第232話 闘争編 ~えっ? 帰還ですか?~
カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。
蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛。 そこは見渡す限に蜘蛛で溢れ返っていた。
「ダメだな、戻ってハトリたちと合流しよう」
「殺さないんですかぁ?」
「こんなコロニーが複数箇所存在するんだよ。 ここだけ潰しても意味がない。 囲まれるだけだ」
「仕方がないのですぅ」
そうして私たちはハトリとミーティアがいる広場に急いで戻って来た。 とてもじゃないが討伐とかのレベルの話じゃないからだ。
殺るならこの街ごと反物質弾頭で吹き飛ばした方が良いと言うのが私の結論だ。
だがその前に、この街に滞在する危険性の方が高い気が付いたと言った方が正しいだろう。 何せこの街は完全に蜘蛛の支配下にある状態なのだ。
あまりの蜘蛛の多さに、魔力探査を街全体にまで広げてみたのだが結果は最悪。 至る所に蜘蛛の巣とも呼べるコロニーが散乱していたからだ。
それはまるで、この街を自分たちのコロニーの集積地にするために襲ったかの様にすら思える。
この広場に蜘蛛がいないのは偶然に近い産物で、建物と建物の距離が広すぎるために巣が構築出来なかった結果だけなのだ。
幸いとも言えるのは蜘蛛が空を飛ぶ能力を有していない事だろう。 蜘蛛に発見されたとしても、空に逃げる事が出来るのだから。
だがハトリが疲労している現状では長時間は飛べないし、可能であれば見つかる前に撤収したい。 それが本音だ。
だが何処に向かって移動すれば良いのだろう。 あまり近い場所だと、休憩中に襲われるなんて事になり兼ねないからだ。
私たちは南に向かって移動してきた。 その結果がより酷い状態の街だった。
だからと言って、あの傭兵をしていた街に戻るのもあり得ない。 何故なら、あの街の未来がココと同じ気がするからだ。
こんな事なら、色んな所に拠点でも作っておくんだったな。
「仕方がないな、ジアンヌ・オルレアン嬢でも頼るか」
「レイクフォレストに向かうんですかぁ?」
「ハトリの状態を考えれば、転移で移動したいんだが可能か?」
「出来ますよぉ。 私がミーティアちゃんを抱きますねぇ」
「じゃぁハトリは私が連れていく。 早く休憩させてやりたいしな」
「場所はどうしますかぁ?」
「以前に泊めてもらった館の庭で良いんじゃないか?」
「じゃぁそこにしますぅ。 転移!」
「いくぞハトリ。 転移!」
そうして転移を行うと、見覚えがある館の前だった。
「最大出力、魔力探査!」
大急ぎで魔力探査で周囲を確認する。 良かった、無事みたいだ。
あの蜘蛛たちの侵攻がどの程度のレベルで行われているのかは知らないが、一安心である。
「ハトリ、もう少しで休憩出来るからな。 もう少しの辛抱だが耐えてくれ」
「ここで座って待っているのー」
「疲れているのすまないな」
「あっ、ちゃんと合流出来て良かったですぅ」
「早速、オルレアン嬢に宿を提供して貰えないかどうか交渉してくる。 悪いがヘルもここで待機していてくれ」
「じゃぁ私も座って待っているのですぅ」
その後私は、ヘルたちを置き去りにして館の玄関へと向かった。 急な来訪で失礼なのは承知しているのだが、正直言って私も休憩したい。
考えを纏める時間が欲しいし、今から宿探しを始める程の気力が残っていないのだ。
「すみません! ジアンヌ・オルレアン嬢に用があるんですが、誰かいませんかぁ?」
すると門は直ぐに開き、執事っぽい男が出てきた。
「ご予約に無いお方は、ご遠慮頂きたいのです」
「ハイガンベイナが会いたがっていると伝えて貰えないだろうか? それで対応して貰えるハズだ」
「ハイガンベイナ様ですね。 確認を取ってまいりますので少々お待ち下さい」
「宜しく頼む」
執事っぽい男は初見なのだが、私の名前を知っている反応だった。 だが本人かどうかが判断出来ないみたいで、顔を知っている人でも探しに行ったのだろう。
まぁ当然か。 身分を証明する物なんて持ち合わせいないし、急な訪問だもんな。 それに旧イーストウッド領の事も丸投げした状態だし、どんだけ厚顔無恥なんだって話だ。
「お待たせしました。 お嬢様がお会いになるそうです」
「判った。 仲間を連れてくるから、案内を頼みたい」
「ご一緒致します」
「了解した。 こっちに来てくれ」
そうして私はハトリやヘルが待つ場所へと移動すると、ハトリは既に寝入っているみたいだった。
「あーと、すまん。 仲間が眠ってしまっているみたいだ。 えーと、お名前は?」
「ジェイムスで御座います」
「ハトリは私が背負って移動するから、悪いんだが休める場所に案内して貰えないか?」
「私がお運び致しましょう。 失礼ではありますが、貴方様が背負うのは無理ではありまあせんか?」
「お気遣い、感謝する」
「では参りましょう」
「ミーティアちゃんも眠ってしまっているのでぇ、私が運びますぅ」
「よく考えたら、ミーティアって一番若いんだものな。 日頃の態度のデカさから忘れていたよ」
私は、ハトリをお姫様抱っこするジェームスの後について屋敷へと移動すると、待ち構えていたオルレアン嬢と共に客間へと案内された。
「お久しぶりで御座います、幼女神さま。 実は私も用件が御座いましてお会いしたいと思っていたのです」
「ベイナで良いよ、オルレアン嬢。 用件って旧イーストウッド領の事だったりするの?」
「ええ、その事も御座いますが、何でも人類が滅亡するかも知れないから合わせろと仰っている方が度々来訪しておりまして…」
「はぁ? 人類滅亡?」
どうやら私には疫病神に気に入られているらしい。
少しでも気に入られた場合は、ブックマーク、評価、「いいね」をよろしくお願いいたします。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
カクヨム版(先行)
魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~
https://kakuyomu.jp/works/16816927862939210704
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
新作:
VRMMOゲームをしていたハズが、気が付いたら異世界にいたんだが… ~人を見たら経験値と思え~
https://kakuyomu.jp/works/16818093086783757902