第192話 世直し編 ~えっ? 暗殺者ですか?~
カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。
「ヘル、今は協力して襲撃者を撃退しよう!」
「ぐぎぎぎぎぃぃぃ! 私の恨みを知りなさぁい。 ヘルフレイム!」
「ちょっ! 宿屋の中で、それはマズい!」
血の涙を流しながら怒り狂うヘルを見つめる幼女、ハイガンベイナ6歳です。
激オコだ。 激オコプンプン丸だ。
私としては助かったのだが、ヘルは怒り狂って我を忘れている。
あっ、燃え上がる襲撃者の炎が家具に引火した。 まるでヘルの怒りが炎に乗り移って、全てを焼き尽くそうとしているかの様だ。
「落ち着け、ヘル。 寝ている者もいるんだぞっ!」
「死ね死ねし死ね死ね死ね死ね死ねぇぇぇ~っ!」
ダメだ。 まるで言葉が耳に届かない。 こうなったら、ハトリとミーティアだけでも救出しておくべきだろう。
他の宿泊客? まぁ悲しい事故だったって事で。
「侯爵様の仇だぁっ! 死ねぇっ!」
そう言って侵入者は寝ているハトリにナイフを振り落とそうとする。
「させるかっ! 転移!」
転移で間に割り込んで、魔力鎧でナイフの刃を受け止める。 ふぅ、間に合った。
「身体強化からのぉ、ボディーブロー」
「げふぉっ!」
私の拳が暗殺者の鳩尾にめり込む。 そして蹲った頭を掴んで情報収集。 前回は無意識で暗殺者を殺して誰の差し金だったか分からなかったからね。 一応だ。
「マジックスキャン!」
「ぎゃばばばばぁぁぁ~っ!」
あっ、コイツら侯爵家の手先だ。
「マイクロウェーブバーストぉ! 襲撃者は、侯爵家の暗部だっ!」
「侯爵家の人間はぁ、皆殺しですぅ! ファイヤーボール!」
「だから室内では火を使うなって言ってんだろうがぁ!」
周囲が燃え上がる様は、まるで信長がいた本能寺みたいだ。 つまり何が言いたいかというと、アチコチ燃えてて手遅れだって事だ。
「ヘル、この後は侯爵邸の前で集合だっ! 勿論お前も来るんだぞっ!」
「当然ですぅ。 殺し尽くすまではぁ、怒りが収まらないのですぅ」
だろうね。 あんなに怒っているヘルを見るのは初めてだ。 そんなに今夜の事を楽しみにしていたのか。
少しだけは優しくしてやろう。 勿論、絶対に股は開かないケド。
「あはははは~っ! 死んでも地獄にすら行かせませんよぉ!」
狂った様に炎の中で笑うヘルは、少し怖かった。 少しばかり襲撃者に同情してしまった程だ。 楽に死ぬことすら出来ないだろう。
そこで私はドアを蹴破って、ハトリとミティーアを抱えて外に出る。 どうやらドアの封印は解除されていた様だ。
持ち運べない重さじゃないケド、さすがに2人を運ぶのは大きさ的にツラい。
「うーん。 ママの汁はもう飲めないのー」
なんつー夢を見ているんだか。 てか私の汁を飲む状況って何だよっ!
「ほら、起きてくれ! ハトリ、ミーティア」
「おはようのチューがないと無理なのー」
『へっ、ペタンは黙って背負っていれば良いのです』
「コイツら本当に寝ているのか?」
「夢の中なのー」
『疑ってんじゃねえです』
「寝たフリなんかしてんじゃねぇっ!」
どうやら睡眠魔術も解除していた様だ。 何だ、ヘルも少しは理性が残っていたんだな。
「チューでお目々パッチリなのー」
「いや、周囲を見てみろよっ! 燃えてんだろ?」
「チューなのー」
「いや…」
「チュー」
唇を突き出しているハトリに根負けしてキスをした。 いや、良いケドさ。
「お目々パッチリなのー!」
「それは良う御座いましたね」
何とか目覚めてくれたので、そのまま宿を脱出した。 はぁ、何だか疲れたよ。
「良く燃えてるのー」
ハトリは外から燃え盛る宿屋を見ながらテンションは高めだ。 チューの効果かそれとも火事場が楽しいのかは聞かない方が良いのだろう。
だって、宿屋にいた受付さんが頭を抱えて蹲っているからね。 損害賠償なら侯爵家にお願いします。
この街には消防団がいないのか、燃えるに任せて炎が暴れている。 そして見物人で気にしているのは、近くに建物がある者たちだけみたいだ。
世知辛いねぇ。 誰も井戸まで行って、バケツリレーすらしないみたいだ。 いや、バケツそのものが無いのだろうか?
水魔法で消し止める事だって出来そうな気はするんだけど、そもそも魔法や魔術が使える者が希少だからね。 こんな所には出張らないんじゃないかな。
まぁ私としては、炎の中から聞こえてくる狂った笑い声の方が気になって、それどころじゃなかったケド。
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カクヨム版(先行)
魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~
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