第177話 旅立ち編 ~えっ? 侯爵家襲来ですか?~
カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。
「ベイナ様ぁ、侯爵家の軍が迫って来ていますぅ」
「どの位の距離がある?」
「一日半くらいですぅ」
「そうか」
侯爵家との戦争を準備する幼女、ハイガンベイナ6歳です。
「数は判るか?」
「大体200から300ですぅ」
思ったよりも少ないな。 いや、急遽集めた数としては多い方かも知れない。
侯爵家として短時間で動かせる数としては、限界に近い気がする。 つまりは、ほぼ私兵だけで構成されているのだろう。
確かにこのレイクフォレストの私兵なんてそんな数は存在しないし、お世辞にも練度は高くない。 まぁ未だにマリアンヌが起こした騒動から回復していないのだ。
そういやマリアンヌって今はどうしているのだろうか? 処刑されても生きている気がしないでもないのは私だけだろうか?
ここレイクフォレストの宗教革命が起こったのは、私が原因である。 そう、当時は鬱陶しかった聖教会を駆逐する為にマリアンヌを聖母マリアに仕立て上げ、この地に送り込んだのだ。
当然マリアンヌだけでは戦力としては心許ないのでヘルをサポートとして送り込んでいたのもあって、聖教会の職員と信徒をほぼ壊滅までは追い込んだ。
そこで聖母マリアが支配する聖マリア教会で人心を掌握する予定だったのだが、何を思ったのかマリアンヌは領主の座を乗っ取り、好き勝手してしまった。
結果としてマリアンヌは民から疎まれる存在となり、更にはレイクフォレストを脱出していたジアンヌ嬢が解放軍を組織して都市を奪還する寸前までいっていた。
私の目的は聖教会の駆逐であったし、人心の離れたマリアンヌは不要であった事もありジアンヌ嬢の説得材料として犯罪者として引き渡し、ついでに今後の事も考えて解放軍を皆殺しにしたのだ。
「ジアンヌ嬢はいるか?」
「呼んでくるのですぅ」
まぁ今更マリアンヌがどうなっていようと関係ない様にも思えるのだが、あのゴキブリ並の生命力は利用出来る気がするのだ。
それに侯爵軍への対応も決める必要がある。 話し合いは必要であろう。
◇
「お呼びに従い、参上致しました」
「ジアンヌ嬢よ、楽にせよ」
「はっ」
何だか彼女は、未だに私には絶対服従って感じなんだよね。 余程、あの時の神罰が衝撃的だったのだろうか? 怖くないよー。
「いよいよ侯爵軍が攻めて来た様だ。 とは言っても到着は一日半は後になると思う」
「はい」
「数は200から300程度だ。 どうだろう、自分の力で殲滅してみないか? 勿論サポートは行うので安心して欲しい」
「お望みとあれば。 しかし今からですと、こちらが用意出来る戦力は200にも満たないと思います。 正直に申し上げますれば、籠城戦意外の選択肢は無いかと思います」
「いや、打って出るのだ」
「命令に背くつもりは御座いませんが、勝利するのは難しいかと存じます」
あーこりゃ『傀儡の魔女』が数に入っていないな。 アレを使えば、単体でも侯爵軍程度なら駆逐できるハズなんだが。
「お前に与えた『傀儡の魔女』を使うのだ」
「何でも枝毛が気になって睡眠不足だそうで、自室から出てこられないのですが?」
「よし、殴ってくる!」
本当に何やってんだよ、あのクソニート。 枝毛か気になって睡眠不足とかって、引きこもる言い訳すら面倒になっているパターンじゃん。
てかアイツ、奴隷だよな? どうして自室なんて与えられてんの?
てな事で『傀儡』の部屋にダイブイン!
「おらぁぁぁ~っ! 出てこいやぁ、傀儡ぅぅぅ~っ!」
「うわっ、敵襲っす! 姉さん、出番っす!」
「ふっ、この『傀儡の魔女』に楯突く愚か者がいるとは驚きだぞ」
「らいだぁきいっくぅぅぅ~っ! げしげし」
「ぎょばっ! げふぉっ! ぐふぉっ!」
「ぎょわぁぁぁ~っ! 姉さんがやらたっす!」
いや、どうしてコイツがここにいるんだ?
「久しいな、マリアンヌ。 お前はやっぱり生きていたのか」
「誰かと思えば幼女神様じゃないっすか、お久しぶりっす!」
「どうして死んでないんだ?」
「あの後火炙りにされたっす。 とっても熱かったっす」
「熱かったで済むんだ…」
「ちょっとコツがあるっす。 息を止めれば何とかなるっす」
「不燃ゴミみたいな奴だな」
「そしたら奇跡だとか、幼女神の加護だかって話になって開放されたっす」
「じゃあなんでこの街にいるんだ?」
「路銀が無かったんでこの館にお世話になったっす。 タダ飯は最高っす」
ゴキブリでも火炙りにされたら死ぬと思うんだけどな。 それが生き残ったってだけでニート一直線とかどうなっているんだ?
「それがどうして『傀儡の魔女』と連む事になるんだ?」
「姉さんは人使いが荒いとか不満タラタラだったっす。 だからタダ飯喰らいになる方法は逆ギレだって教えたっす」
「お前が原因かぁぁぁ~っ!」
何だよコイツ、ニートになる菌でも保有しているのか?
「まぁ良い、仕事だ。 2人ともこっちに来い」
「「働きたくないでござる」」
「死にさらせぇぇぇ~っ!」
何だか毒に毒が合わさって毒気が増している様な気がする。
うん、世の中には出会ってはいけない存在ってのがあるんだな。
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カクヨム版(先行)
魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~
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