第247話 闘争編 ~えっ? 次の街ですか?~
カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。
「なぁ、まだ見つからないのかよ」
「今、集中しているんだ。 少し静かにしてくれないか?」
「ちっ」
アカシックレコードで蜘蛛の魔物に支配された街を探す幼女、ハイガンベイナ6歳です。
意識を集中してアカシックレコードに慎重にアクセスする。 とは言っても都合の良い条件での絞り込みが行えないので、街に関する記録をあさっている状態だと言える。
アカシックレコードの記録は、どちらかと言えばデータベースのレコードと言うよりもログに近い。 つまり、新しい記録が次から次へと追記されている様なモノだ。
その中から街に関する主な情報だけを抜き出して、更には蜘蛛の魔物が関係している情報だけを抜き出すのだ。
あっ、今現在襲われている街もあるんだな。 とは言っても今いる場所からは遠すぎて、とてもじゃないが行く気にはなれない。
だって私は正義の見方じゃないんだから。 そんなのは人間の英雄か何かにでも任せるとしよう。 ガンバレ人間、少しでも私の手間を省いてくれ!
更に記録をあさっていくと、つい最近放棄された街なんてのも見つかった。 こちらに関しては領主などが防衛を諦めて放棄した場合と、蜘蛛たちが支配していた街での食料が尽きた事による放棄が見つかった。
そのどちらのケースでも末路は最悪だ。 街に取り残された人間達が食料として備蓄されているのか、それとも食べ尽くされたかの違いでしか無いからだ。
だが調べている過程で分かった事もある。 それは蜘蛛の魔物が巣を作るのは、ある程度以上の規模の街に限られる事だ。
食料の調達を街の中で行うのは当然だが、近隣の小さな街や集落などは成体の蜘蛛が群れで襲撃して、餌として確保した後に街に持ち帰っているらしい。
そして支配した街の中で親蜘蛛が産卵して、子蜘蛛の餌として捕獲した人間として与えて個体数を増やす事を目的としている様だ。
家畜やその他の魔物たちは、成体の蜘蛛の餌になる事が多い様だが理由があるのだろうか?
異能の収集を目的としているならば、この世界では異能を有している可能性が高いのは人間って事になるのだが、その辺はどうなっているのだろうか?
確かに異能を有したゴブリンやオークには出会った事は無いが、だとしたら蜘蛛たちは積極的に人間を狙っている事になるな。
幸いなのは、人間が有する異能は戦闘系に偏っていない事だろうか? 商売に関する異能なら取り込まれても脅威になるとは思えないが、戦闘での駆け引きなどに影響する可能性もあるので楽観視は厳禁か。
それと非常に珍しいケースなのだが、子蜘蛛が強力な異能を獲得した場合は、その子蜘蛛を親蜘蛛が食べる事もある様だ。
自分の強化にも余念が無い親蜘蛛って怖いよね。 出来ればそんなのとは戦いたくないんだが、何れは戦う事になるんだろうな。 嫌だけど。
そして残念なお知らせと言うか何と言うか。 親蜘蛛の性質のある程度は子蜘蛛にも引き継がれるらしいって事だ。
今回のケースで言えば、親蜘蛛の魔術耐性が子蜘蛛たちにも引き継がれているらしい。 さすがに全ての異能が引き継がれるワケではないのは良かったが、これは世代交代を繰り替えしていけば強力な種族になり得る事を意味している。
まぁ、蜘蛛たちを滅ぼすなら、あまりノンビリとはしていられないって事だね。 だって、私たちがこの街に住んでいたのって、精々数ヶ月前なんだし。
たったそれだけの間で成体になった蜘蛛が沢山いたのだから、蜘蛛の成長速度は思いの外早いのだろう。
ハトリを例に考えるならば、やっぱり何れは空を飛ぶ個体も出てくるだろうな。 最も、魔力総量が多くないハトリは長距離飛行が行えないが、魔力を増やす異能なんてモノがあれば最悪だ。
いや、転移の異能なんか獲得された場合には目も当てられないな。 殲滅自体が難しくなる。
物騒な考えだが、核汚染と蜘蛛の氾濫とではどっちがマシなのだろうか? 少し真剣に考えてしまう自分がいる。
核の冬って、どれ位の核爆弾を使用すれば起こるんだっけか? いやいや、やっぱり反物質弾頭の使用はダメだな。
蜘蛛を殲滅し終えた後の世界で、マトモな生活が出来ないんじゃ意味が無いもんな。 黒竜たちにも怒られそうだし。
仕方がないな。 今後は環境被害の少ない魔術を中心に討伐を行っていく事にしよう。
とは言っても街の被害などについては考慮はしない。 使用しないと決めたのは、異常気象などを引き起こす能力を制限するだけだ。
今は黒竜の因子を中心とした魔術を使用していたが、いい加減、邪神としての力の使い方にも慣れていこうと思う。 支配の能力だけじゃなくて、魔術の威力強化などにも恩恵がありそうに感じるからだ。
そんな事を考えている最中にもアカシックレコードの検索を行っていたのだが、丁度いい街が見つかった。
飛んでいけば数時間で到着する位に近く、備蓄されている人間が少なくなっている街だ。 早く討伐を行わなければ街の人間を食い尽くし、放棄され兼ねない街だ。
「丁度いい蜘蛛に支配された街が見つかった。 飛行で2~3時間くらい掛かりそうなんだが構わないか?」
「おう、じゃぁソコへ行こう」
空を飛んで目標の街へと向かう。 だが途中で餌の探索部隊と思われる蜘蛛たちがいる森の上空に到達した。
「この森の中に成体の蜘蛛たちがいるみたいだし、少し試してみたい魔術があるんだ。 もう少し高い高度に移動してくれないか?」
「おっ、新しい魔術が? 良いぜ、試してみろよ」
「それじゃぁ遠慮無く」
意識するのはナパーム爆弾。 黒竜としての魔術適正と威力向上に加えて、邪神としての高威力の灼熱魔術を使用する。
「ギガ・ヘルフレイム!」
発動した魔術は、火炎地獄とも呼べるモノだった。 いやぁ、燃える燃える。
森をスッポリと被う形で発動した魔術は、そこに生息する全ての動植物に灼熱の地獄を提供した。 その中には当然、蜘蛛の魔物も含まれる。
多くの動物たちは逃げる間もなく焼き殺され、魔術に耐性がある蜘蛛たちさえも悶え苦しみ焼死した。 正に魔王の諸行である。
ちょっと威力が強すぎたのか、地面の一部がガラス化しているみたいだ。 例えるなら、ちょっと熱めの溶岩地帯?
「やりすぎちゃったかなぁ。 テヘペロ」
「いや、少し効率が悪すぎないか?」
「そうかなぁ」
黒竜的には、森を一つ消し去る位の事は許容範囲らしい。 寧ろ問題にしているのは、《《森ごと》》蜘蛛を消し去った事らしい。
そりゃぁ、拡散レーザーみたいな魔術で蜘蛛の魔物だけを抹殺出来れば良いんだけどさ。 どうやら私は魔術制御が不得意らしいんだよね。
世の中、上手くはいかないモノだ。
だが、これは一応成功と呼んで良いのではなかろうか? だって、核汚染とかしていないんだし。
「もしかしてお前って、凄い不器用なんじゃね?」
「返す言葉も御座いません」
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カクヨム版(先行)
魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~
https://kakuyomu.jp/works/16816927862939210704
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新作:
VRMMOゲームをしていたハズが、気が付いたら異世界にいたんだが… ~人を見たら経験値と思え~
https://kakuyomu.jp/works/16818093086783757902