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第248話 闘争編 ~えっ? 火炎地獄ですか?~

カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。

「あれが次の街か?」

「あぁ、後一週間もすれば破棄される可能性がある街だよ」


 蜘蛛くもに占拠された街を眺める幼女、ハイガンベイナ6歳です。


 この街も例に漏れずと言った感じで街中が蜘蛛の糸で被われていて、しかも出入り口は「これでもか!」って位に厳重に糸で封印されていた。


 それに感じる気配の殆どは蜘蛛たちのモノで、人間は数えるほどしかいない。 もう殆どの人間が食べ尽くされたのだろう。


「さて、どうやって討伐しようか…」

「魔術の操作を意識してやってみろ」

「なるほど?」


 やはり前回みたいに森ごと灼熱地獄にかえる方法はお気に召さなかったらしい。 改めて考えてみると、魔力制御ってあまり意識して使った事が無いんだよな。


 仕方がない。 今回は制御を重視しながらやってみよう。


 体内に存在する黒竜と邪神の魂から、意識を集中して魔力をひねり出す。 とは言っても馬鹿デカい魔力を引っ張り出すというワケではなく、魔力を編み込む感じで魔術の強度を上げていくイメージだ。


 よし、そろそろかな?


「ファイヤーウォール!」


 街全体を被う形で炎の大きな壁を作りだし、突破できない様に炎の温度を上げていく。 高さはどんな建物よりも高いくらいで。


 壁の厚さは5メートルくらいだが、その色は白く温度は7000度くらいだろうか。 近くにあった糸や木材たちが燃え上がり、開戦の火蓋ひぶたが切られた。


 今回は前回の反省を活かし、まず最初に逃さない事を意識した。 うん、成功したみたいだ。


 本能的に突破出来ないと思ったのか、蜘蛛たちが少しずつ中央へと移動している。 この蜘蛛たちも魔術耐性は持ち合わせているみたいだが、炎に対する耐性ではないみたいで逃げ惑っている。


 良し、もう少し温度を上げながら少しずつ範囲を狭めていくとするか。 送り込む魔力の量を少しずつ増やしながら、炎の色が白から青へと変わっていくのを確認する。


 するとレンガで出来たと思われる建物からも煙が立ち昇り、街全体の温度が上がった様な気がした。 いや、実際に上がっているのだろう。


 放射熱だけで糸や木材が燃え上がり、火災が街の中央へと向かって行く。


 ここからが大変なんだよな。 一度作ったファイヤーウォールを移動させるのは意外と難しくて、均等に収縮させるのは至難の技だった。


 ジワリジワリと、炎の壁が街の中央へと向かっていく。 歩く様なスピードだが、着実に内側に向けて収縮している様だ。


 木材で出来た建物は言うに及ばず、レンガで出来た建物までもが熱で溶けて変形していく。 そりゃそっか。 誰も耐火レンガで家を建てたりしないもんな。


 所々で狂った様に蜘蛛が飛び跳ねていたりするが、幸いにも脱出に成功した個体はいない。 いや、炎の壁には近付く事すら出来ない様だ。


 そりゃぁパニックにもなるわな。 最初は燃え上がっていたのは街の外縁だけだったのだが、火の粉で飛び火でもしたのか街の中心部でも燃え上がっている建物がチラホラ。


 中には毒のブレスで鎮火を試みる個体もいるみたいだったが、結果としてはサウナの焼けた石に水を掛けた場合と同じ様に、余計に周囲の温度を上げているみたいだ。


 まあね。 既に地面の温度すら、真夏のアスファルトよりも高温になっている様な状態だ。 打ち水をしたところで蒸し暑さが増すだけだろう。


 蜘蛛はあまり高温には耐性が無い生き物なのかも知れないな。 蜘蛛が熱射病になるのかは知らないが、弱り果てた個体から徐々に気配が薄くなっていく。


 えっ? 囚われていた人間はどうなったって? そりゃもう蜘蛛よりも早くお亡くなりになりましたよ。 だって元々弱っていたみたいだし。


 あっ、ついに親蜘蛛がブレスで炎の壁を攻撃し始めたぞ。


 でも残念。 今回は魔術の強度も半端ではないからね。 そんなに簡単に脱出路なんて作らさねーよ。


 地面から熱が中央に向かって行くのもあるが、放射熱だけでも強いのか乾燥した個体からも炎が上がり、内部の温度が連鎖反応でもするかの様に上がっていく。


 うーむ。 自分で言うのもなんだが、こんな死に方はしたくないな。


 熱すぎて死ぬってどういった感覚なのだろう? 頭がボーッとして思考力が無くなって動けなくなるのだろうか?


 最初は暴れ回っていた蜘蛛も時間と共に少なくなり、ある程度壁が近付いた時点で発火していく。 そんな壁が中央に向かって収縮しているのだから、蜘蛛の未来は絶望的だ。


 何とか生き残ろうとしていた親蜘蛛も今は大人しいモノだ。 思考力さえ失ったのか、迫ってくる炎の壁を只々呆然(ぼうぜん)と眺めている。


 人間の様に汗をかければ違ったのかも知れないが、体内に溜まった熱を放出する事が出来ずに体温が上がる一方なのだろう。


 そう言えば昆虫は外気温が45度を越えれば死滅するんだっけか。 蜘蛛は昆虫ではないが似たような節足動物なので、やはり耐えられる温度も似たようなモノなのだろう。


 まぁね。 タンパク質って42度から変質が始まるって言われているんだから、理論上は45度を越える環境で長時間活動できる生物はいないハズだからね。


 そりゃぁ汗をかくと気化熱で温度を下げられるとは言え、モノには限度がある。 しかも変温動物である蜘蛛ならば、熱さに弱いのは当然だろう。


 親蜘蛛の牙がユックリと動いてはいるが、死ぬのも時間の問題だ。 いくらレッドドラゴンみたいな摩訶不思議なファンタジー生物がいるこの世界ですら、蜘蛛の魔物は熱耐性は得られなかったみたいだし。


 そう言えばSFなんかではシリコン生命体なんてのもあったな。 石で出来たゴーレムを生命体に区分して良いのかは知らないが、極限環境生物って基本的には微生物の一種だし、カビや菌類などを含めた定義だしな。


 魔法生物でも無い限りは極限環境では生存出来ないって事か。 ファンタジーって言っても、案外何でもアリってワケでも無いんだな。


 まぁ良いや。 炎の壁の収縮速度を増加させて、一思ひとおもいに焼き殺す事にでもするか。 実質的には殆ど死に絶えているんだし、これ以上苦しめる必要も無いだろう。


 再生能力を持つ魔物などがいる関係上警戒はしていたのだが、焼けた部分は元に戻らないのか、そもそも再生能力は持ち合わせていなかったのかは知らないが、焼かれた肉は生肉には戻れないって事だ。 


 意識を集中して炎の壁の制御に注力する。 体積の大きな親蜘蛛ですら内部にかなりの熱が浸透している状態だ。


 子蜘蛛は言うに及ばず、成体の蜘蛛も死に絶えた。 後は親蜘蛛を焼き殺せば終了だ。


「収縮!」


 中心にいた親蜘蛛の体から煙が出始めたかと思うとその直後、一気に炎が舞い上がった。 抵抗の素振そぶりも見せない呆気あっけない最期だ。


 そして中心に集まった炎は巨大な柱になった後に、天に登る様にして終了した。


「今回は、魔術制御を中心に頑張ってみた。 前回よりは良かったんじゃないかな?」

「うーん、60点」

「採点が辛くないか?」

「なんか地味だった」


 黒竜的には派手さが無いとダメらしい。



少しでも気に入られた場合は、ブックマーク、評価、「いいね」をよろしくお願いいたします。


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カクヨム版(先行)


魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~


https://kakuyomu.jp/works/16816927862939210704


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新作:


VRMMOゲームをしていたハズが、気が付いたら異世界にいたんだが… ~人を見たら経験値と思え~


https://kakuyomu.jp/works/16818093086783757902

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