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第229話 日常崩壊編 ~えっ? 民間人ですか?~

カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。

「ハトリ、ヘル。 取り敢えず近くの住民を助けてやってくれ」

「ほっとけば良いと思いますぅ」

「食べたら勝手に帰ると思うのー」


 ハトリたちに拒否られる幼女、ハイガンベイナ6歳です。


 ハトリたちが乗り気でないのは判っている。 そりゃぁ人間に対して特別な感情なんて持っていないだろうからね。


 それに私だってそうだ。 この世界に大切な人間なんて存在しないし、いた事も無い。


 ウォルターや料理長が死んだ時だって涙すら出なかった。 強いて言うなら私の所有物を壊された怒りだった。


 やはり何処か他人事だし、いつまで経っても自分がこの世界の異物である認識がある。


 この世界は、私の世界じゃないって思いが心の隅っこに居座っているのだ。


 正直に言えばヘルやハトリは大切な仲間だけれど、この世界に住む人間は赤の他人と言った認識がどこかにある。


 自分の目の前の出来事でなければ何人死のうが何十人死のうが何百人死のうがどうでも良い。


 だけれどもだ。 この街には私たちの家がある。 拡大解釈をするならば、この街は私たちもモノだ。


 兵士や傭兵なんてのは死ぬのも仕事の内なのだろうから勝手に死ねば良いのだが、パン屋のオヤジはどうなのだろう?


 喫茶店のウエイトレスは? 料理屋のコックは? 雑貨屋の店主は?


 彼ら彼女らは私たちの生活を彩るパーツであって、いなくなってしまうと今迄通りの生活が送れなくなるだろう。


 それが何とも言えず腹立たしいのだ。


 逃げるのが苦手なのだ。 本心から言えば撤退なんて言葉も嫌いだ。


 逃げてしまえば逃げ癖が付きそうで嫌なのだ。 そして逃げて何処へ行く?


 だからと言って戦う事に大した意味は無い。


 街には入り込んだと思われる大蜘蛛の数は少なくとも100匹以上。 既に街を餌場として認識しているのだろう。


 そして私たちが追い払えるのも数匹が限度であろう。 まぁ街の被害を度外視すれば全滅させる事も可能かも知れないが。


 言ってしまえば自己満足。 そんな馬鹿な事をしようとしているのだ。


「ヘル、ハトリ。 無駄な事だとは理解しているんだ。 タダの自己満足だとしても、付き合ってくれないか?」


たまにはベイナ様の我侭に付き合うのですよぉ」

「よく判らないけど協力するのー」


「感謝する」


 こうして私は、襲われている住民の救助を開始した。 助けられるとしても、精々数人だろう。


 すでにお持ち帰りされた住民も少なくはないだろうし、持ち去り先すら知らないのだ。


 餌場となったこの街の未来は決して明るくはないし、都市機能が崩壊するのも近い未来かも知れない。


 普通に考えれば、この街を捨てて遠くの街に住み着くのが正しい選択だ。


 もしも森にいた蜘蛛たちが全て押し寄せたなら、数百どころか数千を越えるかも知れない。


 森にだって無限に餌があるでなし、無い話ではないのだ。


 ここで終止符を打つならば、森とこの街を反物質弾頭で吹き飛ばすのが正解だろう。 少なくともその後の被害は無くなるのだから。


 本当に愚かな選択をしていると思う。 わずかばかりの延命のために、無数の蜘蛛を相手にしているのだから。


 何だかんだ言って、普通の住民のフリが楽しかったのだ。


 領主になって、顔も知らない住民のために働いたりするよりも。 魔王として世界の敵として戦うよりも。


 ニート生活には少しは憧れもあったけど、何となく住民気分が味わえる傭兵生活が楽しかった。 短い間だったけれども。


 だからこれは、あきらめるためのケジメだ。


 だって傭兵の生活が、こんなにもろいモノだったとは知らなかったから。


 何処かの街に行ったとしても、もう傭兵になる事は無いと思う。 だってランク上げが面倒くさいし、収入だって実にショボい。


 どうして魔女たちが世捨て人みたいな暮らしをしているのかがやっと判ったよ。


 人間社会に潜り込むなんて、不真面目な私には無理だったんだ。 きっと魔女たちも似たようなモノなのだろう。


 ヘルが言うみたいに貴族とか王宮とかをたまに襲って生活していこうかな。


 平均生涯年収って2億円くらいだっけか? だったら20億円分くらい盗めば充分だろう。


 いや待て、私って寿命とかあるのかな? 無ければ100年の一度、王宮とかから失敬しよう。 そうしよう。


 街が近くにある森にでも住み着いて、魔女の館でも建ててみるかな。


 そしてちょくちょくやって来る討伐隊とかを相手にして遊ぶんだ。 うん、ちょっと楽しそうだ。


「もう良いや。 ヘル、ハトリ。 撤収しよう、この街から」


「もう気は済んだんですかぁ?」

「次は何処に行くのー?」


「そうだな。 取り敢えず借家に帰って荷物を全て回収しよう」


「お引越しですねぇ。 行く当てはあるんですかぁ?」

「ハトリは海が見たいのー」


「じゃぁ、南に向かおうか」


行き先は決まっていないけれど。



少しでも気に入られた場合は、ブックマーク、評価、「いいね」をよろしくお願いいたします。


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カクヨム版(先行)


魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~


https://kakuyomu.jp/works/16816927862939210704


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新作:


VRMMOゲームをしていたハズが、気が付いたら異世界にいたんだが… ~人を見たら経験値と思え~


https://kakuyomu.jp/works/16818093086783757902

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