第116話 独立・建国編 ~えっ? 剣戟ですか?~
カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。
「ハトリっ、代われっ!」
「ダメっ、ハトリが殺るのっ!」
童女に怒鳴られる幼女、ハイガンベイナ4歳です。
クソっ! クソ、クソ、クソ、クソっ! 何もそんなにムキになる事も無いじゃないかっ!
大体相手は近接戦闘型なんだから、アウトレンジから一方的にボコるのが正解だろ? どうして剣戟に拘るんだよ。
ハトリだって魔術は使えるのだから、剣術に固執する必要なんて無いじゃん。
そりゃぁ確かに魔術の腕は、私やヘルには劣るかも知れない。 でもその分、私たちは遠距離特化なんだよ。
ハトリは違うだろ? 確かに近接戦闘を得意にしているのは知ってるよ。 でも遠距離を苦手にしているワケじゃないだろ?
普通に遠距離魔術だって使えるじゃん。 どうしてやらないのかな?
攻撃を繰り返す度に反撃をく喰らい、傷が多くなっていくハトリ。
不味いな、このままでは負けてしまうぞ。 ハトリには嫌われてしまうかも知れないけど、イザと言うときには介入した方が良いかもしれないな。
「ブーストなのー」
おっ、そんな異能も取得していたんだ。
強化された威力とスピードによって剣聖は受け流す事が出来ず、何とか耐えている状況になった。 よし、いったれ!
一撃一撃が重くなったのか、何とか攻撃に対して剣を滑り込ませている状況だが、姿勢を崩す事が多くなった剣聖。 よし、優勢になった。
今度は捌き切れずに傷が増えていく剣聖。 ざまぁみろ! そのまま死んでしまえ!
そしてその時は唐突に訪れた。
僅かな金属音の後に、弾き飛ばされる剣聖の武器。 握力が限界に達していたのだろう。 もうアイツに出来る事は何も無い。
「パワースラッシュなのー」
「ぐはっ!」
繰り出される胴斬と、上下に分かれる剣聖の体。 勝ったな。
「ハトリ…」
「流石に疲れたのー」
「でも良くやったよ。 ヒール」
ハトリの傷を癒し、周囲を確認する。 うん、酷い状況だ。 激闘だったもんな。
「折角なのでもらっておくか」
剣聖の片刃の刃をアイテムボックスに収納する。 ハンティングトロフィーの意味もあるのだが、あれだけ打ち合っていながら刃毀れ一つも無い状態だったのだ。
「死体も回収しておいて欲しいのー。 後で食べるのー」
「ん? ああ。 そうだな、そうしよう」
ハトリは強くなる事に貪欲なんだな。
「ママ、ハトリは役に立ったのー?」
「何だ、そんな事を気にしていたのか?」
「役に立ったのー?」
「ああ、役に立ったぞ。 十分だ」
「へへへーっ、嬉しいのー」
ハトリをシッカリと撫でて、死体を回収する。 そうか、役に立てるかどうかを心配していたのか。 そんな事、気にしなくても良いのに。
少し危なっかしい部分はあったが、ハトリは私の役に立ってくれている。
今回もそうだ。 確かに私がやった方が早かったかも知れないが、ハトリはやり遂げてくれたのだ。
それにハトリにしか出来ない事もきっとある。 これからも十分に頼っていくさ。
「それじゃぁ、先に帰っていてくれないか? 私にはやる事があるんだ」
「少し休んだら、ハトリも手伝うのー」
「いや、もう十分だよ。 それにハトリはヘトヘトじゃないか」
「…、判ったのー。 ハトリはワガママは言わないのー」
「うん、良い子だ。 それじゃぁ送るね。 転移」
「ハトリは次も役に立つのー」
転移先は勿論私たちの館だ。 今回は転移先が既知の場所だからね。 態々《わざわざ》移動する必要すらないのだ。
「さて、ハトリが頑張ってくれたんだ。 次は私の番だな」
これから私がするのは、帝国を戦争へと向かわせる事だ。
例えば帝都を反物質で吹き飛ばしてしまえば帝国は分裂し、群雄割拠の時代に突入するだろう。
そうなれば私たちの領へも攻め入る者がどれだけ出てくるのか判らないから面倒臭い。
だから与えるのは危機感であって、破滅であってはならないのだ。
出来るだけ多くの軍勢が一度に攻め入って来るのが望ましい。
そしてそれを粉砕し、二度と攻め入る気にさせないのがポイントだ。 要するにアンタッチャブルになれば良い。 演出が大切だな。
部屋に戻り、辺りを見回す。 うん、動いていないな。
「けっ、剣聖はどうなった?」
「死んだぞ。 当然ハトリは無傷だ」
まぁヒールで癒したのは黙っておこう。
「さぁ、蹂躙の始まりだ」
連中の恐怖に引き攣った顔が、今は心地よかった。
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カクヨム版(先行)
魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~
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