぁ。 デカい図体の割には、移動速度も遅くないし方向転換なんかも得意だ。
しかも目が八つもあるセイか、距離感まで正確だ。 接近戦に持ち込ませない様な立ち回りまで上手い。
威力のある黒竜のブレスなら、相手の障壁だって打ち破れるだろう。 だが相手も心得ているのか、的確にこちらが発射体勢に入ろうとすると邪魔をして来る。
「知能まで高いんだよなぁ」
思わず愚痴が、口をついて出てしまう程だ。
長期戦は好きでは無いが、諦めるしか無いだろう。 こっちも必死だが、相手も必死なのだ。
幸なのは、体の大きさが圧倒的に私の方が小さい事だ。 だって、攻撃が当たり辛いからね。
偉い人も言っていたじゃないか。「当たらなければ、どうと言う事は無い」って。 などと考えていた事に罰が当たったのか、今度は拡散するブレスを放って来た。
「ウソだろぉぉぉ~っ!」
戦っていて何だか、2Dシューティングゲームの弾幕攻撃を思い出した。 とてもじゃないが、反撃する余裕なんて無い。
避けようと思った先にはキッチリとレーザーブレスが迫ってくるし、かと言って何処かに留まってしまえば集中砲火を浴びかねない。
そりゃぁ一発や二発、当たったところで死ぬとは思わないがダメージは負うし、痛いモノは痛い。 それにこちらの動きが鈍ってしまえば、撃ち落とされる未来が待っている。
それに私の転移って少しタメが必要な関係上、回避に使うには向いていないんだよね。
現状、何とかなっているのは空中戦が苦手じゃないって理由だけなのであって得意と呼べる程、回避能力が高いワケではない。
アレ? もしかして追い込まれているのって、私だったりするのかな? 嬉しくない現実である。
「ぬをぉぉぉぉ~っ! サンダーストーム! ファイヤーストーム! ウインドストーム!」
狙いは適当で、様々な魔術を放つ。 まぁ言ってみればヤケクソだ。 だが、それが幸いしたのか相手の攻撃が突然減少した。
ん? 何故だろう。 あのまま押し切ってしまえば勝てる可能性だってあったのに、どうして攻撃の手を緩めたんだ?
そんな中、視界がクリアになると再び攻撃の密度が増してきた。
私を位置を把握するのに、視界が大部分を占めているのか? だとすると、煙幕とかも有効だったりするのだろうか?
「エクスプロージョン×10!」
相手に致命傷を与えられるとは思わないが、視界を遮るのには十分な爆発が起こる。 すると今回も攻撃の手が弱まった。
そうか、探知能力が弱いのか。 これは思わぬ弱点だ。
「ミストフィールド!」
相手と自分との間に濃霧を発生させる。 それでも砲撃が止むワケではないのだが、正確性が格段に落ちる。 どうやら間違い無い様だ。
これなら時間が稼げる。 よし、魔力を溜めて強烈なブレスを放つ準備を…。
「うげっ!」
今度は私がいる場所に目掛けて、集中砲火が飛んできた。
「高い魔力には反応するのか」
そんなに都合良くはいかないか。 なら、チマチマと削っていくだけだ。 魔力の保有量には自信もあるからね。
そうして私と親蜘蛛との戦いは数時間は続いた。 だが、結果は一目瞭然。 瀕死になった親蜘蛛と、肩で息をしているだけの私。
「悪いね。 私の勝ちだ」
私は渾身の炎で、親蜘蛛を焼き払った。
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カクヨム版(先行)
魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~
https://kakuyomu.jp/works/16816927862939210704
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新作:
VRMMOゲームをしていたハズが、気が付いたら異世界にいたんだが… ~人を見たら経験値と思え~
https://kakuyomu.jp/works/16818093086783757902