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これ、ホントに呪いの指輪なの?  作者: 彩田(さいた)
二章 カタアギロ到着編
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2-29 巡回



 翌日、サーブは午前中に事務仕事を行い、午後から衛兵の巡回に参加した。商店で賑わう区画を巡り、サーブは多くの人が自分に視線を向けて来る事に違和感を覚え、同行する衛兵に尋ねる。


「あの、何だかさっきから街の人達が変な目で見て来るんですが、俺、何か変な所ありますか?」


 サーブより頭二つ程背が高い衛兵は苦笑いしながら答える。


「サーブさん、それ、本気で聞いてます?」


「っ?どういう事です?」


「サーブさん、昨日、宮総研の採用試験で応募者を……あの……」


 口ごもる衛兵を不思議そうに見るサーブ。するとサーブより少し背が低い細身の衛兵は目を輝かせてサーブに声をかける。


「サーブさん、受験者を瞬く間に軒並み再起不能にしたって本当ですか?」


 背が高い衛兵は慌てた様子で背が低い衛兵を睨む。


「サリット!言葉を選べ……」


 同僚をたしなめる衛兵と目が合ってしまったサーブは首を傾げて口を開く。


「いや、骨折した人は数人いましたが、それ以外の人達は歩いて帰っていきましたよ」





 宮総研の追試に挑んだ男達が全滅するのに二分もかからなかった。オグマはサーブに労いの言葉をかけてから骨折した数人の治療に取り掛かった。カトラはサーブの肩を叩いて労いの言葉をかけてから試験終了を宣言した。サーブは不満気に『こんな手伝いはもう御免だ』とカトラに詰め寄ったが、カトラは笑顔で聞き流した。

 カリフはサーブに倒された数人に声をかけて母屋の方に連れて行き、それ以外の者達は肩を落として宮総研を後にした。追試に参加せず遠巻きに見物していた者達も憔悴した様子で帰って行き、酒場でヤケ酒を呷りながら宮総研での恐怖体験を言い広めた。





 長身の衛兵は苦笑いをサーブに向ける。


「でっ、でも、みんなそう言ってますよ。それに、姿が消えたとか、一振りで数人が屋根の上まで吹き飛んだとか」


 サーブは右手を振りながら苦笑いする。


「いやいや、話しが大きくなりすぎですって。屋根の上って、そんなに飛ばせる訳ないじゃないですか、カトラさんじゃないんですから」


「それじゃぁ宮総研の室長さんが吹き飛ばしたって事ですか?凄いですね♪」


 更に目を輝かせるサリットにサーブは苦笑いを向ける。


「飛ばしたと言っても、軒下位の高さですよ。噂話をそのまま信じないで下さい」


 長身の衛兵は顔を青くして口を開く。


「普通でもそこまで出来ませんよ。何なんですかそいつ、化け物ですか……」


 顔を引きつらせてそう言う長身の衛兵をサーブは真顔でたしなめる。


「そんな言葉、本人に聞かれたら大変ですよ……」


 益々怯えた様子を見せる長身の衛兵にサーブは笑みを向ける。


「あまり噂話を丸ごと信じないで下さいね。その話が全部本当だったら、俺も化け物って事になっちゃいますから」


 そう言って笑いながらサーブは露店が並ぶ路地を見つけ、大通りから路地に曲がる。長身の衛兵は慌ててサーブを呼び止める。


「サーブさん、そっちは……」


 サーブは振り返って首を傾げる。


「そっちは、何です?」


「いえ……何でもありません」


「そうですか?それじゃぁ」


 サーブは向き直って路地へと進み、長身の衛兵はサーブの横に並んだ。露店商達は衛兵の姿を見ると表情を硬くし、それまで熱気と活気に満ちていた路地は次第に静かになっていった。空気の変化に違和感を覚えたサーブは長身の衛兵に尋ねる。


「あのっ、トルビヤさん。何かこの路地、気配が変なんですけど、いつもこんな感じなんですか?」


「こんな……そうですね、こんな感じですよ。でも危険は無いですから安心して下さい」


「そうですか……」


 サーブは釈然としない様子で露店に目を向けながら路地を進む。路地を出る少し手前でサーブはもう一人の衛兵が付いて来ていない事に気付き、立ち止まって振り向く。人混みの中に目を向けたサーブは女性とサリットが言い争っているのを見つけ、首を傾げながら二人の元に向かおうとする。トルビヤは慌ててサーブの肩を掴んで口を開く。


「まっ、待って下さい、俺が行きます!」


 トルビヤはそう言うと駆け足で言い争っている二人の元に向かう。言い争いに割って入ったトルビヤは女性をなだめようとするが、女性は益々険悪な気配を漂わせて二人に詰め寄る。心配になったサーブは小走りで三人の元に向かい、女性に声をかける。


「あの、一先ず落ち着て下さい、どうされたんです?」


 女性はサーブを睨んで怒鳴る。


「どうもこうもないわ!あんた達、先週も来たじゃない!来過ぎよ!そんなに搾り取りたい訳?!」


「っ?搾り取る?何の事ですか?」


「何とぼけてんのよ!巡回の度に警備料とか言って取っていくじゃない!」


 サーブは眉をひそめてトルビヤに顔を向ける。


「トルビヤさん、警備料って、何の事ですか?」


「いや……その……」


 言い淀むトルビヤの横でサリットは軽い口調で割って入る。


「警備料は警備料ですよ。こんな路地まで巡回するんですから」


「警備料って……駄目ですよ、任務中にお金を貰ったりしたら」


「え?でも、これまで皆ずーっと貰ってましたよ。それに、貰わないとこっちも生活できませんし」


 日常の他愛もない話かの様に話すサリットにサーブは目を丸くして口を開く。


「え?でも、初任給で金貨二枚前後だから、それ以上は貰ってますよね?それで生活苦になるなんて変ですよ」


 サーブの言葉に衛兵二人は眉間にシワを寄せ、トルビヤはサーブを睨む。


「税金で色々取られてその半分も残らないんですよ!それで家族を養うなんて無理です!」


「半分も残らない?確かにそれは引かれ過ぎですね……一体何の名目で引かれているんですか?」


「えっ……人頭税と住民税がまず取られて、特に住民税は三年位前に跳ね上がったんです」


「跳ね上がった?倍とかですか?」


「倍どころじゃないです!五倍ですよ!五倍!!」


 声を荒げるトルビヤの後ろでサリットは口を歪ませる。サーブは予想以上の増加幅に目を丸くして口を開く。


「っ!五倍って、何でそんなに上がったんです?理由とか聞いていないんですか?」


「えっ、理由?侯爵家の請求額が上がったって聞きましたよ!そう聞いたから皆で文句を言いに行ったんですけど……門前払いを食らいました……」


「門前って、食い下がらなかったんですか?」


「出て来た奴らが恐ろしく強かったんです、仕方ないじゃないですか!」


「そうでしたか……でも、だからと言ってお店の人達から取っちゃダメですよ」


「そ、それは……」


 二人が言葉を詰まらせた所で露店の女性が不機嫌そうな顔を二人に向ける。


「あんた達、内輪のイザコザは他所でやってくれない?とにかく、今日は渡さないからね!」


 女性に睨まれたトルビヤとサーブは顔を引きつらせ、女性に会釈をしてサリットと共にその場を離れる。路地から出たサーブはサリットに小声で声をかける。


「サリットさん。さっきの女性とやり合う前に他のお店から受け取ったモノがあるなら、返しに行って下さい」


「えっ!でも……」


 サーブは露骨に嫌がるサリットの肩に手を置いて優しく声をかける。


「確かにその税金は高すぎますから、出納部と侯爵家に掛け合ってみます。だから今日は俺の言う事を聞いて下さい」


「……わかりました」


 サリットは溜め息と共にそう言うとサーブの手を払って路地に戻って行く。トルビヤは困り顔でサーブに声をかける。


「あの……サーブさん……俺達、何か処罰されますか?」


「えっ……」


 サーブは少し考える素振りを見せ、渋い顔でトルビヤから目を逸らして口を開く。


「通常なら処罰されますけど……そんな重い税金が課せられた状況ですし、他の人もヤッてるんですよね……処罰が厳しくならない様に頑張ってみます。だから……」


 サーブはそう言ってトルビヤに顔を向け、苦笑いしながら口を開く。


「今後は町の人にお金を要求しないで下さいね」


「……わかりました」


 トルビヤは神妙な顔でサーブに向かって深く頭を下げる。サーブは慌てて屈む様にしてトルビヤの顔を覗き込み、困り顔で口を開く。


「こんな人が多い所でそんなに頭を下げないで下さい。トルビヤさんは俺より年上でこの町での経験も豊富な方なんですから」


 トルビヤは頭を上げ、気恥ずかしげに口を開く。


「なんだか……色々すみません」


 サーブも身を起こしながら気恥ずかしげに口を開く。


「いえいえ。それで、スミマセンが俺、ここで巡回抜けますね」


「そ、そうですか、分かりました。それで、どちらに?」


「庁舎に戻ります。早く掛け合わないと、みんなの給金が少ないまま支給日になっちゃうので」


 サーブはそう言うとトルビヤに軽く頭を下げ、駆け足でその場を去った。





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