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これ、ホントに呪いの指輪なの?  作者: 彩田(さいた)
一章 王都編
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7:宮総研からの迎え


 正門から王宮に入った二人は待機部屋へ通される。しばらく待つと扉が開き初老の男が現れる。


「お待たせしてしまったかな、さぁ参ろうか」


 二人は立ち上がり、ラトサリーは挨拶の礼をしようとするが初老の男は笑って遮る。


「堅苦しい挨拶はせんでもよいぞ、フォッフォッフォッ♪自己紹介は歩きながらにしようぞ♪」


 初老の男はそう言うと歩き出し、二人は後に続く。男は後ろに目をやりながらラトサリーに向かって笑みを向ける。


「ワシはノート・ダンボ、宮総研の副所長じゃ。しかしお嬢ちゃん、指輪が外れないとは面白い事に出くわしたもんじゃのぅ」


歯に衣着せぬ物言いでラトサリーに話しかける副所長にサーブは抗議する。


「副所長殿、面白くありません!彼女は指輪のせいで大変な思いをしているのですよ!」


「愛する女性の為に食い下がるか、若いって良いのぉ♪まぁ、お嬢ちゃん、ワシの事はノートと呼んでおくれ♪」


「っ!……はぁ……まったく……」


 サーブが顔を赤らめ頭を抱えた所でラトサリーが割って入る。


「お気遣いありがとうございますノート様、ラトサリー・ランダレアです」


「……『お気遣い』と言って返すか。なかなか豪胆なお嬢ちゃんじゃ♪」


「お褒めの言葉としてお受け致します。それで、この指輪は外せそうなのでしょうか?」


「うむ、……それなんじゃが、はっきり言って分からん!」


「「えっ!!」」


「うむ、息もピッタリ合っておるな、良い夫婦になるぞぃ♪」


「「……あのぉ」」


「いやいやスマン、緊張をほぐしてやろうと思ってのぅ♪許してちょ♪」


 軽さを醸そうとする副所長に二人は溜め息をつく。


「皆で文献を調査したのじゃが、コレと言ったモノが出てこなかったものでな。現時点では分からない、そう言う意味じゃ。安心せぃ」


「宮総研が調査して何も分からないと聞かされて、彼女が安心できると思いますか!!」


「そう早るな『寵児潰し』よ、お嬢ちゃんを呼んだのは他でもない、突破口を開く為なのじゃからなぁ」


 今まで聞いた事の無いサーブの呼ばれ方にラトサリーは思わず言葉を漏らす。


「……『寵児潰し』?!」


 サーブは不機嫌な顔をサーブに向ける。


「彼女の前でその呼び方はご勘弁下さい、いい加減迷惑しているのですから……」


「やはりお嬢ちゃんに教えてなかったのか」


ラトサリーは不安げにサーブを見上げる。


「サーブ様、なぜそんな呼ばれ方を……?」


 言い淀むサーブを見てノートは口を開く。


「こやつ、訓練から試合まで軒並み相手を蹴散らしてのぅ。おかげ貴族のボンボン息子共が誰も上級騎士の推挙の対象になれんもんで、付けられたのがこの名じゃ。ワシは好きなのじゃが♪」


 サーブにここまで面倒な二つ名が付けられている事にラトサリーは驚愕する。宮廷内ですれ違う兵士がサーブに冷ややかな目を向けてくるのをラトサリーは目撃したし、サーブが宮廷内であまり良く思われてない事も予期していた。しかし、蔑み以上の感情が含まれる二つ名を付けられているという事実は彼女の予想を超えていた。


 サーブはふくれっ面をノートに向ける。


「こんな名前が好きなんて、どうかしています!それに、貴方のような二つ名だったら真っ先に教えてますよ」


「そうかのぅ、相手を威嚇できる素敵な二つ名ではないか。何が不満じゃ?」


「味方を威嚇してどうするんですか!まったく……」


「まぁそう言うなサーブよ。それに、彼女にはお主の宮廷内での立場を詳しく把握しておいてもらった方が良いのではないかの?」


 転じて真面目な声色で語りかけるノートの言葉にサーブの顔が強張る。


「この先、お主が我慢するだけでは済まない事が必ず起こる。その時お嬢ちゃんが何も知らなかったら彼女はどうなる?」


 サーブは顔をますます強張らせ俯く。見かねたラトサリーはそこで横槍を入れる。


「ノート様、それ位でご容赦頂けないでしょうか?」


 ラトサリーの一言で二人の足が止まる。ラトサリーはノートの正面に回り込んでノートに凛とした顔を向ける。


「それ以上のご助言はサーブ様の為にならないかと」


「……ほぅ」


「ですが、二つ名の事は私の予想以上でしたので、お話下さった事に感謝します。今後の身の振り方を考えるに当り有益でした」


「……お嬢ちゃん、言うのぅ♪だが、お嬢ちゃん自らが棘の道を進む事になると理解しておるのか?」


ラトサリーは微笑を浮かべてノートに答える。


「そうなる前にサーブ様が成長なされば良いだけですし、間に合わなかったら自ら対処致します」


 二人を見ている事しか出来ずにサーブが狼狽えていると、ノートは大笑いして手を叩き始める。


「フォーッフォッフォッフォッ!お嬢ちゃん、良いのぅ♪気に入ったわぃ♪何か困ったら何時でもすぐに声をかけるのじゃよ♪」


「是非そうさせて頂きます♪早速なのですが、この指輪どうにかなりませんか?」


「っ、フォッフォッフォッ♪そうじゃったな。急ごうかのぉ、所長もお待ちかねじゃし」


 ノートはそう言うと再び歩き始め、二人は後に続く。ラトサリーは歩を速めてノートの横に行き、ノートに問いかける。


「ノート様、なぜこの場でサーブ様に助言なさろうと思われたのですか?」


「まぁ……お主がどんな娘に育ったか知るついでに丁度良いと思ってな♪」




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