第17話 幼女復讐~えっ? 容赦しませんけど?~
カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。
「ファイアぁ!」
白い点がレーザーの様にヒドラに襲い掛かる。
指で摘んで、毟り取るかの様に飛び散る肉片。 苦痛と憎悪を撒き散らす咆哮。
先端の空気をプラズマ化した徹甲弾が作り出す光景、それが戦いの合図となった。
最初の傷が再生の兆候を見せるも、それを嘲笑うかの様に襲い掛かる弾丸。
良い傾向だ。 再生能力よりも破戒能力の方が上回っている。
サーモリック術式を使わないのは、単純に射程と速度の問題だ。
苦し紛れに吐き出すブレスも、射程が足らずに途中で霧散する。 完全なアウトレンジ攻撃だ。
一方的に甚振る感覚に、少しずつ恐怖が薄れていく。
これならPTSDだかトラウマだかは克服できるかも知れない。
だが油断は禁物だ。 無限に再生するとは思えないが、限界はまだ見えないのだ。
再生能力は『特殊回復技能』の『超回復』だと思われるがノーコストだとは思えない。
使っているのが生命力か魔力かは知らないが、肉を引き千切る様な攻撃には意味があるハズなんだ。
生命力が細胞の数に依存するならばそれで良し。 魔力も魔力炉が存在しなかった関係上、細胞内のミトコンドリアに似た存在ではないかと疑っている。
魔女様の推察では魔力はスピリアチャルな存在に属する力だと考えていたようだが、私はミトコンドリアに似た何かが魔力を作っていると考えている。
つまりは細胞を削れば魔力の生成能力が低下するのではないかと考えたからだ。
しかも千切れた肉片から別個体として再生していない事を考えると、再生には大量の魔力が必要なのではないかと。
明確な根拠は無いが、少し自信はある。 何故なら、ヒドラの再生能力が少しずつ落ちている様に感じるからだ。
イケる! 確実に弱っているのが遠目にも確認出来る。
「くたばれーっ!!」
頭を吹き飛ばし、手足を千切り飛ばし、残りを薙ぎ払う。
生命活動を停止し、崩れ落ちる肉塊。
勝った。 勝った。 一方的に蹂躙した。
「勝ったどーっ!!」
調子に乗ったのが悪かったのだろうか? 次の瞬間には全身に悪寒を感じた。
慌てて洞穴に避難する事にする。
魔力探査に反応する上空から接近する、複数の物体。
目を向ける手間さえも惜しみ、膝を抱えるようにして空気抵抗を抑え、さらには風魔法をアフターバーナーにして洞穴に飛び込む。
痛い。 洞窟には入り込んだ後にバランスを崩し、盛大に転げ回った結果、手足などに多数の擦り傷や痣が生存の痛みを主張する。
血を拭い、軋む躰を引き起こす。 今はまだ安心する時じゃない。
這う様に入り口に近付き、周囲を見回す。
良かった。 気付かれていない様だ。
視線を動かしてあの時の存在を探す。 いた、複数のヒドラ達だ。
何をしている? なぜ集っている?
様子を詳しく観察しようとして後悔した。
喰っている。 先を争う様に、少しでも多く得られる様に喧嘩しながら。
前から疑問はあった。 ダンジョンの中の生態系がどうなっているのかと。
勿論生態系を維持出来る食料があるとは思えないのだ。 例え共食いをしていたとしても。
だがココにリポップが絡んでくるとどうだろう? それを前提とした循環があるとしたら?
傷ついたものや弱ったものが真っ先に餌になるのは想像に難くない。 しかも大半が飢えた状態でもある様だ。
私がヒドラを倒した後に別のヒドラが現れたのは、多分偶然ではない。 餌の匂いか何かに釣られてやってきたのだろう。
これを攻略? あかん、死ぬ未来しか想像がつかない。
今回助かったのは偶々《たまたま》だ。 都合良く避難先の洞窟があったに過ぎない。 都合良く中に入るまでに転ぶこと泣く済んだだけに過ぎない。
幾つかの幸運と、私が先に気付き、偶々ヒドラが私に気が付かなかったに過ぎない。
こんな事を続けていれば、必ず死に戻りを経験させられる。
うん、もう1回修行をしよう。 2度と死にたくないし。
索敵能力の向上と、移動能力の向上。 あとはヒドラに見つからないための方法の模索とか。
目指すは鷹の目と赤外線スコープ、暗視と移動目標の判別。
スラローム走行と急停車、急発進。 全体的なバランス力の強化。
あとは迷彩関連の魔術開発。 光学迷彩なんてどうかな? 確かカナダのハイパーステルス社で開発されたモノがあったハズだ。 あの程度レベルでも何とかなりそうだし。
はあ、このダンジョンって難易度高過ぎじゃね?
エクストリームモードって、きっとこう言うモノを指すと思うんだ。
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カクヨム版(先行)
魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~
https://kakuyomu.jp/works/16816927862939210704
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