第202話 世直し編 ~えっ? 魔導書ですか?~
カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。
「おおぅ、結構な種類があるなぁ」
「ご本が沢山なのー」
ハトリと書庫で魔導書をあさる幼女、ハイガンベイナ6歳です。
今回もフレッシュゾンビに案内されて、魔導書が置いてある書庫に連れてきてもらった。 書庫が複数あるとか、無駄に読書家だったのだろうか?
本来であれば、私にはアカシック先生が付いているので魔導書は必要ないのだが、一般的な魔術に関する知識が不足しているのだ。
だから実際に手に取ってみて、新しい発見か何かないかと思っている。
だって私が使っている魔術なんて、我流かヘルの受け売りでしかないのだ。 まぁそれでも魔術が使えているのは私に魔術の才能があったからだと思うのだが、やはり関連知識なども覚えていたいところだ。
ハッキリ言って私は、知識面では魔術の素人とかわらないと思うからでもある。
「へぇ、魔術の入門書まであるのか」
「ハトリもご本を読むのー」
ふーん、魔術の基本は自分の中にある魔力を感じるところから始めるのか。
私の場合はどうだっただろうか? 生まれてすぐに魔力探査を行っていたもんな。 それは地球では感じられない魔力っていう異物を感じられたからだ。
そう考えれば、地球からの転生ってのが良い方に作用したとも言えるんだよな。 何が幸いするか判らないモノだ。
それに生まれ持った魔力量が多かったってのも幸運だった。 そこだけは、あの女神様に感謝だな。
えーと何々、この世界には「火」「水」「風」「土」などの基本属性があり、そこから派生した「光」「氷」「雷」「金属」などの属性がある。
えっ? 私が最初に使った属性って重力だったんだけど、そんな属性なんて無いの? じゃぁ私が使っている重力って何属性になるんだ?
サッパリ判らん。 独自の属性なのだろうか?
それに錬金術やアイテムボックスは? えっ、錬金術は錬金大全を見ろ? アイテムボックスはまさかの記述無し?
そっかぁ、よくよく考えたら敵にアイテムボックス持ちっていなかったわ。 あっ、でも転移出来る奴はいたよな。 やっぱり空間属性ってあるんじゃないの?
ヘルが普通にアイテムボックスや転移が使えるから一般的な属性かとも思っていたんだけど、どうやら違うらしい。
そりゃ転移出来るやつだって限られてくるワケだよ。 いや、逆にヘルが凄いのか。
そう言えば魔術にだって矢鱈と詳しいし、ただの変態じゃぁなかったんだな。 今度ヘルに色々聞いてみるか。
それにしても「金属」なんて言う属性なんて初めて聞いたぞ。 何が出来るんだ?
攻撃魔法に鉄を利用したアイアンランスやアイアンウォールなんて魔術があるのか。 へぇ。 ただしミスリルやアダマンタイトを利用するには莫大な魔力と修練が必要ですってか。
そりゃね、魔法金属が簡単に生成出来るなら苦労はしないか。 じゃぁ私が使っているタングステンはどうなるんだろ? 要実験だな。
この本でも「魔術の基本はイメージです」なんて書かれているケド、鉄なんてどうやってイメージすりゃぁ良いんだ? 銅やアルミとの違いは?
あっ、あったあった。 「鉄を触って肌触りを覚えたり持って重さを実感してみるのも良いでしょう」だって? 「夢の中に鉄が出てきたら合格です」ってハンターXハンターのクラピカかよっ!
夢に見るまで鉄の事を考えるなんて私には無理だな。 でも私には鉄の科学知識があるんだ。 それで何とかならないか試してみよう。
えっと鉄の元素記号は「Fe」で番号は26だよな。 いや待てよ。 鉄ってそもそもイオン化傾向が高いから酸化しやすいんだっけか。
純鉄は白に近い銀色で、自然界に存在するのは黒か赤に変色した酸化鉄が多いんだよな。 だとすると、酸化鉄をイメージした方が良いのか。
よし、黒鉄って言うくらいだもんな。 直径1センチ程度のパチンコ玉でも意識してみるか。
鉄出ろー、パチンコ玉みたいな鉄出ろー。 うわっ、魔力をゴッソリ持っていかれたぞ。
「うーむ、パチンコ玉だ」
「パ・チンコ玉なのー? 意外と小さいのー」
「パチンコ玉なっ!」
パ・チンコ玉って何だよっ! 何かばっちぃモノを想像しちゃったじゃないかっ!
しかし、紛う事なきパチンコ玉だ。 銀色なのはクロムメッキじゃなかったっけ?
そんな事が出来るのならフルメタルジャケットとかAP弾とか想像だけでいけそうだぞ。
燃費は凄く悪そうだし、戦闘中に魔力から生成なんて現実的じゃないけど、暇な時にでもチマチマ作ってみるのはありかも知れないな。
だって鉄だけでも錬金術で集めるのは苦労しているんだし、合金とか貴金属とか無理だったもんな。
一般的な人なら無理な魔力量が必要なんだろうけど、私の場合は魔力だけは掃いて捨てるほどあるからな。
こんな事ならチマチマ金貨を作っていれば、大金持ちになれるじゃん。 困った時の金策に利用するとしよう。
「ママがまた残念な顔をしてるのー」
「残念とか言うなし」
「多分失敗すると思うのー」
「ふっふっふっ、今日の私は一味違うのだよ」
「本当なのー?」
「いま金貨を複製して見せてやる!」
アイテムボックスから金貨を取り出して良く観察する。 くっ、無駄に細工が細かいな。
「早くするのー」
「ちょっと待って、今すぐ複製するからっ!」
「凄い汗なのー」
「くっ、滅茶苦茶消費魔力が多いじゃないかっ!」
「全然大きさが足らないのー」
「うをぉぉぉ~っ! 出来たぁぁぁ~っ!」
「あれれ~なのー。 色も変だし重さが全然違うのー」
「えっ、そんなバカな…」
ズッシリとくる重量感が…ってアレ? これってば「愚者の金」と呼ばれる黄鉄鉱では?
って事は、私は愚か者ってことか? そんなぁ…。
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カクヨム版(先行)
魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~
https://kakuyomu.jp/works/16816927862939210704
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