第147話 灼熱の魔女編 ~えっ? 狙撃ですか?~
カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。
「ベイナ様ぁ、出てきますぅ」
「確認した」
狙撃体制に入る幼女、ハイガンベイナ6歳です。
私達はワタリガラスのハヤト視界を使い、集落から2キロ程離れた場所に転移したのだ。 勿論目的は、連中が集落から出てきた所を狙撃するためである。
本来の狙撃なら、スポットマンと呼ばれる観測員を同行させる。 これは射った弾がどの程度外れたかを指摘してもらうためだ。
また、銃身とスコープは平行ではなく、スコープをやや下向きに設置する。 これは弾道が放物線を描くためである。
通常弾道は、スコープの中心の下、上、下を通過し、交差点は約20メートルと200メートル程に存在する。
これがマテリアルライフルなどを用いた長距離狙撃になると、狙撃可能地点が2キロ程になるので交差点も大きく伸びるのだ。
また、弾道は気温や緯度、狙撃手の体格などにも影響されるため、事前に細かな調整が必要になる。
ただし今回の私に関して言えば例外だ。 そもそも使用しているのは術式レーザーボインタのみであり、望遠などの視覚拡大は魔術で行っているからだ。
それに、狙撃するのが30ミリのレールガンである事も大きなメリットだ。 本来狙撃では口径と弾速が大きいモノが有利だからだ。
例えば長距離狙撃に巨大なM2マシンガンが入っている事からも判る通り、大口径は風に流されない利点があるのだ。
しかも通常の狙撃銃の弾速が秒速600メートルから1キロであるのに対して、レールガンは秒速3.4キロである。
例えば2キロ離れた目標に対し、秒速1キロでは2秒必要なのに対してレールガンでは0.6秒未満で到達するのだから、狙いやすいとも言えるのだ。
また使用している術式レーザーボインタは遠赤外線であり可視光ではないのだが、こちらも視界を赤外線モードにしてあるので問題無い。
しかも今回は光学迷彩まで使用しているのだから完璧だ。 要するに準備万端って事だな。
それに狙撃される側が狙撃手を見つけられる事は稀である。 想像してもらえば分かるかと思うのだが、高層ビルの屋上から地上を歩く人間がマトモに認識出来るかって話である。
しかも相手は迷彩服まで着用しているのであるから、視認は殆ど不可能である。
さて、御託はこれ位にして早速狙撃するとしよう。 目標は女とミイラ男だ。
狙うのは当然、戦力として未知数であるミイラ男から。 アンデッドの可能性もあるので、ヘッドショットを決めたいと思う。
僅かに呼吸を止めて、照準を安定させる。 ファイヤ!
キッチリ0.6秒後に、ミイラ男の頭が吹き飛んだ。 いいぞ、次だ次。 女が呆けている今がチャンスだ。
再び呼吸を止めて照準を安定、今度狙うのは体の中心、つまりバイタルラインだ。 ファイヤ!
あっ、外れた。 女は狙われている事を自覚してしまったのか、慌てて集落の中へと引き篭もった。 しかもジグザグで移動するとか賢しい真似までしやがって! 狙えないじゃないか!
ここからは我慢比べた。 いつまでも付き合ってやるぜ!
「本当にぃ、光学迷彩って凄いですぅ つんつん」
「おい」
「何ですかぁ? つんつん」
「棒で私の尻を突くのは止めろ! てかどうして的確に位置を把握しているんだ?」
「そんなのぉ、愛の力に決まっているじゃないですかぁ。 私ならどんな暗闇でもベイナ様のお尻をぉ、突ける自信がありますよぉ。 つんつん」
「やっ、止めろっ! その角度は穴にプスッといってしまいそうなんだ!」
「それもそうですねぇ。 やっぱり穴を攻めるのは指でないと面白くないですしぃ」
「そう言う問題じゃねぇよっ!」
そりゃ私は寝転がっているし、ついでにヘルも添い寝しているから敵に見つかるとも思えないケド、だからと言って時と場所を弁えて欲しいんだ。
「つまりぃ、時と場所さえ弁えればぁ、何時でも攻めて良いって事ですかぁ?」
「違ぇよっ! てか今は止めてくれっ! 本当に気が散ると逃してしまいそうなんだっ!」
「分かりましたぁ。 『今は』止めておきますぅ」
「何だか不安になるイントネーションだったんだが?」
「気のせいですぅ」
本当に止めてくれるんだよな? 信頼してるぞ!
「じゃぁ自重してぇ、匂いだけでがまんしますぅ」
「お、おぅ。 程々にな」
まあ弄くり回されるよりはマシか。
「くんかくんか、はしはし。 あぁ、芳しい幼女の匂いですぅ」
「気が散るんだが?」
「あっ、ベイナ様大変ですぅ」
「ん? 何か問題でも?」
「ムラムラしてきましたぁ」
「盛ってんじゃねぇ! げしげし」
本当にコイツは何しにココに来ているんだ? ちゃぶ台があるならひっくり返したい気分だ。
何とかヘルを蹴飛ばして引き剥がし、再び狙撃体制に入る。 ってあれれ? ミイラ男の死体が無くなっているぞ。
「畜生、目を離している隙に死体まで回収されてしまったか。 折角の狙撃チャンスだったのに」
「それならぁ、ミイラ男は自力で立ち上がって逃げていきましたよぉ」
「見ていたんなら教えてくれよっ!」
「無理な事を言わないで下さいぃ。 だってぇ、目の前に無防備な幼女が転がっていたんですよぉ。 ぷんすか」
「『ぷんすか』じゃねぇよっ! それ以前に私はお前の貢ぎ物じゃねぇ!」
コイツの前で無抵抗で寝転がっていたらOKのサインになるのか? うかうか横になる事すら出来ないじゃん。
いや、今問題なのはそこじゃねぇ。 アンデッドのミイラ男には再生能力がある事だ。
こりゃ焼却処分でもしない限りは倒しきれないって事じゃないか。 焼夷弾なんて手持ちに無いぞ。
「狙撃作戦は失敗した事ですしぃ、お家に帰っていちゃラブしましょうしょぉ。 でないと行き場が無いムラムラが爆発しそうですぅ」
「1人で勝手に何とかしろっ!」
「いけずですぅ。 襲いますよぉ?」
今回は倒しきれなかったとは言え、相手の能力が判明しただけでも良しとしよう。 だからヘル、一々絡み付いてくるんじゃねぇよっ!
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カクヨム版(先行)
魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~
https://kakuyomu.jp/works/16816927862939210704
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