第138話 聖王国編 ~えっ? 地下探索ですか?~
カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。
「こっちで良いのか?」
「そうですよぉ。 鼠さん達が先行してますぅ」
地下を探索している幼女、ハイガンベイナ6歳です。
ヘルの眷属の鼠ってのが優秀で、地下を迷わずサクサク進める。
と言うのも地下道は一本道かと思っていたんだけど実際は迷路。 うん、普通に迷いそうだった。
ところが鼠が先導する事で、私達は聖城までの道を既に把握しているのだ。
ただし罠の解除はしてくれないワケで…。
「うぎゃぁぁぁ~っ! 今度はトラバサミだぁぁぁ~っ!」
「あのぉ、ベイナ様は罠があるとぉ、自分で試したくなるんですかぁ?」
ちゃうねん。 そりゃぁ歩く度にピンポイントで罠を踏み抜く私もどうかと思うけど、歩幅が小さいねん。
しかも先頭を歩いているから、確実に引き当ているだけやねん。
「先頭を歩かない方がぁ、良いんじゃないですかぁ?」
「いや、だって魔力鎧が使えるのは私だけだから、安全のためにも仕方が無いんや」
「ううっ、身をもって罠を解除しているベイナ様を尊敬しますぅ」
「ハトリはワザとかと思っていたのー」
「ワザとやないんやけどね」
「あっ、見るからに怪しい箱ですぅ。 さっ、ベイナ様の出番ですよぉ。 それ、シュートぉ!」
「うぎゃぁぁぁ~っ! 投げるなんてあんまりだぁぁぁ~っ!」
何故かヘルは、私の事を罠の解除装置か何かと認識したらしい。 でも投げるのは酷くないか?
箱の正体はネバネバしたトリモチっぽい何かを撒き散らす装置で、私はスライムに蹂躙された幼女みたいな外見になった。 うへぇ、気持ち悪い。
「ヘルぅ、助けてくれ。 何だか微妙に臭かったりするんだ」
「ベイナ様はぁ、水魔術と火炎魔術はぁ、どちらがお好みですかぁ?」
「いや、普通の生活魔術で頼みたいんだが?」
「そんな都合の良い魔術は存在しませんよぉ。 大量の水で押し流すかぁ、焼くしかないと思いますぅ」
「どっちにしても攻撃魔術だよね、ソレ。 私としては優しくして欲しいんだが?」
「流石に臭い幼女は守備範囲外ですぅ」
「酷い!」
結局ヘルの魔術は諦めて、自前の水魔術で何とかした。 くんくん、臭くないよね?
うん、魔力鎧は攻撃性の罠だったら完璧だと思ったんだよ。 てかどうしてこんな嫌がらせの罠があったりするの?
「地下道内での炎は酸欠の危険がありますしぃ、水は衛生的にマズいですぅ。 しかも爆発系は崩落の危険があるのでぇ、物理トラップに限られるんですぅ」
そりゃそっか。 地下道の罠って追手か侵入者に対してだろうから、通行禁止になる系統は使えないのか。 どちらかと言えば足止めか撤退させるための罠なんだな。
「ほらベイナ様ぁ、さっさと行きますよぉ」
「扱いが雑過ぎやしませんか?」
「そんな事はぁ、ありませんよぉ」
「ホントに?」
「ええ、折角のベイナ様のぉ、見せ場なのですよぉ」
「そうかな? 私、輝いているの?」
「ぴっかぴかですぅ。 何なら電飾魔術で装飾したいくらいですぅ」
「どうして生活魔術が無いのに電飾魔術があるんだよっ!」
「そんなの開発したからにぃ、決まっているじゃないですかぁ」
理不尽だ。 てか電飾魔術って何に使うの?
「ベイナ様のぉ、クリスマスとかいう性なる夜を参考にしましたぁ」
「聖なる夜な」
「ええっ? でもその日は美味しいものを食べた後に電飾で飾られた木を見ながらぁ、エロい事をするんですよねぇ」
「くっ、微妙に間違っていないのが指摘しづらい」
「エロのためには努力を惜しまないのですぅ」
日本風のバレンタインとかクリスマスとかを見たクリスチャンはどう思うのだろう。
少なくともラブホが満室になる様な国じゃぁ、キリスト教は普及しないと思う。
「ほらぁ、そこにはベイナ様専用の落とし穴がありますよぉ」
「専用って何だよっ! おぃ、押すなよ! フリじゃないからなっ!」
「勿論、心得ていますよぉ。 どーん」
「ぎゃぁぁぁ~っ! 槍襖の中に先客がぁぁぁ~っ!」
くっ、物言わぬ先客に、哀れみの目を向けられてしまったぜ。
てかどうして私はこんな扱いを受けているんだ?
「だってぇ、ハトリちゃんは聖騎士を殲滅しましたしぃ、私は鼠でマッピングを行っていますぅ」
「うん、その事には感謝している」
「でもベイナ様には活躍の場面が無かったのですぅ」
「いや、私は突入してからが本番で…」
「だから私は思ったのですぅ。 残念なベイナ様にも活躍の場を用意すべきだとぉ!」
「おっ、おう」
「さらにはぁ、戦闘面では見せ場が少ないベイナ様にも活躍が必要だとの電波を受信しましてぇ」
「迷惑な電波だなっ!」
「ならば罠と格闘するのが良いのではないかと思いぃ、お手伝いしましたぁ」
いや、確かにアクション映画なら巨大な玉に追いかけられたり致死性の罠と格闘するのは見せ場なんだろうけど、実際は大玉転がしの罠なんて存在しないからね。
本来の罠の解除なんて地味以外の何者でもないのだから。
「さぁ、あれが最後の罠ですよぉ!」
「ちょっ、最後ってもしかして罠の位置とか把握していたの?」
「何を言っているんですかぁ、ベイナ様ぁ。 鼠で罠は作動しませんがぁ、発見くらいならできますよぉ」
「そっ、それなら罠にハマっていた私の立場は?」
「勿論、見せ場ですぅ」
「うぎゃぁぁぁ~っ!」
こうして私は、最後の罠まで体験する事になった。
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カクヨム版(先行)
魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~
https://kakuyomu.jp/works/16816927862939210704
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