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これ、ホントに呪いの指輪なの?  作者: 彩田(さいた)
二章 カタアギロ到着編
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2-32 量刑2


32 量刑2




 遠回りをして街の様子を観察しながら別邸に戻ったサーブは門衛に声をかけられる。


「サーブさんっ、ガイヒア侯爵がいらしています」


「えっ、何で?どういうご用向きか聞いていますか?」


「いいえ、自分は何も」


「そうですか、分かりました」


 サーブは早足で門を通り、正面玄関前に停まる豪華な馬車の横を通って建物に入る。待機部屋にいる衛兵にルイーゼの居場所を尋ねたサーブは中庭に急ぐ。中庭に通じる扉を開け、子供のはしゃぐ声が聞こえたサーブは中庭を見渡す。芝生の上をアドエルが二人の子供を追いかけていた。一人は男の子、もう一人は女の子で、アドエルより背が高く、二人とも見て分かる程の高品質な服を着ていた。楽しそうに走るアドエルを見守るミラテースは中庭中央の東屋の外側で柱に寄りかかって立っていた。東屋の中でルイーゼは椅子に座り、対面に座るラトサリーと話をしている様だった。ルイーゼの後ろに控えるエリーは何か困った様子でルイーゼに目を向けていた。

 サーブは煉瓦で舗装された通路を通って東屋に向かう。中庭に現れた人影に気付いた女の子は追いかけっこを止め、サーブに駆け寄って声をかける。


「ねぇ、あなた、誰?」


 呼び止められたサーブは女の子に体を向け、膝をついて笑みを見せる。


「俺はサーブ。サーブ・ランダレアです。あなたは、ルイーゼ様の御息女様ですね?」


「そうよ、アンナ・ガイヒアよ。あっちのは弟のレンマ」


「そうですか、お教え下さりありがとうございます。それでは、ルイーゼ様の元に向かいますので失礼致します」


 サーブはそう言うと頭を下げてから立ち上がる。アンナはサーブに向かって綺麗な礼をするとクルっと向きを変え、レンマとアドエルの元に駆け戻る。アンナを見送ったサーブは東屋に向かった。

 ミラテースは東屋に向かってくるサーブに声をかける。


「アンタ、どうしたの?」


「え?どうしたって何の事です?」


「いえ、帰って来るの早いし、何か気配も変だし」


「えっ?俺、変ですか?」


「えぇ、とっても。で、何があったの?」


「いや……」


 サーブが言い淀んでいると、サーブの声に気付いたラトサリーが東屋から出て来て声をかける。


「サーブ、お帰りなさい。早かったわね……って、どうしたの?何かあった?」


 サーブは目を丸くしてラトサリーに尋ねる。


「ねぇ、俺って、何か変?」


「えぇ、見てすぐに分かる位よ。何があったの?」


「いや、それが……」


 サーブが話し始めようとするのを東屋から出て来たルイーゼの声が妨げる。


「サーブ、邪魔しているぞ……って、何かあったのか?凄く疲弊した様子だが?」


 ルイーゼの言葉に驚いたサーブはラトサリーに慌てた様子で尋ねる。


「ねぇラトサリー、俺って、そんなに何かあった様な顔になってる?」


 サーブから問われたラトサリーはサーブから目を逸らして肩を震わせ、笑いを必死に堪え始める。サーブは少しムッとした顔をラトサリーに向ける。


「ラトサリー、酷いよ。こっちは色々大変だったのに」


「ごっ……ゴメン……ごめんなさい。それで、どうしたの?」


 右手で目を拭きながら尋ねるラトサリーにサーブは口を尖らせる。その様子を見たルイーゼはフッと笑みを浮かべてサーブに声をかける。


「サーブよ。とりあえずこっちに来て座れ。お主の悩み、聞いてやるぞ」


 ルイーゼはそう言うと東屋に戻りながらエリーに声をかける。


「エリー、サーブの分のお茶を用意しろ」





 ラトサリーと共に東屋の椅子に座ったサーブは帰って来るまでに起こった出来事を話し始めた。皆は相槌を打つ以上の言葉を控えて話を聞いた。サーブは話し終えるとカップに手を伸ばしてお茶に口をつけ、皆の言葉を待った。すると、東屋の入り口の柱に寄りかかって聞いていたミラテースがボソッと呟く。


「全員鞭打ちで良いんじゃない?」


「な!なんでそうなるんですか!」


「だって、ヤってた奴らも黙認してた奴らもまとめて罰を受けさせて終わりにすればいいじゃない」


 シレっと言うミラテース。ラトサリーはミラテースに呆れ顔を向ける。


「ちょっとミラテース……そんな事したら、サーブが皆から恨まれて業務に支障が出るじゃない」


「そう?組織が引き締まって良いと思うけど」


 サーブは申し訳なさげにミラテースに声をかける。


「あの、ミラテースさん。流石にそれはやり過ぎだと思いますので……」


「そう?まぁ、決めるのはアンタだし」


 ミラテースはそう言うと庭で駆け回るアドエルに目を向ける。引きつった笑みをミラテースに向けるサーブにルイーゼは申し訳なさそうな顔を向ける。


「サーブよ、済まない。そのような事態になっていたとは」


「っ!いえいえ!謝らないで下さい!これは全てケルマー侯爵が悪いのですから」


「それはそうだが……」


ルイーゼが落ち込んで項垂れるのを見かねたラトサリーはサーブに声をかける。


「それでサーブ、何でそんなに処罰に拘るの?」


「え?それは……」


 サーブはそう話し出しながら真剣な顔をラトサリーに向ける。


「そうしないと、町の人やお店の人が納得しないと思うんだ。だから、何らかの刑罰を執行して、ある種の区切をつける必要があると思うんだよ」


「あぁ……そう言う事なのね」


 ラトサリーは頷きながらそう言うと笑みを浮かべ、ゆっくり立ち上がってルイーゼに顔を向ける。


「ルイーゼ様。申し訳ないのですが、今から暫し考え事をする必要があるので席を外しても宜しいでしょうか?」


「ん?何故だ?別に移動せずとも良いぞ」


「そう仰って下さるのは有難いのですが、考えている最中は話しかけられても反応するのが難しくなりますし、今日中に考えがまとまるかも分かりませんので……」


「別に構わないぞ、それに」


 ルイーゼは無邪気な笑みを浮かべて言葉を続ける。


「お主のそう言う姿を見ておくのも一興だろうて。それに、サーブと話したい事もあるし、それなりの時間になったら勝手に帰らせて貰う。見送りは不要だ。だから気にするな」


「そ、そうですか……分かりました」


 ラトサリーは諦めたかのように溜め息をつくと椅子に座り直し、左手を左頬に当てて目を閉じる。ラトサリーの左人差指が左頬をポンポン叩き始めたのを確認したサーブはルイーゼに小声で声をかける。


「ルイーゼ様。これで考えがまとまるまでこんな感じです」


「そうか。そう言えば先日もこの体勢になっていたな。……で?話しかけても反応しないと?」


「はい。周りが相当騒がしくてもこのままです」


「そうか……試した事はあるのか?」


 ラトサリーを覗き込むようにしながら尋ねるルイーゼにサーブは狼狽えながら口を開く。


「えっ?そんな事出来る訳無いじゃないですか!俺や皆の為に頑張ってくれる彼女の邪魔なんて!」


「そうだな。済まない、気になっただけだ。では、話を聞かせて貰うとするかな」


 ルイーゼはそう言うとサーブの方に体を向け、下唇を軽く舐めながら微笑む。サーブは未体験の違和感に顔を引きつらせる。


「はっ、話って、何でしょう?って、そういえば、今日はどのようなご用向きでこちらに来られたのですか?」


「あぁ、こやつからの手紙の返事と打ち合わせをしに来たのだが、それはもう終わった。お主に話して貰いたいのは……」


 ルイーゼは口角を大きく上げて口を開く。


「お前達の馴れ初めからお主達のこれまでを全てだ。こやつ、表面的な事は話すのだが、肝心な部分を上手く隠すのでな。心の機微まで洗いざらい話して貰うぞ」


 嬉しそうにそう言うルイーゼの後ろでエリーも目を怪しく光らせる。サーブは首を傾げるが直ぐに笑みを浮かべて座り直し、口を開く。


「そう言う事でしたら幾らでもお話ししますよ♪」


 サーブはそう言うと、王都近郊に引っ越した時の事から話し始めた。その横で、ラトサリーは目を閉じたまま左人差指で左頬をポンポン叩き続けていた。




 ラトサリーの左人差指が動きを止めた。目をゆっくり開いたラトサリーはサーブに声をかける。


「ねぇサーブ。一応確認したい事がある……んだけ……ど……」


 ラトサリーは対面の二人の様子が気になりすぎて口ごもる。ルイーゼは何故か顔を真っ赤にして両手で口を覆っていた。エリーはニヤニヤしながらラトサリーとサーブを眺めていた。ラトサリーは首を傾げてルイーゼに尋ねる。


「あの、ルイーゼ様?どうされたのです?」


 ルイーゼは両手で口を覆ったままラトサリーに怪しく微笑む。


「そなた、愛されておるなぁ♪」


 ルイーゼの後ろでサリーが大きく頷く。ラトサリーは困惑してサーブに尋ねる。


「ちょっとサーブ、何話したの?」


「何って、君との馴れ初めから話して欲しいって言われたから。順に話していたんだよ」


 ニコやかなサーブの返事にラトサリーの頬が赤く染まり、ラトサリーは右手で頭を押さえる。


「サーブ……どこまで話したの?」


「え?っとね……宮総研に行って指輪を外そうとした所までかな」


 目線を上に向けて答えるサーブ。ルイーゼは恍惚とした笑みをラトサリーに向けて口を開く。


「そなた、背中が弱点のようだな♪」


「え?」


 ラトサリーは怪訝な顔をルイーゼに向ける。ルイーゼとエリーがムフフと笑みを零す姿を見て、ラトサリーの脳裏に勝手口での情景がよぎった。ラトサリーは耳まで真っ赤になり、体を震わせてサーブを睨みつける。サーブは状況の理解が出来ずにキョトンとした顔で首を傾げた。





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