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これ、ホントに呪いの指輪なの?  作者: 彩田(さいた)
二章 カタアギロ到着編
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2-23 余暇2 稽古



 サーブに向かって木剣を振り続ける男の子。男の子は思いつく限りの剣撃をサーブに叩き込むが、サーブはその全てを笑顔で受け止め続けた。男の子が手を止めるとサーブは間合いを詰めて男の子が動くのを待ち、サーブの無言の圧に急かされるようにして男の子は剣を打ち込み続けた。剣を持って待っていた男の子達は当初は意欲を顔に滲ませていたが、サーブに剣を向ける男の子の疲れ切って泣きそうな姿に顔を引きつらせていった。とうとう男の子の根が尽きて地面にへたり込んだ所でサーブは待っている子供達に顔を向ける。


「さぁ、次は誰の番だい?」


 サーブの問いかけに男の子達は顔を青くさせて互いに譲り合いはじめる。そんな男の子達の胸中を推し量れないサーブは笑顔を男の子達に向ける。見かねたミラテースは呆れ顔でサーブに呼びかける。


「ちょっとサーブ!こっち来なさいっ!!」


 呼ばれたサーブは首を傾げながらミラテーの元に小走りで向かう。サーブが足を止めるのを待たずにミラテースはゲンナリした顔でサーブを睨む。


「アンタねぇ……いつもあんな感じでヤッてた訳?」


「えっ?何の事ですか?」


 首を傾げてキョトンとするサーブにミラテースは苛立ちで顔を歪ませる。


「何の……じゃないわよ、手合わせよ、て・あ・わ・せ!」


「え?手合わせですか?何かマズかったですか?」


「マズい所じゃないわよっ、大問題よ!アンタ、相手を潰す気?」


「えっ!そんな……俺は師匠のやり方を真似しているだけなんですけど……」


「はぁ?師匠の?どんなよ!」


「どっ。どんなって……考えている時は口を挟まないで俺が飽きるまで続ける、って言う感じです。俺はその御陰で稽古に没頭出来ましたし、良いやり方だと思いませんか?」


 嬉しそうに答えるサーブにミラテースは大きな溜め息をつく」


「あのねぇ……」


 ミラテースはそう言ってサーブに呆れ顔を向ける。


「アンタの師匠ってのは、アンタが考えてる時に間合いを詰めて来た?」


「え?詰めてきましたよ。その方が直ぐに打ち込めますから。効率良くて良いですよね♪」


「アンタねぇ……そのやり方で良いって思えるヤツなんてアンタ位よ!普通はそんなやり方されたら自信を無くすだけよ!」


「そっ、そうなんですかっ?」


「そうよ!そんなやり方、アドエルにされたら洒落にならないわよ!今すぐ改めなさい!!!」


「今すぐって……どうすれば良いんです?」


「え?……そう…………そうきたか……」


 ミラテースは溜め息をついて立ち上がり、右手をサーブに差し出す。


「剣を貸しなさい」


 ションボリしたサーブから木剣を受け取ったミラテースは歩き出し、立ち上がって肩で息をしている男の子に声をかけた。





 厨房を出たラトサリーはアドエル達を迎えに中庭に向かった。中庭に出る扉を開けると、サーブの前で男の子がへたり込んでいた。ラトサリーは顔を引きつらせて左頬に左手を当てようとするが、サーブがミラテースに呼ばれたのを見て手を止めた。ミラテースがサーブと言葉を交わしてから立ち上がり、サーブから木剣を受け取って男の子に手ほどきしてからサーブの元に戻って何か告げる姿にラトサリーは安堵の息を吐いた。その後、サーブとミラテースは男の子達の所に揃って向かい、ミラテースの指導の元、サーブは次の男の子に剣の稽古をつけ始めた。サーブはミラテースの助言の通りに男の子が放った一撃の良かった所を笑顔で褒め、体を動かしながら改善点の指摘をしながら稽古と続けた。男の子達の顔から怯えが消え、笑顔が戻った事に安堵したミラテースはサーブに目配せしてからベンチに戻った。ミラテースがベンチに座った所でラトサリーは歩き出し、ミラテースの元に向かった。

ベンチに戻ったミラテースは隣のベンチで女の子に囲まれるアドエルに目を向けていた。ラトサリーはミラテースの前で止まり、アドエルに目を向けながらミラテースに声をかける。


「ねぇミラテース。あのアドエルの人気っぷりは何事?」


「さぁ?何なんでしょうね?」


「そう……」


 ラトサリーはミラテースの隣に座って稽古の様子に目を向け続け、最後の男の子の番になった頃になってミラテースに声をかける。


「ありがとう、ミラテース」


「ん?何が?」


「サーブに何か教えてあげたんでしょ?そうでないと、子供達が楽しそうにサーブと稽古なんて出来ないわ♪」


 ミラテースは眉をピクっと動かすとゲンナリした様子で口を開く。


「アドエルにあんな調子で稽古されたらと思ったら体が動いただけよ……」


「ふふっ♪ありがとうミラテース♪」


 ミラテースは大きな溜め息をついてラトサリーにゲンナリした顔を向ける。


「アンタねぇ……ありがとうじゃないわよ、分かってたならどうにかしておきなさいよ……」


「だって、丁度良い機会が無かったんですもん♪それに……」


「それに何よ?」


「あなたから言われた方が説得力あると思って♪」


 ミラテースは溜め息をつき、ジト目でラトサリーを睨む。


「アンタ、最初っから私に言わせるつもりだったでしょ?」


「えっ?そんな都合良く出来る訳ないじゃない♪」


「まぁ、そうよね。いくら何でも都合良すぎ……って……」


 ミラテースはそう言うと腕をラトサリーの首に絡めて低い声で尋ねる。


「アンタ、厨房から戻って来るの遅かったわね……何してたの?」


「えっ!……そっ……そう?それは……ちょっと……」


 顔を背けて言い淀むラトサリー。ミラテースは冷めた笑みを浮かべて額をラトサリーの頭に擦り当てる。


「言い訳を吐く瞬発力は全く向上してないわね♪本当、良い根性してるわよねぇ、アンタ」


「いやぁ……あっ!稽古、終わったみたいだから行ってくる♪」


 ラトサリーはミラテースの腕を掴んで軽く解くと立ち上がり、男の子達の方へ駆け出した。ミラテースは目を丸くして呟く。


「どんな腕力よ……」



 男の子達の礼に応えたサーブはラトサリーが向かって来るのが目に入り、笑顔で呼びかける。


「やぁ、実験は順調?」


「えっ、えぇ。今日はもうおしまいよ。それよりサーブ、ミラテースから何を教わったの?」


 サーブは体をビクッと震わせ、左手で首を触りながら苦笑いする。


「いっ、いやぁ……普通の稽古方法って言うのをちょっとね……」


「普通の……でも、そのちょっとの御陰で子供達、とっても楽しそうだったわよ♪」


「そうだね……あそこまで反応が変わるとは思ってなかったよ」


「そうね。教えてもらって良かったわね♪」


「そうだけど……みんな、あれで物足りなくないのかなぁ?」


 ラトサリーは動揺を隠すように笑みを作ってサーブに尋ねる。


「そっ、そうなの?サーブはあんな感じだと物足りないと思うの?」


「うん。もっと好きな様に好きなだけ打ち込みたいと思うんだけどなぁ……」


「そっ、そうなのね。それで、どうするの?やり方、戻す?」


「いや、暫くはミラテースさんの方法を続けてみるよ」


 ラトサリーは安堵の息を吐き、サーブに笑みを見せる。


「そうね、それが良いと思うわ♪そうしたら、衛兵さんの訓練に参加する時もそうしてみたら?」


「え?でも、大人だと物足りないと思わないかなぁ?」


 ラトサリーは焦りが顔に出そうになるのを堪えて口を開く。


「そっ、それは……ミラテースのやり方で一度稽古して、物足りないか聞いてみたらどう?」


「うーん……そうだね。そうしてみるよ♪」


 サーブの返事を聞いたラトサリーが再び安堵の息を吐いた所で、中庭に駆け込んで来た衛兵が声を張る。


「サーブさん!いますか?サーブさん!」


 サーブは衛兵の方に顔を向け、手を上げる。


「ここです!どうしましたか?」


 衛兵は酷く慌てた様子でサーブに駆け寄り、酷く怯えた様子で口を開く。


「ルっ、ルイーゼ様がいらっしゃいました!」


「えっ!ルイーゼ様?!」


 サーブは動揺して目を泳がせ始める。すると扉が開き、現れたルイーゼは中庭を見渡した。





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