第145話 閑話 ~灼熱の魔女~
カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。
「邪神が随分な格好じゃないか」
「けっ、ほっとけ」
ある森の屋敷で、邪神と『灼熱の魔女』が会談していた。
魔女の恰好はシミターが似合いそうなクレオパラの様なモノだが、一方の邪神はミイラの様に包帯でぐるぐる巻にされている。 生きているのが不思議なくらいだ。
「どうした、火炙りでもされてか?」
「魔王にやられたのだ。 そのニアニアした顔を止めろ。 傷に響く」
「邪神が火刑など魔女のお株を奪う行為だぞ。 そのまま灰にでもなれば良かったのにな」
「これは火刑ではない。 呪いを掛けられたのだ。 ケホケホ」
そう言って咳き込む邪神の手には、吐血によって血塗られている。 これはベイナによって放射線で焼かれた症状で、放射線障害である。
余命すら削られる危険な状態であった。
「で、どうしたのだ? 引退でも決意したか? 復活して早々に隠居とはジジイにはよい薬だな」
「あの死神ヘルまで現れたのだ。 魔王と死神が組んだのだぞ。 お前は死神と因縁があるのだろう? 悠長にしている場合ではないと思うが?」
「あのブサイクが私の美しさに嫉妬した結果だ。 やってくるなら返り討ちにするまでの事さ」
魔女は自分の美しさに自惚れており、これまで美しさが有名になった存在を殺してきた過去がある。
尤も、ヘルとの確執は相手にされないどころか記憶にすら残っていないのだから、認識には大きな隔たりがあるのだ。
「なぁ、我と魔王を討ちに行かぬか?」
「へっ、勝手に1人で死んできな。 私には関係ない事だしね」
何とか灼熱の魔女を仲間に引き込みたい邪神ではあるが、にべも無い。
「因みに魔王は莫大な金銀財宝を有していると聞く」
「ほう、私を飾る宝石には興味があるねぇ」
「なんでも莫大な財で国まで興したらしいぞ」
「そりゃぁ魅力的だねぇ。 国落としには興味は無いが、独り占めさせてくれるんなら考えても良いよ」
「ああ、勿論だ。 我は呪いが解ければ文句は無い」
「それじゃぁついでに、生意気な死神もグチャグチャにしてやろうかねぇ」
そして2人はベイナ達がいるイーストウッド領に襲撃計画について話始めた。
「魔王にはお主も気を付けるのだぞ。 見た目は幼児だが、我が見た事もない魔術や呪いを使ってくるのだ」
「へへへっ、ガキにやられたのかい? 焼きが回ったんじゃないの?」
「見た目は女児だが、中身はそのままではあるまい。 どこかの魔女の生まれ変わりの可能性もあるだろう」
「へぇ、魔女の生まれ変わりねぇ。 何処の魔女だい?」
「そうだな。 かなり年を取った魔女となると『青海』か『記録』あたりか?」
「おいおい、冗談じゃないよ。 『青海』はともかく『記録』は不味いだろう。 確かにあの魔女なら莫大な財産を持っていても不思議じゃないが、私は下ろさせてもらうよ。 命が幾つあっても足りやしないからね」
ここ千年ばかりは大人しくなっていた『記録の魔女』となると話が違ってくる。
チンケな魔王どころの話ではなく、収集癖のある『記録の魔女』の捕まると、下手すら解剖されて研究材料にでもされかれないからだ。
「まっ、待て! 『記録』は我の思い違いだ。 奴は呪いも使ってくるが、そう言えばガキの方は呪文さえ唱えていなかった。 となると『暗闇』やも知れん。 奴なら特殊な呪いだって知っているハズだからな」
「ふん、どうだか」
焦った邪神は何とか『灼熱の魔女』を仲間に引き込もうと画策した。
「ほっ、ほら。 『記録』なら国を創るなんて事をするハズがないじゃないかっ!」
「それは…そうだねぇ。 あの『記録』が今更国や人に興味を持つなんて変だからねぇ」
「それに魔王は死神に懐いている様にも見えたぞ」
「死神に懐く魔女か…。 ちょっと思い付かないねぇ」
ここをチャンスと見るや一気に畳み掛ける。
「そもそも魔女の生まれ変わりなんてのが我の思い違いだったのだ」
「まあそうだろうねぇ。 いいよ。 一緒に襲撃してやるよ」
尤も、死神が建国に協力している事すら意外な事なのだが2人は気が付かない。
「お主は奴等の国を焼き尽くせばそれで良い。 後は我がやろう」
「久しぶりだねぇ。 大量の人間を焼くのはゾクゾクするよ。」
「であろう。 しかも儲けが約束されているのだ」
「分かったよ。 それで連中は何処に居を構えているんだい?」
「帝国の西の外れだ。 規模はそれ程大きくはないらしい」
何とか『灼熱の魔女』の同意を得られた事に邪神は安堵した。
だが魔女は、場所が魔の森に近い事に、再び疑念を抱く。
「おいおい。 帝国の西の外れって言えば『魔の森』の近くじゃないのかい?」
「『魔の森』? それがどうかしたのか?」
「ああ。 あそこには『記録』の住処があったハズだろう?」
「偶然であろうよ」
「本当に、生まれ変わりの可能性は無いんだよねぇ」
「ああ、あの人を研究材料の様に見る目もしていなかったからな」
「なら良いんだけどねぇ…」
話がもう一度おかしな方向に進まない様に邪神は話を補足する。
「魔王は特殊な遠距離攻撃をしてくる奴だ」
「特殊な遠距離攻撃?」
「ああ、矢鱈と貫通能力の高い攻撃であったな」
「へぇ、ライトニングの改良版か何かかい?」
「いや。 ストーンバレットの親戚の様な印象であったな」
「へぇ、ストーンバレットねぇ」
魔女はストーンバレットを使った貫通攻撃が思い付かずに興味を示す。
「もう少しどんな感じの魔術だったか説明出来ないのかい?」
「筒を使って発射してくる感じであったな」
「アロー系ではなくて、筒を使った魔術だって? 全く想像が着かないねぇ」
こうして魔術談義を暫く行って話を有耶無耶にして、進攻が決定された。
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カクヨム版(先行)
魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~
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