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これ、ホントに呪いの指輪なの?  作者: 彩田(さいた)
二章 カタアギロ到着編
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2-31 量刑1



 出納部を出て警護部に戻ったサーブ。警護部事務室にサーブが入った途端、部屋は静寂に包まれ、部屋にいる者達は一斉にサーブへ視線を向ける。向けられた視線と部屋の空気の重さに足を止めたサーブは口を開く。


「み……皆さん、どうされましたか?」


 サーブの問いかけに部屋の空気は更に重くなる。サーブから掲示物の作成を頼まれた事務方の女性はサーブに声をかける。


「サーブ部長、この掲示物ですが、少し良いですか?」


「え?何ですか?」


 サーブは自分を呼んだ女性の元に向かう。部員の横を通る度に冷たく睨まれ、サーブは首を傾げる。女性の机の横に辿り着いたサーブは恐る恐る口を開く。


「それでフレアさん、何でしょう?」


 フレアは唾を飲み、立ち上がって息を軽く吐くとサーブに体を向ける。


「サーブ部長、警備料ですが……そうしないと皆の生活が成り立たない現状を御存じでしょうか?」


 無表情でそう言うフレアの手が震えている事に気付いたサーブはホッと息を吐き、フレアに笑みを向ける。


「住民税でしたら、翌月から下がる事が決まりました。ですから、部員の生活の心配はせずに掲示物の作成をして下さい」


 フレアは目を丸くさせながら口を開く。


「下がる……って、本当ですか?どれ位下がるんですか?」


「出納部長は元に戻るって言ってました。ですから心配する事無く作成して下さい」


「は……はい、わかりました」


 フレアは驚いた顔のまま席に座り、ペンを手に取って紙と向き合い始める。二人の会話を聞いてざわつく部員達。彼らの間を縫ってサーブは奥の部屋の扉に向かい、部屋に入る前に一人の男に声をかける。


「ロクリフさん、ちょっといいですか?」


「はい、何でしょう?」


 ロクリフとサーブは部屋に入り、サーブは扉を閉めてから神妙な面持ちで口を開く。


「あの、副部長は……その……警備料についてどの程度把握されていますか?」


「どの程度と申されますと?」


「その……誰がどの程度徴収していたとかです」


「そうですね……巡回業務に就いている者達は殆ど貰っていると思いますが」


「殆ど、と言う事は何名か貰っていない人がいる、と言う事ですか?」


「えっ、えぇ」


「ちなみに……こんな事を聞くのは申し訳ないのですが……あの……」


 ロクリフはサーブの様子を察して笑みを見せる。


「っ、あぁ、構いませんよ。私は貰っていませんから」


 サーブはホッと息を吐くと苦笑いをロクリフに見せる。


「それは良かったです。これであなたも貰っていたとかなると、この後の相談が出来なくなる所でした」


「そうですか。それで、相談とは?」


「はい、それなんですが……警備料を貰っていた人達への刑罰の事です。事情は分かるのですが、処罰無しと言うのも何か違うような気がしまして」


「そうですか」


「かと言って、執政部に任せるのもどうかと思うんです。あの部長に任せるのは何かイヤと言うか……」


 ロクリフは物凄く嫌そうな顔で口を開く。


「それだけは絶対にしないで下さい」


「そ、そうですよね。それで、衛兵全員が関与していたのなら全体に罰を科せば良いと思っていたのですが、数人無関係となるとそれも出来ない訳で……」


「そうですね」


「あっ、そう言えば、何でロクリフさんは関与しなかったんですか?」


「えっ……っとですね……」


 ロクリフは少し気恥ずかしそうに口を開く。


「ちょっと実家の家業が順調なもので、そっちから融通してもらっているんですよ」


 サーブは深く頷きながら口を開く。


「あぁ、なるほど……それじゃぁ、他の貰っていない人達もそんな感じですか?」


「えぇ、まぁ……そうですね」


「そうですか。スミマセン、込み入った事聞いたりして」


「いえいえ」


「それで、そうなると、部内で誰がどの程度関わっていたか調査する必要が出て来るのですが」


「それは止めた方が良いと思います」


「え?そうですか?」


「えぇ。調査した所で皆が正直に答えるとは限りませんし」


「そうですか?先日の野盗騒動で皆さんから頂いた情報は正確でしたよ」


「いや、それは、少しでも偽りが混ざっていると死刑になる危険があったからですよ」


「あぁ……そ、そうですね」


「ですから、今回に限って言えば、何も処罰せずに部内で警備料徴収禁止の通達を出すに留めるのが無難だと思います。他の部署でも似た様な状況でしょうし」


「え?他でもって、何でです?」


「税金で苦しんでいるのは警護部だけではない、って事ですよ」


「あぁ……そうですね」


「あっ、あと、貼り紙は止めた方が良いと思います。執政部に見られたら厄介ですから」


「あぁ……そう……そうですね」


 気落ちした様子のサーブにロクリフは微笑みかける。


「部長。そう落ち込まないで下さい。あなたが皆の事を気遣っている事は分かっていますから」


「そ、そうですか?」


「そうですよ。それに、刑罰に関しては直ぐに決めないでも大丈夫なのですから、今日はこれで終わりにして、後日じっくり考えませんか?」


「そ……そうですね。それじゃぁ、そうしましょう」


「それでは今日の締めの処理はやっておきますから、部長は上がって下さい。今日は気苦労が多くて大変でしたでしょうから」


 ロクリフはそう言うと奥の事務机に向かって歩き出す。サーブは慌ててロクリフに声をかける。


「いっ、いいえ、それは申し訳ないです、自分の仕事はこなしますから」


「まぁ、そう言わないで下さい」


 ロクリフはそう言って椅子の前で止まるとサーブに笑みを向ける。


「そうだっ、街の様子を観察しに行くって言う事なら如何でしょう?こちらとしても、街の事を少しでも早く覚えて頂きたいですし」


「え……」


 サーブは言葉を漏らすと目を閉じて首を傾げる。二呼吸程の後、目を開けたサーブは座らずに返事を待っているロクリフに笑みを向ける。


「そ、そうですね。そう言う事ならお言葉に甘えさえて頂きます」


「そうなさって下さい。提案を受け入れて下さり感謝します」


「いえいえ、こちらこそ気を使って下さってありがとうございます。それでは宜しくお願いします」


 サーブはロクリフに頭を下げ、部屋を出てフレアに作業の一時中断を告げてから帰路に着いた。ロクリフの提案に従い、先程衛兵達と巡回しなかった方に足を運んだサーブ。それ違う住民を注意深く観察したサーブは住民達が王都では感じた事の無い緊張感を漂わせている事に気付き、唇を噛みしめた。





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