第240話 闘争編 ~えっ? 黒竜邪神ですか?~
カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。
「しかし気配ってヤツは凄いな。 まるで千里眼みたいだ」
「はぁ? お前は何を言っているんだ? 気配は気配だろ?」
「いや、相手の内部まで透けて視える感じがするんだが?」
「気配にそんな力は無いぞ」
「えっ?」
妙に話がかみ合わない幼女、ハイガンベイナ6歳です。
「気配は上手な使い手でも、気配遮断が見破れるのが普通だぞ。 内部なんて透けて視えねぇよ」
「じゃぁ自分が使っている気配察知は?」
「そんな事、知るワケねぇだろ!」
どうやら私が気配察知は、黒竜が使うモノとは別物だったらしい。
「じゃぁ相手が張っている結界や耐性の性質が視えるのは?」
「お前が持っている神格が影響しているのかもな」
あれ? 何だか完全に別物みたいだ。 それに私が行っている訓練自体も純粋な黒竜のモノとも違うみたいだ。
確かに自分の中にある黒の因子にもアクセスしているみたいなのだが、灰色の神格も作用している可能性があるのかな?
じゃぁ今度は少し遠くにいる蜘蛛に対して、神力を使ってみて攻撃してみる。
「【爆ぜろ!】」
遠くで目標が内側から弾け飛ぶのが確認出来た。 どうしてだろう? 今までよりもスムースに力の行使が行える。
「なぁ、今の気配は何なんだ? 何だか消え方が妙だったんだが?」
「何だと言われても、何となくやったとしか言えないんだ」
何が今までと違うのだろうか? 自分の魂を深く理解した事で力の使い方が変わったのか? どうやらそちらに理由がありそうだ。
いや、それ以前として…。
「なぁ、私は本当に黒竜なのか?」
「殆ど黒竜に見えるけど、神格がある別の何かだな」
「黒竜邪神とかかな?」
「お前、上手いこと言うなぁ! はははははっ!」
はい、どうやら黒竜ですらなかったみたいです。 そっかぁ、黒竜ですらないのか。
どうしてこうなったんだろ? 幼女神とかは半分冗談のつもりだったんだがなぁ。 やっぱりヘルに魔改造でもされていたのだろうか?
そして自分を深く理解する事に依って、その力の使い方を会得してしまった感じだろうか?
「なぁ、少し飛んでみても構わないか? 何かが掴めそうな気がするんだ」
「そうだなぁ…。 まぁ良いぜ。 そろそろ体の使い方は判ってきたみたいだからな」
「それじゃぁ、お言葉に甘えて」
少し黒の因子を使って浮かんでみる。 うん、これって飛行魔術と言うより反重力だ。
いつもは飛行魔術を使って空を飛んでいたんだけれど、感覚的には別物だな。 スッと加速してピタッと止まる。
スピードを上げた場合でもGを感じずスイスイ動ける。 黒竜王の機動性が異常に良かったワケだ。 よくあんなバケモノと空中戦なんてやったもんだな。
今なら撃墜王にだってなれる気がする。
「今度は森の中を飛びながら攻撃してみろ。 最高高度は一番高い木のてっぺんまでだ。 出来るか?」
「やってみる」
そう言われて、私は地上1メートル位の位置で次の気配に向けて飛んで行く。 走って行くのとは段違いの速度だな。
勿論、間にある木などに衝突しないように時々蛇行しているのだが、自分の体の小ささも相まって時間的なロスは殆ど発生しない。
進んでいく内に多数の気配を探知しているのだが、今度は周囲の被害が少ない神力を使ったモノで攻撃をしてみようと思う。
と言うのも、空中を飛んでいるのは黒の因子に関する力であり、攻撃に使おうと考えているのは灰色の魂に関する力。
すなわち同時運用がどのレベルで行えるのかが知りたくなったからだ。 同時に二つの力を意識するのは左右の手で違う事をする難しさがあるのだが、会得すれば非常に強化される可能性がある。
でも出来ないと言った印象ではない。 例えば自転車を運転している時の感覚に近いと言えるだろうか。 その状態でスマホを操作しようとしているみたいな感覚だ。
ジンワリと頭に頭痛が広がっていく。 多分、自分の魂を認識しているのが頭脳なんだろうけど、魂から発せられる情報が二倍近くになっているせいだろう。
気配からの位置情報から攻撃しようとすると、飛行中に木の幹にぶつかりそうになるし、飛行に意識すると細かな攻撃コマンドが上手く操れなくなるし。
そりゃそうか。 本来攻撃機ってのは、操縦者と攻撃者は二人でやるもので、一人で攻撃が出来るようになったのは、様々な情報処理装置や支援システムが開発されたからだ。
複数の魔術を同時に行使する時もそうだったけど、意識を分割する何らかの手段が必要な様だ。
以前みたいな時間分割方式を採用するか? いや、それだと高速移動に対応出来ない気がする。 気配を元に高速飛行するだけで結構一杯一杯だ。
でも何だろう。 出来るって予感はあるんだよな。 人間だと意識的に右脳と左脳を分割して利用するのは難しいんだけど、魂ってのはそれ自体が弱い自我みたいなモノを持っている気がするんだ。
黒い魂は攻撃的でバトルジャンキーみたいな性格を感じるし、灰色の魂は支配欲が強く放漫な印象を受ける。 でもそれも含めて自分を構成しているって感じだ。
目標の気配を中心にしながら大きく円を描く軌道で周回しながら、両方の魂への支配率を上げていく。
私に従え。 私に従え。 私に従え。 私に従え。 私に従え。 私に従え。 私に従え。 私に従え。 私に従え。 私に従え。 私に従え。 私に従え。 …。
両方共の魂は我が強く、支配には反抗的だが意識の中心は決して手放さない。 あっ、二キビみたいな人間としての魂が仲介?説得?をしているみたいだ。
ガンバレ私! 人間としての私! 未来は君の中に存在しているぞ!
意識を人間としての魂を通してアクセスしてみると、驚く程に整理された情報で送られてくる。 もしかして中間管理職みたいな立ち位置だったのだろうか?
何だか飛行している状態が自動操縦みたいな状態になり、気配を元にしたマッピングで全ての敵をロックオンした状態になった。
「【全て爆ぜろ!】」
その時、全ての敵が消え去ったのを気配で感じた。
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カクヨム版(先行)
魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~
https://kakuyomu.jp/works/16816927862939210704
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新作:
VRMMOゲームをしていたハズが、気が付いたら異世界にいたんだが… ~人を見たら経験値と思え~
https://kakuyomu.jp/works/16818093086783757902