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これ、ホントに呪いの指輪なの?  作者: 彩田(さいた)
三章 カタアギロ横災編
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3-9 誘い




 総務の事務室を後にしたサーブは笑みを抑える事が出来ないでいた。サーブとすれ違う人達は何やら浮かれているサーブに怪訝な目を向けた。そんな中、


「サーブ部長!」


 廊下の先にいる男の呼び掛けにサーブは笑顔で応える。


「あぁ、トルビヤさん」


 サーブは軽い足取りでトルビヤの元へと向かい、にこやかに手を振る。


「お疲れ様です。トルビヤさん、今日はお休みではなかったですか?」


「えぇ、そうなんですけど、部長にちょっと用がありましてね」


「え?用って、何ですか?」


 トルビヤは少し照れ笑いしながら口を開く。


「実は、これから集まって飲む事になったんですけど、部長の歓迎会やってないって話になりましてね。それで急で何なんですが、これからどうですか?」


「えっ、これからですか?」


 サーブは目を丸くさせてそう言うと首を傾げ、目を上に向けて口を開く。


「えーっと……戻ってから……一度帰って……それからでも良いですか?」


「えぇ、勿論♪それじゃぁ、内壁南門の外側の広場に来てもらえますか?迎えに行きますから」


「え?直接お店に行きますよ。場所を教えて下さい」


「いやぁ、それが、ちょっと分かりにくい場所にあるお店なんですよ。部長、まだ越して来てから日が浅いから辿り着けないと思うんで」


「そ、そうですか?でも、早く飲みたいんじゃないですか?待たせるのはちょっと気が引け……」


 サーブの言葉をトルビヤは笑顔で遮る。


「部長が迷子になって到着出来ない方が困りますんで♪それに、二杯位キメてから迎えに行きますから、心配無用です♪」


「そ、そうですか。それなら、そうさせてもらいます。えっと……内壁南門の外側の広場、でしたよね?」


「はい。そこに俺が行きますんで」


「分かりました、ありがとうございます。それじゃぁ、また後で」


 サーブは軽く頭を下げ、笑顔で警護部事務室へと歩き出す。トルビヤはサーブを見送ると庁舎を後にし、繁華街の食堂に入る。トルビヤが向かった奥のテーブルには男が三人座っていた。テーブルに置かれた酒にも揚げ物にも手をつけず陰気な様子の三人は近づいてくる男に鋭い目を向ける。それがトルビヤである事に気付くと三人の中の一人、通路側に座っていたサリットが緊張した面持ちで口を開く。


「トルビヤさん、上手くいきましたか?」


 トルビヤは含み笑いで応じ、サリットの向い側の奥の席に腰を掛ける。サリットの向い側に座っている大柄の男は目を泳がせながらトルビヤに小声で尋ねる。


「トルビヤさん、本当に上手くいくんですよね?」


 トルビヤの向い側に座る坊主の男は青ざめた顔をトルビヤに向ける。トルビヤは店員に何も要らない事を身振りで伝えるとテーブルに身を乗り出し、サリットと同じ年頃の若者二人の不安を払拭するかの様な笑みを浮かべる。


「計画通りに誘い出す事が出来た。今日は天候も穏やかだし、これで失敗する方が難しいだろうな」


 トルビヤの言葉に続いてサリットがニヤリと笑みを浮かべて口を開く。


「俺の弓の腕は知ってるだろ?大丈夫だって♪今回は俺の最大射程距離の半分程度だ。しっかり打ち抜いてみせるから、お前達は補助に専念してくれ」


「あ……あぁ、わかった」


 坊主の男が頷いたのを見たトルビヤは身を乗り出したまま口を開く。


「それじゃぁ、俺は広場に行くから、お前達も配置についてくれ。部長を消せば、謝礼は勿論、今まで通り露店から金を集められるようになるんだ。頼んだぞ」


 トルビヤはそう言って立ち上がると大柄の男と坊主の男の肩をポンっと叩き、サリットに目配せして店を出て行く。サリットも立ち上がって店を後にし、残された二人も神妙な面持ちで立ち上がって割り当てられた場所へと向かった。




 トルビヤと別れたサーブは警護部事務室に戻り、ロクリフに総務部での交渉が上手くいった事と飲み会に誘われた事を報告して帰路についた。サーブを見送ったロクリフは飲み会が上手くいく事を願いつつ仕事の続きに取り掛かった。

 別邸に帰ったサーブはラトサリーに交渉が上手くいった事と歓迎会をこれから開いて貰える事を話し始めた。サーブが余りにも嬉しそうに話し続けるのでラトサリーは呆れ顔に笑みを浮かべ、早く待ち合わせ場所に向かうようサーブを促した。

 嬉々として待ち合わせ場所に向かうサーブ。広場に着いたサーブは広場を見回し、トルビヤを見つけると笑みを浮かべてトルビヤに駆け寄る。


「トルビヤさん!」


 トルビヤは呼び掛けられて気付いた感を出してサーブの方に顔を向け、微笑む。


「おっ、部長。早かったですね」


「いえいえ。お待たせしちゃってスミマセン」


「いやいや、俺もさっき着いた所ですから。それじゃぁ行きましょうか、あっちです」


 トルビヤは笑顔でそう言うと歩き始め、サーブはトルビヤの後に続く。トルビヤは町の様子を教えながら大通りを進み、路地に逸れて暫く進む。そうして、交差する細い道を通り過ぎた所で二人の後ろからトルビヤを呼ぶ声が上がる。


「トルビヤさん!っ、あれ?部長?」


 トルビヤとサーブが足を止めて振り返ると、大柄の男と坊主の男がいた。男達はトルビヤの元に駆け寄り、大柄な男はトルビヤに尋ねる。


「トルビヤさん、こんな所で部長と二人でどうしたんですか?」


「あぁ、これから部長の歓迎会をするって話になってな。お前達も非番だったな、どうだ?急で何だが、来るか?」


「え?良いんですか?勿論行きますよ♪っ、そうだ、それならもう何人か呼んでも良いですか?」


「あぁ、構わないぞ、呼んで来い。俺の行きつけの店は分かるか?」


 坊主の男は苦笑いしながら口を開く。


「あぁ……あの店ですか。あの店、何か場所覚えにくくて……」


 坊主の男の隣で大柄な男も苦笑いしているのを見てトルビヤは肩をすくめながら笑みを浮かべる。


「そうか。それじゃぁ、ここで待っててやるから呼んで来い。急げよ♪」


「「はっ、ハイ!」」


 二人は声を揃えて返事をすると小走りでトルビヤの元を離れ、路地を曲がって姿を消す。トルビヤは申し訳なさそうな笑みを浮かべながらサーブに声をかける。


「すみませんね、すぐ戻って来ると思うんで」


「えぇ、良いですよ。人数増えた方が賑やかで楽しいでしょうし」


「そう言って貰えると助かります。それじゃぁ、あっちで待ちましょう」


 トルビヤはそう言いながら交差点の角の空き地を親指で差し、歩き始める。サーブはトルビヤの後に続き、二人は空き地の端に積まれた煉瓦の前で足を止める。足を止めたトルビヤは鐘塔の方に目を向けてからサーブに声をかける。


「部長、俺、もう一人声をかけに行って来るんで、ちょっとここで待っててもらって良いですか?」


「そうですか、良いですよ♪」


「ありがとうございます、それじゃぁ、そこに腰掛けて待ってて下さい」


トルビヤは煉瓦の山を親指で差しながらそう言うとサーブに背を向けて小走りで空き地を離れる。少し進んだ所でトルビヤは振り返り、サーブが自分の方を見ていない事を確認してから建物の脇にスッと入る。物音を立てないように空き地の反対側に向かったトルビヤは建物の陰から空き地の様子を伺う男と周囲に気を配る男を目にして悪い笑みを浮かべる。トルビヤが来た事に気付いた大柄の男はトルビヤに向かって頷いてから坊主の男の肩を叩く。坊主の男は空き地を覗くのを止め、到着したトルビヤに小声で報告する。


「部長が煉瓦の山に座っていませんっ」


「っ……それで、位置と向きは?」


「煉瓦の山の前です。向きは計画の通りです」


「そうか、それなら大丈夫だな」


 トルビヤは邪な笑みを浮かべてそう言うと剣を抜き、鍾塔の上部に目を向ける。鍾塔の上部に身を潜めていたサリットはトルビヤの動きを察して弓を手に取った。




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