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これ、ホントに呪いの指輪なの?  作者: 彩田(さいた)
三章 カタアギロ横災編
96/119

3-16 突入1




 衛兵の列とカトラ達が乗った馬車を見送ったカリフは未だ到着していない衛兵が来るのを待った。カリフは遅れて到着した衛兵達に指示を出しては送り出し、八人程送り出した所で一台の馬車がカリフの元に到着した。カリフの前で止まった馬車の荷台の上から警護部副部長ロクリフは現状をカリフに尋ね、カリフは地図をロクリフに見せて現状報告と追加人員の配置予定を告げた。ロクリフはカリフの報告を聞きながら地図を見て、カトラが書き示した目的地の印に目を止めると驚きの余り声を漏らす。


「なっ!マイラス部長の屋敷だと!」


 馬車の上の空気が瞬時に張り詰めた。




 先に出発した衛兵の列は二手に分かれ、人の背丈の倍程ある石壁に囲まれた屋敷を囲み始めた。片方の列は屋敷の壁に沿って走り、等間隔で止まって包囲し始めた。もう片方の列は正面の門の前を走り抜け、角を曲がった先から包囲を始めた。

 屋敷の正門を警備していた門番達は何やら騒々しい事に気付いて鉄柵の門から外を覗き込んだ。門の前を走り抜ける衛兵達を目にした門番の一人は報告の為に本館へと走った。門番達は警戒を強め、そこにラトサリー達が乗った馬車が門の前で止まった。御者のオグマは馬車の上から門番達に呼びかける。


「おいっ!殺人の容疑者がこの屋敷に逃げ込んだ!入らせてもらうぞ!」


 門衛の一人は慌てながら口を開く。


「えっ!いやっ!ちょ、ちょっと待て!家主に話しを通すから、そこで待ってろ!」


 門番はそう言うと大きな建物の方へ走り出した。その門番が広い庭の中程まで進んだ頃合いでカトラは荷台の上で二・三歩助走をつけて荷台後方の箱の上に飛び、勢いそのまま箱を思いっ切り踏み込んで石壁へと飛び上がる。石壁の上にフワリと降り立ったカトラに門衛は驚愕の眼差しを向けて叫ぶ。


「おっ!お前!何やってんだ!!」


 慌てる門番にカトラは目を向ける事無く敷地内に降り立ち、一気に駆け出す。


「ちょっ!待て!オイっ!」


 門番はカトラを呼び止めるが、走り出したカトラの背中は瞬く間に門番から離れていった。カトラは広い庭の奥に鎮座する本館の左側に向かって突き進む。慌てた門番はもう一人いる門番に向かって叫ぶ。


「おい!鐘を鳴らせ!俺はあいつを追いかける!」


「あっ!あぁ!」


 返事を受けた門番はカトラを追って走り出し、もう一人の門番は門の脇にある詰所に駆け寄って鐘を鳴らす。


《 カンカンカンカン…… 》


 ラトサリーは鐘の音に不安を覚えながらオグマに声をかける。


「オグマさんっ、カトラを一人で行かせて大丈夫なんですか?」


 警備の目がカトラに集中した事を確認したオグマは御者席から荷台に移りながら答える。


「大丈夫じゃない。早く合流しないと死人が出る」


「ですよね……」


 苦笑いするラトサリーに苦笑いを返したオグマは荷台後方の箱に乗り、石壁に向かって飛び上がる。石壁の上場に手をかけたオグマはどうにかよじ登って敷地内に飛び降り、鐘を鳴らしている門番に突撃する。鐘を鳴らしている門番はオグマの接近に気付くのが遅れ、槌を放して剣に手をかけた所でオグマの右拳が門番の顔にめり込んだ。


「ガハっ」


 変な声を上げた門番の股を蹴り上げるオグマ。


「ギャっっっ!……」


 門番は白目をむいて崩れ落ちる。オグマは詰所と周囲に誰もいない事を確認し、倒れた門番の腰周りを探って鍵の束を取ると門に駆け寄り、鍵を一本ずつ試しながらラトサリーを呼ぶ。


「ラトサリー、準備は良いか?」


 馬車から降りて門の前で待っていたラトサリーは手に持った大剣と袋を強く握って返事をする。


「はっ、はい、大丈夫です」


「それじゃぁ、カリフが増援を連れて来るまで頼んっ、開いたな♪それじゃ、頼んだぞ」


 そう言いながら鍵を開けたオグマは門の鍵を束から外し始め、ラトサリーは門を少し開けてオグマに袋を差し出す。袋を受け取ったオグマは外した鍵をラトサリーに渡し、カトラが向かった方向に走り出した。オグマを見送ったラトサリーは門を閉め、敷地の奥から聞こえる喧騒に不安げな目を向けた。




 鐘の音に呼応するように大きな建物の窓から明かりが漏れ始め、正面玄関の脇の扉から外に出て来た男達は庭を見回した。


「あっちだ!あっちの離れに向かってるぞ!」


 門からカトラを追って来た門番は声を張った。足の速さに自信があった男だっかが、カトラに追いつく所か引き離されてしまった事に焦りを覚えてあらん限りの声で呼ばわった。建物から出てきた男達はそんな門番の声を辛うじて聞き取ると剣を抜いて小屋に向かって走り出した。

 小屋に向かって走るカトラの目は小屋の入り口の前に留まる二人の男を捉えた。鐘の音を聞いて警戒していた男二人は迫り来るカトラの姿を捉えて剣を抜いた。カトラは向かって来る男二人へと突き進み、間合いに入る寸前で地面を強く蹴り込んで鉄の棒を構える。


《 ゴゴッッ!! 》


 加速したカトラの鉄の棒の連撃が二人の男の鼻頭をそれぞれ捉え、男達は顔を押さえて倒れ込んだ。踵を返したカトラは革の鎧を纏った男達の肩口を踏み抜く。


《 ゴギッ! ゴギッ! 》


 鎧ごと鎖骨を破壊された男達が悲鳴を上げたと同時に鐘の音が止み、男達の痛ましい声が周囲に響き渡った。カトラは男達の手から離れた剣を遠くへ蹴り飛ばし、蹴り飛ばした剣の反対方向に男達を蹴り飛ばす。転がって悶絶する男達にカトラは憐みの目を向ける事無く、向かって来る新手の男達を面倒臭そうに睨む。肌をひりつかせる程の殺気に男達が怯んだ隙をついてカトラは男達との距離を一気に詰め、男達を次々と沈めていく。後から建物から出て来た男の一人は月明かりに照らされた侵入者を見ると慌てて叫ぶ。


「離れろっ!!宮総研の室長だぞっ!っ!囲め!!」


 その声に呼応して男達が足を止めた僅かな時間にもカトラは地面を蹴って鉄の棒を振るった。囲もうとする男達の労力を嘲笑うかのようにカトラは一人、また一人と沈めていき、カトラは倒れて苦悶する男達に囲まれた。

 指示を出した男は顔を青くして大きな建物に駆け戻って扉を閉め、鍵をかけながら廊下の奥に向かって叫ぶ。


「弓矢だ!二階から弓で狙え!!」


 声を張った男は鍵をかけた扉から離れながら鍵を腰の袋に入れ、廊下の奥に向かうが、


《 スンスンスンスンスンスンッ 》


 空を切る様な異音に嫌な予感を感じた男が足を止めて振り返ると、扉が幾つかの塊に分かれてバラバラっと崩れ落ちた。男は恐怖で顔を歪めながら廊下の奥へと駆け出す。カトラはパラマカッディを鞘に収めて建物の中に踏み込もうとするが、


「カトラッ!ちょっと待て!!!」


 追いついたオグマの呼びかけにカトラは足を止めて振り返る。オグマはカトラの背後に転がる男達に同情の目を向けながらカトラに駆け寄り、苦々しくカトラを睨む。


「お前なぁ……いつになったら加減ってモノを覚えてくれるんだ!」


「えっ?加減してるじゃない。ほら、誰も死んでないでしょ」


 転がり苦悶する男達をカトラは指差しながら困り顔で異議を唱える。同じくオグマも男達を指差しながら声を荒げる。


「重傷じゃないか!!回復させるコッチの身にもなってくれ!!」


「でっ、でも、ちゃんと手加減したもん。ガンドが少し動きを止める程度の力に抑えたもん……」


 オグマは顔を歪めて一瞬固まり、左手で頭を押さえて溜め息をつく。


「お前なぁ……アイツは耐久力だけだったら俺以上だぞ!何やってんだ、全く……」


 不貞腐れたカトラに向かって苦言を呈したオグマは釈然としない面持ちで言葉を続ける。


「それで?例の四人はどこだ?」


「……あそこの小屋よ」


 ムスッとした顔で小屋を指差すカトラ。オグマは手に持った袋をカトラに差し出す。


「それじゃぁ、確保は任せたぞ。俺は増援を抑える」


「えー!ヤダ面倒臭い!私がコッチやる!」


 オグマの目の鋭さが増す。


「お前は向こうだ!これ以上重傷者を増産されたら堪ったもんじゃないからな!」


「だからだいじょう……」


「お・ま・え・は・む・こ・う・だ!!!」


 人を殺しかねない形相でカトラの主張を遮るオグマ。カトラは口を尖らせてオグマを睨みつける。二人が睨み合いを続けていると、廊下の奥から聞こえる物音が大きくなり始めた。オグマは差し出している袋をカトラの胸元に突き付ける。


「ほらっ!早くしろ!!」


「…………わかったわよ」


 カトラは不満気に呟くと袋をバっと雑に取り、小屋に向かって歩き始める。ノソノソ歩くカトラの姿を目にしたオグマのこめかみに青筋が浮かぶ。


「っ!駆け足!!!」


 オグマの怒号にカトラは肩をビクッと震わせると振り返ってオグマを睨み、小屋に向かって駆け出した。




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