第102話 独立・建国編 ~えっ? 情報収集ですか?~
カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。
「いっくのー」
「うをぉっ!」
ハトリの手からワサワサ出る子蜘蛛を眺める幼女、ハイガンベイナ4歳です。
手から零れるように出てくる蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛。
1センチ程度の小さなものもあれば、5センチや10センチ程の大きさの蜘蛛がボトボトと床に落ち、四方八方へと広がっていく。
うん、キモいわ。 ヘルは数歩下がって見つめているし、ウォルターに至っては白目を剥いて立ったままで気絶しているからね。
まあ気持ちは理解出来なくもない。 自分でお願いしたのでなければ、私だって後ずさっていた事だろう。
足の甲に何匹が登ってくる度に、飛び跳ねそうになっている状態だし。
いや、こう言ったら申し訳ないんだけど、非常にシュールな絵図らなんだよ。
ニコニコと笑いながら、蜘蛛が溢れ出す両手を見せてくる童女。
静まり返った部屋で、カサカサと全方向から聞こえてくるサラウンド。
視線の中で、上下左右で蠢く蜘蛛たち。
全身の肌が、イボイボの鳥肌になっていく感覚。
悲鳴を上げて逃げ出さなかった私を、誰かに褒めて貰いたい気分なんだ。
私はどちらかと言えば、蜘蛛は苦手ではないし、ハエトリ蜘蛛は可愛いとさえ思っていたからね。 そりゃぁ苦手な人間からしたら、気絶モノなんだろうよ。
そんな私が逃げ出したくなる状況なのだから、蜘蛛に囲まれる状態ってつくづく異常なんだろうなぁなんて思ったりしているんだ。
てか多いな。 何千匹、いや何万匹いるんだ? もっとかな?
その一部が窓へと向かうと、自力で抉じ開け、零れるように外へ。 うをっ、賢いな。
そしてアレだけいた子蜘蛛たちがいなくなると、ハトリは糸の束を差し出した。
「はい、魔力を流すのー」
「思っていたよりも、少ないんだな」
「糸が細いのー」
渡された糸束を握り締め、意識を集中しながら魔力を流す。 イメージは魔力が糸を伝って、各蜘蛛に意識を繋げる感覚だろうか。
『『『『『『『『何か用なのー?』』』』』』』』
「ふぎゃらぽぺぱらべふぉっ!」
意志を繋いだ瞬間に、脳内に響き渡る数万にも及ぶ、小ハトリの声、声、声。
声が響いただけなのに、視界がチカチカ、頭はグワングワン、鼻水つるつる。 思わず意識が飛び掛けたよ!
こんなの聖徳太子でも裸足で逃げ出すレベルだろ。 幼女神になっていなければ、頭がパーンってなっていた自信があるぞ。
処理能力がどうとかって次元じゃないね。 例えるなら、田んぼのあぜ道で、トラック野郎共がスピード競走を行っている様な状態だ。
そしてHPがゼロになっても、棒で突かれている感覚がある。
うん、普通に死ねるわっ!
いかんな、これじゃあ監視任務になんて使えないぞ。
いや、考え方を変えよう。
例えば警戒監視が得意な兵器といえばイージス艦があるが、あれは厳密に言えばリアルタイム監視ではない。
そもそも走査レーダーは回転式だし、警戒監視レーダーはスキャン波をフェーズドアレイレーダーから発信するものであって、電子的に方向などを細かく変更している。
要はCPUのタイムシェアリングに近い概念であり、複数のビーム走査があるとは言え、マルチCPUの様なモノと考えれば、以前と同じ方法が使えるハズだ。
それに視界共有であるにせよFPSゲームではないので、5FPSもあれば十分なのではあるまいか。
そもそも負荷が多いのはリアルタイムな情報共有を行っているからであり、ミサイルのような高速飛翔体がない状況では、かなり緩い監視でも問題ないと思われる。
まあ感知さえしてしまえば、此方には転移すらあるのだから、即応性には問題ないだろうからね。
寧ろ問題になるとすれば24時間監視の方であり、そっちは定期連絡などで対応するとしよう。
てな事で、実験開始。
先ずは脳の負荷を抑える方法からだな。
取り敢えずは10FPSから挑戦だ。
「視界共有、10FPS。 うをぉぉぉぉ~っ! 見える、見えるぞぉ!」
何と言えば良いのだろう。 分割された監視カメラの映像と言えば良いのだろうか?
少しコマ落ちしている感じではあるのだが、複数の場所が、同時に見られる。
かと言って解像度に問題があるワケではないので、意識を向ければ、個別では詳細に観察する事が出来るのだ。 すげぇ、顔まで判別できる。
次は音声認識だな。
今度は一度に繋ぐなんてヘマな事はせず、個別に行ってみよう。
『あー、あー、子ハトリちゃん、そこの男の正面にまわってくれるかな?』
『了解なのー』
おおぅ、見た目は監視カメラなのに、ダイナミックに視界が動きやがる。
でぇ、後ろ姿はイケメンっぽいんだけど、果たしてその正面は?
うん、何だか見て損した気分だよ。
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カクヨム版(先行)
魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~
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