表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
これ、ホントに呪いの指輪なの?  作者: 彩田(さいた)
二章 カタアギロ到着編
80/119

2-34 準備



 自ら出勤停止の身となったサーブは急いで別邸に戻った。別邸の門に着いたサーブは全開になった門から出て来る豪華な馬車とすれ違う。馬車の窓から顔を覗かせるミラテースとアドエルに手を振って見送ったサーブは玄関へと向かった。玄関前で豪華な馬車を見送っていたラトサリーとカトラの横には荷馬車が止まっていた。サーブは二人の元へ駆け寄りながらラトサリーに声をかける。


「ただいま、ラトサリー」


「……おかえり」


 ムスッとした顔で返事するラトサリー。サーブは困った顔をしながらカトラに声をかける。


「カっ、カトラさん、早かったですね」


「それはそうでしょ、期間限定であなたとラトサリーを使い倒せるって言うんだから。それに、御陰で面白いモノを見られて最高よ♪」


 カトラは口元を緩ませながらそう言うとラトサリーに顔を向け、サーブを横目で見ながら口を開く。


「変態の旦那に調教されて気持ちの整理がついてない調教初期段階のラトサリーを見られるなんて♪」


 カトラの選んだ単語にサーブは慌てふためく。


「ちょっ!ちょっと!カトラさん!調教だなんて変な事言わないで下さい!」


 必死に否定するサーブ。ラトサリーは頬を紅く染め、サーブを上目遣いで睨んで呟く。


「……変態」


 サーブはオロオロしながらラトサリーに顔を向ける。


「っ、ラトサリー、機嫌直してよ、そんなつもりじゃ無かったって言ってるじゃないか……」


 何も答えず顔を背けるラトサリーを見たカトラは笑いを堪えながらサーブに声をかける。


「仕方無いわよ♪初期段階はこんなモノらしいから。根気よく調教しなさい♪」


「だからっ!そんな気は無かったって言ってるじゃないですか!」


 サーブの必死の釈明を聞き流したカトラはニタっと笑ってラトサリーに顔を向ける。


「それじゃラトサリー。変態さんの妄言に構ってないで、準備を始めましょう♪」


 ラトサリーは紅潮した顔でサーブを睨んでからカトラに笑顔を向ける。


「えぇ、カトラ♪行きましょう♪」


 二人はサーブを置いて荷馬車の荷台に向かい、サーブは釈然としない様子で二人の後を追った。





 ラトサリーが考えた策を実行するに際し、一カ月分の報酬を別の所から得る必要があった。ラトサリーはサーブを宮総研に寄らせ、臨時で雇えるか尋ねさせた。カトラに断られたら次の手を打つ事になったが、宮総研の求職者試験の話を聞いていたラトサリーはカトラが快諾する事を確信していた。しかし、ラトサリー自らも働く事になるのは予想外だった。

 昨日ルイーゼが来訪したのは自分の子供達をアドエルに紹介する為だった。長い付き合いになるであろうと考えたルイーゼと、アドエルに社交性を持たせたいと言うラトサリーの思惑の一致もあり、互いの家で交互に会う事となった。子供達は幸いにも上手く打ち解けた様だった。安堵したルイーゼはラトサリーを東屋に軟禁してサーブが帰ってくるまで愚痴やら何やらを聞かせ続けていた。




 サーブが出勤停止を確定させたこの日はラトサリーとミラテースがアドエルを連れてルイーゼ達の元に行く予定になっていた。だが、ルイーゼが寄こした馬車が別邸に到着する前にカトラが荷馬車で現れ、宮総研で働く準備をすると言ってラトサリーの前に立ちはだかった。結果、ミラテースだけがアドエルと一緒にルイーゼ邸に出掛ける事となった。


 荷馬車に積まれた大きな箱を二階の部屋まで運ぶようにカトラから指示されたサーブ。扉の前まで来たサーブは開いている扉を通り、部屋の中央のテーブルの横で待つラトサリーの元に向かった。カトラは薄手の窓掛けを閉じながらサーブに声をかける。


「お疲れ様サーブ。それじゃぁ、あなたは部屋から出て行って頂戴」


 サーブは箱をラトサリーの前に置きながら目を丸くさせる。


「え?何でですか?これから森に入る準備をするんですよね?」


 カトラは少しムッとした顔をするが、すぐにニヤッと笑ってサーブの顔を覗き込む。


「ラトサリーの準備をね。あっ♪彼女が探索着の試着をする姿を一部始終隅から隅まで目に焼き付けたかった?ごめんなさい♪いいわよ、それじゃ、手伝って頂戴♪」


 サーブは身じろぎして苦笑いを浮かべる。


「そっ!そんな訳無いじゃないですか!先にそう言ってくれれば良いじゃないですか!」


 カトラはサーブに体を寄せ、ラトサリーに聞こえない程の小声で尋ねる。


「えっ!見たくないの?これっぽっちも見たくない訳?」


「見たくない訳……って、その聞き方はズルいです」


 悔しそうに答えるサーブを見てカトラは満面の笑みを浮かべ、頷いてサーブから離れながら口を開く。


「大丈夫よサーブ♪これは変態さんのあなただから出来る大切な仕事よ♪肌着の試着までしっかり手伝ってもらうわよ♪何だったら彼女の調教を手伝ってあげるからきっちり働いて頂戴。これは室長命令よ♪」


 凄く嬉しそうに言い放つカトラ。サーブは真っ赤な顔で目を泳がせ始める。ラトサリーは頬を紅く染めながら溜め息をつき、呆れた様子でカトラに声をかける。


「ねぇ、カトラ室長?他の仕事はない訳?」


「えっ?他に面白い仕事なんて、あったかしら?」


 ラトサリーは深い溜め息をついてカトラにジト目を向ける。


「面白い仕事以外の仕事は無いの?例えば……扉の外で男の人が入って来ないように立っているとか」


「えーっ!そんなの全然面白くないじゃない!」


 露骨に不満を体現するカトラにサーブは慌てて声をかける。


「あのっ!カトラさん、いえっ、カトラ室長殿!俺、扉の外の見張りがやりたいです!!」


 窓掛けを全て閉じ終えたカトラは木箱に向かいながら首を傾げる。


「えっ?つまんないわよ?そんな仕事で良いの?」


「是非やらせて下さい!行って来ます!!」


 サーブは早口でそう雄叫ぶと瞬時に扉の前に移り、扉を開けて部屋から姿を消す。扉に目を向けて肩をすくめるカトラにラトサリーは首を右手で摩りながら声をかける。


「カトラ。気を使ってくれて、ありがとう」


「え?何の事?」


「何のって……あなた、サーブとの変なやり取りを私に見せて、私を呆れさせて機嫌が戻るようにしてくれたんでしょ?」


「え?そうなの?凄く気が利くのね、私って♪」


 カトラはそう言いながら箱を開け、中に手を伸ばして袋を取り出す。ラトサリーはニコやかにカトラの横に移り、箱の中を覗き込む。箱の中には閉じられた袋やら靴やら胸当てやらが詰め込まれていた。ラトサリーが箱の中に手を伸ばして右手で胸当てを取り出すと、胸当てに紐で結ばれた肩当ても一緒に出て来てプラプラと揺れた。ラトサリーは左手で肩当てを掴んでカトラに声をかける。


「ねぇカトラ、この胸当てと肩当てで一組なの?」


 床に袋を置いて屈んだカトラは袋を開いて中に手を入れながら口を開く。


「そうよ。もう一組あるでしょ?どっちが着け心地が良いか試してもらうから。でもその前に防具の下も試着してもらうから、脱いで頂戴」


「えっ、えぇ、分かったわ」


 ラトサリーは返事をしながら肩当てと胸当てを箱に戻し、カトラが袋から取り出してテーブルに置いた服に目を向ける。厚手の丈夫そうな上下が分かれた服を興味深く見つめながら服を脱ぐラトサリー。脱いだ服を椅子に掛けて肌着だけの姿になったラトサリーはテーブルに置かれた服を取ってカトラに声をかける。


「脱いだわよ。それで、これを試着するのね?」


「え?それは後よ。まずは肌着からよ、早く脱いで頂戴」


「えっ?」


 ラトサリーが驚きの声を漏らす横でカトラは立ち上がり、両手にそれぞれ持ったモノをラトサリーに差し出す。


「それぞれ違うから、好きな方を選びなさい」


 カトラが手にしていたモノは、ラトサリーが見る限り、ただの紐と、ただの網だった。ラトサリーは苦笑いしながらカトラに尋ねる。


「カ、カトラ?出した物、間違えてない?何か、紐と……網……にしか見えないんだけど?」


 カトラは手にした紐と網に目を向け、ムッとした顔をラトサリーに見せる。


「間違えてないわよ。これは宮総研の女性陣で考えた長期探検用の肌着よ。早く試して頂戴、準備はこれだけじゃ無いんだから」


 ラトサリーは渋々受け取り、手元で紐と網を見比べると困り顔でカトラに尋ねる。


「ね、ねぇ、本気なの?これ……」


 カトラは再び屈んで別の袋の中に手を入れながら口を開く。


「っ?本気って……それが冒険用に特化した物だって事は見れば分かるでしょ?」


「いっ、いや……ちょっと、私、冒険とか……した事無いから……」


 本気で戸惑うラトサリーを見かねたカトラは深い溜め息をついて身を起こし、ラトサリーに体を向けて真面目な顔で口を開く。


「……仕方無いわね、説明してあげるわ。コレがどれだけ長期の冒険をする時の事を考えて作られたかを」


 カトラはそう言ってラトサリーの手から網を奪い取り、ラトサリーの目の前で広げた。





第二部 完






ここまでお読み下さりありがとうございます。

3章は「カタアギロ横災編」です。4章を書き上げて辻褄調整等々が完了したら投稿致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ