第243話 闘争編 ~えっ? 激闘ですか?~
カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。
「あっ、そうだ。 お前が飛行して良いのは一番高い建物の上限までにしろよ」
「えっ、何を言っているんだ? 大体、何匹の蜘蛛がいると思っているんだ!」
「修行だよ、修行。 空から一方的な攻撃とかつまらないだろ?」
「そんなぁ」
修行を続行される幼女、ハイガンベイナ6歳です。
高度制限を付けられてしまったが、コレって相手の土俵で戦えって事だよな。 蜘蛛の数だけで言えば、森の数倍はいるんだが?
まぁ仕方がない。 言われたからには着陸できる場所を探して、何とか戦えそうな場所を確保する。
とは言っても、そこは広場だったらしく、伸びる道筋は4つ。 所謂、十字路って感じの場所だ。
元々は露天市場でも存在していたのか、それらしい残骸が無数に転がっており、決して足場が良いとは言えない。
まぁ、小さい私が自分の足で移動していては遅すぎるので、地面からは1メートル程は浮かんだ状態ではあるのだが。
気配と魔力探査の合わせ技で探知していると、既に私の位置には気が付いているみたいで、それぞれの道から接近する蜘蛛が数体ずつ確認できる。
いや、そんな生易しい状況じゃないな。 恐らく親と思われる個体が指示でもしているのだろう。 遅れて屋根の上からの襲撃を予定していると思われる個体まで現れた。
これで完全に逃げ道を塞がれたな。 そりゃぁ今から空に逃げれば襲われずには済むのだが、イリスは許可しないだろうし。
さて、どうしよう? もしも私が正義の見方だったとしたら、囚われている人間達を開放する為に戦うのが正解なのだろうけど、残念ながらそうではない。
蜘蛛に襲われても返り討ちには出来るのだろうが、指揮していると思われる個体が厄介そうなんだよね。 何と言えば良いのだろうか? 紛れる感じ?
気配を完全に消すのではなく、その他大勢の蜘蛛に紛れながら的確な指揮に集中している感じだと言えば良いのだろうか?
気を抜けば見失ってしまいそうな危険がある。 随分と賢い個体なんだろうな。
そんな事を考えていると、そろそろ戦闘範囲に入って来そうな蜘蛛がイキナリ糸の束を飛ばしてしてきた。
「ファイヤーアロー!」
飛んできた糸は全て炎の矢で燃やし尽くす。 まぁ一部建物に着弾して火事を起こしてしまったみたいだが気にしない。 いや、気にしている余裕が無い。
今度は背後や真横からの糸の束が迫ってきて、それどころではなくなってしまった。
この期に及んで私までも餌の仲間入りにでもするつもりなのだろうか? 私の体積って小動物なみだと思うんだが?
「ファイヤーウォール!」
私の周りを取り囲むように炎の壁を生成して、相手の攻撃をやり過ごす。 すると今度は、別の個体が炎の壁を強行突破してきて、私に牙を突き立てようとする。
「竜爪!」
そんな相手を一刀両断、すると今度は次々と別の個体が襲ってきて混戦状態になった。 ははっ、こりゃぁ確かに相手の巣の中だわ。
下手に1体に集中してしまいそうになると、必ず横や背後からの攻撃が襲ってくる。 そうか、これが連係攻撃ってヤツか。
並の人間だったら、耐えられるのは数分が限度なんじゃないかな? だが私は少し興奮している。
たぶん、黒竜の因子のセイなんだろうけど、命のやりとりが楽しくなってきてしまっている。 あはっ、また1体殺してやったぜ。
ダメだ。 楽しくなってきた。
迫りくる牙や爪をあしらって、竜爪で切り刻む。 中にはポイズンブレスの様なモノを放ってくるヤツもいるが、結界で軽く防いでドラゴンブレスをお見舞いする。
色々と戦術を考えながら攻撃してきている様だが、私には関係ない。 それら全てをいなしては蹂躙する。
心のどこかで冷静な私が「街を壊しまくっているじゃん」とか「このままじゃぁ更地になってしまうぞ」なんて警告してくるのだが、どうしても戦いを続けたい私が我を押し通す。
戦う度に広場が少しずつ広がっていくのだが、途切れること無く襲ってくる敵が嬉しい。
もう捉えることは諦めてしまったのか、糸を使った攻撃は鳴りを潜め、近距離攻撃で私の注意を引きつつ離れた隙に遠距離攻撃のブレスが襲ってくる。
どうやら連中にもコレが生存をかけた戦いであると、認識できたのだろう。 悪いね、タダの餌じゃなくて侵略者で。
本来は私の訓練だったハズなのだが、戦いが長引けば長引く程に黒竜の因子に支配され、娯楽へと変わっていく。
意識を完全に黒竜の因子に渡してしまいたい欲求も生まれてくるのだが、ここはジッと我慢だ。 でないと人として越えてはいけない一線を飛び越してしまいそうになる予感がする。
殺人? 窃盗? そんなミクロな視点じゃなくて、本当の邪神の仲間になってしまいそうな予感がするんだよね。
相手は蜘蛛なんだけれど、それでも微かに感じる絶望の感情が愛おしい。 コレってタダのサディストなのではあるまいか?
十分に見晴らしが良くなった広間を見回してみると、憎悪の感情を向けてくる存在が一つ。 やれやれ、やっとお出ましか。
「悪いなぁ、親蜘蛛さんや。 お前の眷属たちを殺しまくっちゃって」
『オ前ハ、何ダ』
「んーと、そうだなぁ。 元人間の邪竜神かな」
『殺ス!』
「あぁ、存分に殺し合おうぜ」
そんな会話の直後、親蜘蛛から巨大なブレスが放たれた。 雑魚のポイズンブレストは格が違うな。 アレを受けたら流石に無傷とはいかないだろう。
ポイズンブレスじゃないな。 命名するならダークブレスかな?
短距離転移でブレスを躱し、親蜘蛛の背中の上に現れる。
「さぁ、雑魚とは違うところを見せてくれよ」
そう言いながら、竜爪を親蜘蛛の背中に突き刺した。 他の蜘蛛たちよりは丈夫だが、多少頑丈ってくらいだな。
折角なので、そのまま掌から魔術を放つ。
「エクスプロージョン!」
「PyGAAAAAAAAA~!」
その悲鳴に似た何かは、街中に響き渡った。
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カクヨム版(先行)
魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~
https://kakuyomu.jp/works/16816927862939210704
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新作:
VRMMOゲームをしていたハズが、気が付いたら異世界にいたんだが… ~人を見たら経験値と思え~
https://kakuyomu.jp/works/16818093086783757902