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これ、ホントに呪いの指輪なの?  作者: 彩田(さいた)
三章 カタアギロ横災編
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3-6 訓練内容



 二階の部屋に向かうラトサリーとサーブ。玄関ホールの階段を上ろうとした所で玄関扉が開き、中に入って来たアドエルとミラテースと合流して二階の部屋に向かった。部屋に入り、ミラテースがアドエルを着替えさせようとする横で椅子に座ったサーブは事の次第を対面に座ったラトサリーに話し始めた。話し終えたサーブはミラテースに顔を向けて尋ねる。


「あの、ミラテースさん、氷の術式の訓練を警護部の皆にして頂く事って出来ませんか?」


「あ?嫌よ。って言うかサーブ、私の訓練方法、誰かに話してないでしょうね?そもそも、私の事、外で話してないでしょうね!?」


 鋭く睨むミラテースにサーブは手をワラワラ動かして否定する。


「いっ、いえ!何も話してません!本当です!」


「そう……なら良いわ」


 ミラテースは息を軽く吐くと表情を和らげ、着替え終わったアドエルを長椅子に座らせる。ラトサリーは呆れ顔でサーブに声をかける。


「ねぇサーブ。ミラテースが何の為に行動を共にしてくれているのか、何の為に私に術式の訓練をしてくれているのか、忘れないで。私もアドエルも、まだミラテースと一緒にいたいの。だから、頼むわよ」


「うっ、うん、ごめん……」


 すっかり肩を落として消え入りそうな声で謝るサーブ。ラトサリーは気まずそうな笑みをミラテースに向ける。


「ミラテース、御免なさい。サーブもこの通り反省しているし、許してあげて……」


「大丈夫よ、誰にも話してないって事だし。でもラトサリー、ちょっと旦那を甘やかしすぎじゃない?そんなだとコイツ、調子に乗って変な案件を大量に抱えて帰って来るようになるわよ」


 ミラテースはそう言うとサーブに冷たい視線を送る。ラトサリーはミラテースの視線の先に目をやって口を開く。


「そう……かしら……でも、サーブはそう言う調子の乗り方をする人ではないから大丈夫よ」


 真顔でラトサリーがそう言うのを見たミラテースは呆れた様な笑みを浮かべる。


「へぇ……随分信用してるのね?」


「えぇ。そうでなかったら、結婚の話をどうにかしていたわよ」


 ラトサリーが微笑んでそう言うと落ち込んでいたサーブは顔を上げ、ホッとした顔をラトサリーに向ける。ミラテースは目の前で二人の微笑み合いが始まった事に顔を引きつらせ、苦笑いをラトサリーに向ける。


「それで?考えつきそうなの?渋る相手に練習用の武器を大量購入させる手段なんて」


 ミラテースの声で我に返ったラトサリーはサーブから視線を外し、咳払いをしてから口を開く。


「そうね…………ちょっと……難しいかも……」


 ラトサリーは困り顔でそう言うとサーブに視線を向ける。サーブはラトサリーの及び腰な気配を感じて不安そうな顔をしていた。そんなサーブを目にしたラトサリーは立ち上がると両手で自分の頬をパシッと叩き、手を頬に押し当てたままミラテースに目を向ける。


「考えてみる!考える前から無理とか言っちゃダメよね。それに」


ラトサリーは不敵な笑みをミラテースに向けて言葉を続ける。


「考えついたら凄くない?」


 ミラテースは目を丸くさせ、呆れた様子で微笑む。


「そうね、考えついたらね。それじゃ、頑張ってね。アドエルの事は任せて頂戴」


「えぇ、ありがとうミラテース♪」


 そう言ったラトサリーは両頬をペチペチっと叩き、胸元で両手を強く握るとミラテースに笑みを見せる。ミラテースは目線で応えると立ち上がり、アドエルに声をかける。


「アドエル、食堂に行きましょう」


「うん」


 ミラテースの手を借りて長椅子から降りたアドエルはラトサリーを見上げて口を開く。


「がんばってね、ラトサリー」


 意表を突かれたラトサリーは目を丸くして一瞬固まるが、アドエルの照れ笑いを見て笑みを零す。


「ありがとうアドエル、頑張るわ♪」


 アドエルはミラテースに手を引かれて部屋を出て行く。二人を見送ったラトサリーは息を深く吐いて椅子に座り直し、左掌を左頬に当てて目を閉じた。





 ラトサリーの左人差指の動きが止まり、目を開いたラトサリーは窓に目を向ける。外はすっかり暗くなっていた。部屋の燭台は灯され、窓の傍でサーブが体の鍛錬をしていた。部屋が少し熱くなっている事に気付いたラトサリーは部屋を見回し、首を傾げてもう一度部屋を見回す。鍛錬を続けるサーブに再び目を向けたラトサリーは熱源がサーブである事に気付き、驚いて目を丸くさせる。上着を脱いで鍛錬していたサーブはラトサリーが座っている椅子が揺れる音に気付き、慌てて動きを止めてラトサリーに顔を向ける。


「っ、ゴメン、ちょっと……訓練の事を考えてたら……つい……」


 サーブは申し訳なさそうにそう言うと床に脱ぎ捨てていた上着に手を伸ばす。ラトサリーはクスっと笑い、サーブが上着を着るのを待って声をかける。


「ねぇサーブ、その運動、体に凄い負荷がかかっていそうだけど、それはサーブが考えた運動なの?」


「え?違うよ。これはレスタさんがやっているのを見て覚えたモノなんだ」


「へぇ、そうなんだ……それじゃぁ、それは王都の上級騎士なら誰でも知っている運動なの?」


「え?どうだろう……レスタさんが誰かと一緒にやっているのはあまり見た事無いし……俺はレスタさんがやっているのを見て覚えただけだし……」


「そう……それじゃぁ、後でそれ、教えて頂戴」


「え?うん、良いよ♪何なら今から一式通しでやってみせようか?」


「今考えている事がまとまったら見せてもらうわ」


 そう言ったラトサリーの左手が未だ左頬に当てられている事に気付いたサーブはバツの悪い顔で目を泳がせる。


「ごっ、ごめん……」


「良いのよ。それで、教えて欲しい事が幾つかあるんだけど」


「なっ、何?」


「えっと……まずは、王都の訓練場に備え付けられている練習用の武器なんだけど、こっちのモノと比べてどれ位重いの?」


「そうだね……三、だと言いすぎか……二倍ちょっと位かな」


「そう……それと、レスタ様も皆と同じ練習用の武器を使われるの?」


「手合わせの時はね。素振りの時はレスタさんは専用のモノを使ってるよ」


「それって、何か違うの?」


「重さが全然。長さは普通の剣なんだけど、幅と厚みが凄くて。重さは四倍以上違うんじゃないかなぁ」


「そうなると、レスタ様はこっちの訓練場の剣と比べて……八倍以上重い剣で素振りしているって事?」


「えっと……そう言う事になるかな」


「ちなみに、団長様も自分専用のモノで素振りなさるの?」


「え?マーク団長?マーク団長は……どっもちだね。手合わせでは皆と同じ練習用を使ってるけど……」


「そう……あと、サーブがルイーゼ様の邸宅で倒したという四人だけど、レスタ様だったらその四人をせると思う?」


「えっと……倒せると思うよ。あっ、それで、後から聞いたんだけど、あの四人、槍が得意だって話だったんだよ。あの時彼らは室内警備で短剣を装備していたから、話に聞いた程の強さじゃなかったんだと思うんだ」


「そう……分かったわ、ありがとうサーブ」


 ラトサリーは笑顔で礼を口にすると再び目を閉じ、彼女の左人差指は左頬をポンポンと叩き始めた。




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