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これ、ホントに呪いの指輪なの?  作者: 彩田(さいた)
二章 カタアギロ到着編
79/119

2-33 責任

2-6ですが、この話の調整を受けて加筆修正しましたスミマセン




 翌朝、別邸を出立したサーブは宮総研に寄り、その後庁舎に向かった。警護部に着いたサーブはフレアに声をかける。


「おはようございますフレアさん。朝一番でスミマセンが、裁定通知書の作成をお願いします」


 不穏な単語が聞こえた部員達はサーブに目を向けて息を飲む。フレアは動揺を押し殺しながらサーブに顔を向ける。


「さっ、裁定通知書ですか。それで、その、内容は?」


 サーブは内容を伝え終えると奥の部屋に向かった。サーブが扉を閉めて姿を消すと、部屋にいた者達はザワつきながらフレアの元に集まった。


 サーブは部屋の奥の事務机に座り、積んである書類に目を通し始める。サーブが最後の書類に書き込みをしようとペンを取った時、勢いよく開いた扉からロクリフが現れる。何やら書かれた紙を持ったクリフは慌てた様子でサーブに駆け寄る。


「部長っ、この通知書は本気ですか?」


 サーブはペンを止め、ロクリフに笑みを向ける。


「あ、おはようございます。すみません、そう言う事なので、今月の決済署名諸共よろしくお願いします。あと、他の部署から問い合わせが来たら、『詳細を公表するとそちらの部でも何等かの裁定を下す必要が発生するから黙認して下さい』と言って下さい」


「えっ、わ、分かりました。ですが、良いのですか?これだと、あなたが一人で罰を受ける形になりますが」


 ロクリフはそう言いながら手に持った紙をピラピラ揺らす。その紙、裁定通知書の内容は以下の通り。



『多くの警護部部員によって行われた不名誉な行いに対する懲罰として、責任者である警護部部長に一カ月の出勤停止と一カ月分の給金差し止めを命じる。加えて、警護部部長には出勤停止明けより三年間、週に一度の市場清掃を科すものとする。不名誉な事を行った者達は口頭による叱責を受ける事とする』



サーブは朗らかな顔で答える。


「いえいえ、皆にはちゃんとお叱りを受けてもらいますので、俺一人ではないですよ」


「ですが、それでは余りにも差があると言うか、来たばかりで何もしていないあなたが何で罰を受ける必要があるのかと言うか……」


「お気遣いありがとうございます。まぁ、責任者は責任を負うのが仕事ですし、これで今後警備料を受け取る人が出れば、気兼ねなく罰を下す事が出来ますから」


「っ!」


ロクリフが言葉を詰まらせたのを見たサーブは止めていた手を動かし、書類に署名して印を押してからロクリフに声をかける。


「それで、叱責の件なんですけど。ロクリフさん、事務方含めて部員皆に執行しておいて下さい」


「え!皆ですか?全く関与していない者にもですか?」


「はい、そうです」


 サーブは静かにそう言うと立ち上がり、真面目な顔で口を開く。


「事態を黙認し続けた事は反省してもらう必要があります。あなたにも」


 ロクリフは気まずそうにサーブから目を逸らすが、眉間にシワを寄せると顔を上げて手に持った紙を机に叩きつけてサーブを睨む。


「それでは、どうすれば良かったんですか!ケルマーを守っていた奴らは俺達が束になっても敵わなかったんですよ!そいつらに門前払いを食らって!どうしろと!!」


「確かに難しい状況ですね」


 サーブは悲しそうにそう言うとロクリフの目を見据えて口を開く。


「ですが、他の手段は試みましたか?王都に報告するとか、面倒でも何か試みましたか?」


「っ!いや、それは……」


「ですから、約束して下さい。今後は諦めないと。そして見て見ぬ振りはしないと」


「…………はい」


 悔しそうに返事をするロクリフ。サーブはそんなロクリフに申し訳なさげに声をかける。


「すみませんね、年下の新参者が偉そうに言って。他の方への叱責は任せましたよ。叱責する資格が云々と詰め寄って来る人がいたら『自分は部長から直接叱責を受けて後を任された』とでも言って下さい」


「……はい、分かりま……」


《 トントントントン 》


 扉を叩く音がロクリフの返事を遮った。サーブは扉の方に顔を向けて声を張る。


「どうぞ!お入り下さい!」


 扉が開き、紙を二枚持ったフレアが現れる。フレアはロクリフの横に来ると机の上に紙を置いて口を開く。


「部長、この二枚とそちらの一枚、合計三枚です。署名して印を押せば完成です……でも、本当にこれを掲示するのですか?」


「はい、掲示しますよ。しっかり作って下さってありがとうございます。フレアさんもロクリフ副部長からしっかり叱責を受けて下さいね♪」


「えっ!え、っと……はい」


 釈然としない様子で返事をするフレアに苦笑いを浮かべたサーブは紙を手元に寄せ、署名して印を押す。二人が黙って見守る中、三枚の書類を完成させたサーブは立ち上がってロクリフに声をかける。


「それではロクリフさん、これを警護部と庁舎共同掲示板と中央市場の掲示板に貼って下さい」


「は……はい」


「それでは副部長、フレアさん。暫く姿を消しますが、宜しくお願いします」


 サーブは二人に頭を深く下げてから剣を取って扉へと歩き出すが、扉の前で止まると振り返ってロクリフに声をかける。


「そうだロクリフさん。トルビヤさんも門前払い食らったって言ってましたが、それってカトラさん……宮総研の人が倒した六人の事ですか?」


「六人?いいえ、あと四人で合計十人です」


「そうですか……その四人、取り逃がしましたかね?調べておいて下さいますか?」


「え?彼らは既に捕らえられて処刑されましたよ?えーっと……ガイヒア家邸宅であなたに倒されて捕縛されたと報告を受けていますが……」


「え?俺が?……いや、そんな強い人と戦ったら覚えている筈なんですが……その報告、本当に間違い無いですか?」


 サーブの言葉にフレアは殺気立って口を開く。


「私とその部下が間違いを犯したとでも?」


 サーブは後退りして顔を引きつらせる。


「いやっ!いえっ!そっ、そうじゃなくっ!そうじゃなくて、そんな強い人を取り逃したとなると大変だと思っただけです。不快な思いをさせて御免なさい」


「そう言う事でしたら問題ありません」


 フレアから殺気が消えた事に胸を撫で下ろすサーブ。ロクリフは首を傾げながらサーブに声をかける。


「部長。相手にしたヤツの中に、大きな火球を飛ばして来たヤツはいませんでしたか?」


「火球?…………ええっと…………あぁ、いましたね」


「そいつです!そいつと一緒にあと三人いたはずです」


「あと三人…………一人は退いてくれて……残り三人……いたけど……強かった?…………いや……」


 本気で悩むサーブを見てロクリフは顔を引きつらせる。


「あの……サーブ部長?ちなみに火球は……火球はどうやって防いだのですか?」


「え?どうって……手でこう、ペシって」


 サーブの身振り付きの説明を聞いたフレアの顔が青ざめる。


「……請願術式を併用した火球ですよ……ありえない」


「っ!それ!ありえないって、本人に言われました♪……でも、何がありえないんですか?レスタさんもペシってやってましたし」


 レスタと聞いたロクリフの顔も青ざめる。


「っ!サーブぶちょ……サーブ部長殿、レスタさんって、まさか王都騎士団副団長のレスタ様の事ですか?」


「え?そうですよ、って、もしかしてお知り合いですか?良かった、共通の知り合いがいる人が身近にいて♪」


「いやいやいや!知り合いだなんておこがましい!噂で知っているだけです!」


「そうですか、残念です……」


 少し肩を落として残念がるサーブ。ロクリフは恐る恐るサーブに尋ねる。


「あの、サーブ部長殿?ちなみになんですが、レスタ様と手合わせとかなされた事は?」


「え?勿論ありますけど」


「そっ、それで……戦績はどのような具合でいらっしゃいますか?」


「いらっしゃいますかって、何か変ですよ♪そうですね……あれ?そう言えば勝敗がつくような形式の手合わせはした事がないですね。ずーっと俺の訓練に付き合って下さっていたので」


「え?訓練?」


「えぇ。色々武器を変えて相手をして下さったんです。見た事が無い武器とかもあって、変な所を持つ大きな剣とか、斧みたいな槍とか」


「そ、それで?」


「えぇ、ある程度打ち合って、レスタさんが『ここまでにしよう』って言ったら終わりって感じで。御陰で良い経験を沢山積ませて頂きました♪」


 笑顔で語るサーブにロクリフは顔を恐怖で引きつらせ、恐る恐るサーブに尋ねる。


「あの、そ、それで、その、練習の時のレスタ様の様子はどのような感じで……」


「様子……ですか……様子と言われましても、何とお答えすれば良いか……」


「そ、そうですよね、スミマセン変な事聞いて。レスタ様が本気だったか気になったもので」


「あぁ、そう言う事ですか。レスタさんはいつも本気でしたよ。練習でも気を抜かない姿勢を皆に見せていたんだと思います。副団長って大変だなぁ、俺も見倣わないとなぁ、って、いつも思ってました♪」


 何か誇らしげに語るサーブにロクリフとフレアは言葉を失う。そんな二人に気付いたサーブは慌てて口を開く。


「あっ、すみません、何か語っちゃって。で、何の話でしたっけ?……あぁ、四人の行方の話でしたね。無事捕まっていたと言う事で安心しました♪それでは、失礼します!」


 サーブは二人に礼をして部屋を出て行く。扉が閉まった所でフレアは顔を引きつらせたままロクリフに声をかける。


「あの……副部長?」


 同じく顔を引きつらせたままロクリフは応じる。


「な、なんだ?」


「ケルマーお抱えの十人って、本当に強かったんですか?」


「え……弱かったら、増税阻止出来てたよ」


「そ……そうですよね」


 気まずい沈黙の後、ようやくロクリフが口を動かす。


「フレアさん、皆に伝えて欲しい事があるんだが……」


「っ、はい、何でしょう?」


「あの人……ヤバいから逆らうな、って」





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