第209話 スローライフ編 ~えっ? 楽隠居ですか?~
カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。
「楽隠居するぞぉー!」
「おーなのー」
「まぁ結局失敗すると思うんですけどぉ」
「そこー! やる前から失敗するとか言わない!」
ヘルの評価に反論する幼女、ハイガンベイナ6歳です。
私たちは結局無人島を脱出し、とある街にやって来た。 とうぜん街へは不法に侵入したのである。
いやね、もう入領税とか払わなくても良いかなって。 だって一々並ぶのとか面倒臭いし。
「ベイナ様が着々と悪の道に染まっていくのですぅ」
「ベイナ、良い子だよ?」
コテンと首を傾げて可愛く言い放ってみる。 ふふふ、どーよ汚れを知らない幼女の首コテは。
「あざと過ぎて、少し引くのですぅ。 あっ、こんな所に汚れが一杯ですぅ」 ゴシゴシ
「汚れとか言って、私の顔を拭くんじゃありません!」
なんだよ、私の心はピュアピュアなんだぞ。 あくどい事なんて生まれて一度も考えた事も無いし。 えっ、腹がドス黒い? 目医者に行った方が良いと思うよ。
「良い街っぽいし、宿は取らずに拠点を構えてみてはどうだろう?」
「愛の巣ですかぁ? それなら丘の上とかにある白い家が良いと思いますぅ」
「ハトリは大きなベッドが欲しいのー。 それでママと一緒に寝るのー」
新婚じゃぁないんだから白い家なんて遠慮したいんだが、この街にも不動産屋はあるのだろうか? 庭とかがあるのなら野菜とかを育ててみたいな。
「不動産屋なんて存在しないのでぇ、商業ギルドで良いと思いますぅ」
「へぇ、この世界じゃぁ不動産って商業ギルドで探すものなのか。 それで商業ギルドは何処にあるんだ?」
「どうして私がぁ、知っている前提なんですかぁ?」
「いや、そりゃぁ言い出しっぺだし」
「素直に街ゆく人にでも聞いてみたらどうですかぁ?」
「そうするか」
借家でも何でも、既に家が建っているって素晴らしいな。
「掘っ立て小屋が建てたいならぁ、スラム街になりますよぉ?」
「反省しているから蒸し返さないでくれ!」
やっぱり家をイキナリ建てるなんて、流石に無理があったな。 異世界小説だと簡単に建てられるんだけど、フィクションと現実は違うって事か。
じゃぁ場所を聞いてみるかな。 おっ、あのおばさんなんて良いんじゃないかな。
「ちょっといいですかぁ」
「何ですか? お嬢ちゃん」
「商業ギルドの場所を教えて下さい」
「あら、ちゃんと言えて偉いわねぇ。 商業ギルドは大通りを真っ直ぐ行った場所にありますよ」
「有り難うございます」
「少し距離があるから、ママと手をつないで行くんですよぉ」
「ママではありませんよぉ、愛人ですぅ」
「はぁっ? 愛人?」
「ベッドで組んず解れつする関係ですぅ」
「衛兵を呼んだ方が良いのかしら」
「失礼しましたぁ! それじゃぁ急ぐんで行きますねっ!」
「何か急ぐ理由ってありましたぁ?」
「お前はややこしくなるから黙ってろっ!」
見ろ、おばさんが変な目で見てるじゃないかっ! このままだと本当に通報されかねないから、ダッシュで脱出だ!
逃げる様にその場を離れ、何とか商会の建物と思しき場所の前で立ち止まる。
「なぁ、私が商会ギルドの人間と話したら不自然なのだろうか?」
「人間にとっては不自然な事じゃないんですかぁ。 さっきも愛人発言しただけで怪しまれましたしぃ」
「いや、そう言う問題じゃないと思うが?」
「判りましたぁ。 じゃぁ今度からはぁ、肉体関係がある恋人って事にしますぅ」
「やめい!」
「あのぉ、商館の前で騒がれると迷惑なのですが…」
「これは失礼、中に入らせて貰えるかな?」
「ええ、構いませんよ」
「じゃぁ遠慮なく」
中に入ると意外と人で混み合っていた。 やはり商人風の人物が多い。
「それでご用件は?」
「家を借りたい」
「あのぉ、奥様のご用件は?」
「借家を探しているんですぅ」
「はぁ、それでどういった物件をお望みで?」
「おい、無視すんなし」
「広い寝室がある家が良いですぅ」
「寝室だけが広い家はないので、大きな建物になりますが?」
「だから、無視すんなし」
「幼女を監禁しても怪しまれない家ならなんでも良いですぅ」
「「おい!」」
ダメだ、コイツらに任せていたら大変な事になりそうだ。 と言うか既に周囲から変な目で見られていた。 帰りたい。
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カクヨム版(先行)
魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~
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