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これ、ホントに呪いの指輪なの?  作者: 彩田(さいた)
二章 カタアギロ到着編
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2-16 自重



 お茶の入れ方をジーナに教える事になったラトサリー。手順と注意点の多さに悲鳴を上げるジーナ。困ったラトサリーは要所だけ押さえた簡易的な入れ方を教える事にした。三回程抽出されたお茶の殆どはカトラによって飲み干された。

 お茶の入れ方を教えている間、子供達は居間の長椅子でそれなりに仲良く戯れていた。ティーナはアドエルと同じ位の歳で、顔見知りする事無くアドエルの赤い髪を撫でて喜んでいた。マルコは二人より三つ程年上で、ティーナの言動が度を過ぎるのをたしなめながら二人を見守っていた。マルコの様子を見てミラテースは気を緩め、窓際の壁に寄りかかり腕を組んで子供達を眺めていた。


ジーナは自分が入れたお茶を飲んで満足気に頷き、ラトサリーに笑顔を向ける。


「ラトサリー、ありがとうございます。この入れ方、友達に教えても良いですか?」


「えぇ、勿論。でも、教えるからにはしっかり教えて下さいね♪」


「はい、分かりました♪それで、今日はこの後、何か予定はありますか?」


「そうね……何か植えられるか庭の土の確認をしようと思っている位かしら」


「そうですか。それじゃぁ、植えるモノを探すついでに町の様子を見に行きませんか?案内しますよ♪」


「そうね……」


 ラトサリーが悩んでいると、カトラはケトルを目一杯傾けてお茶を注ぎながらラトサリーに声をかける。


「ラトサリー。今日は……いえ、二日か三日は止めておいた方が良いわ」


「……そうよね」


 そう言って残念そうに溜め息をつくラトサリー。カトラはケトルを縦に振りながらジーナに声をかける。


「ジーナ。オグマとカリフに送らせるから、今日は帰りなさい」


「えっ?何でですか?」


 カトラは不満げなジーナに目を向け、ケトルの蓋を開けて中を覗きながら口を開く。


「ケルマー侯爵の残党が残っていないか確認出来るまでは何が起こるか分からないからよ」


 カトラはそう言うとケトルの蓋を閉め、カップを手にしてお茶をすする。肩を落とすジーナにラトサリーは申し訳なさげに声をかける。


「ジーナ、ごめんなさいね。折角の申し出だけど、町の案内は事態が落ち着いてからって事で良いかしら?」


 ジーナは少し表情を和らげ、息を軽く吐いてからラトサリーに笑みを向ける。


「そう言う事なら、わかりました。それじゃぁ、今日はどうします?」


「えぇ……そうね……」


 ラトサリーが再び悩んでいると、カトラは笑みを浮かべながら空になったカップをジーナに向ける。


「今日は解散。食材の差し入れは有難く頂戴しておくわ♪」


「はい……わかりました」


 ジーナはムスッとした顔でそう言うと子供達の方に顔を向けて声をかける。


「マルコ、ティーナ、帰るわよ」


「「はーい♪」」


 揃って元気な返事をするマルコとティーナ。マルコは先に長椅子から降りてティーナが降りる手助けをする。降ろしてもらったティーナは椅子から立ち上がったジーナの元に駆け寄る。マルコは長椅子に置いていた手提げ袋を持ってジーナの元へ歩み寄る。カトラはカップを置いて立ち上がり、ラトサリーに声をかける。


「ラトサリー。ジーナさん達を馬車に連れて行って頂戴。私はカリフを呼んでくるわ」


「えぇ、わかったわ」


 ジーナは少し困った顔をカトラに向ける。


「あのっ、送って下さるだけでも何なのに、馬車まで出してもらうなんて申し訳ないです」


 カトラはテーブルから離れる足を止め、ジーナに顔を向ける。


「丁度馬車を移動させる予定だったのよ。ついでに乗ってもらうだけだから気にしないで乗って頂戴♪」


 カトラはジーナに人差指を向けながら得意げにそう言うと、前に向き直って部屋から出て行く。言葉を返せずカトラの背中を見送るジーナ。ラトサリーは二人の様子に笑みを浮かべながら立ち上がり、ジーナ達に声をかける。


「それじゃぁ、行きましょう」


「えっ、えぇ」


 子供達と共に扉へと進むジーナとラトサリー。その様子を寂し気にみていたアドエルはミラテースに目を向ける。視線に気付いたミラテースはその意味を察してアドエルに笑みを向け、長椅子へと移動しながらアドエルに声をかける。


「アドエル、見送りに行きましょう」


「うん♪」


 笑顔で返事をしたアドエルをミラテースは抱きかかえ、ジーナ達の後を追った。



 外に出て厩舎へと向かうラトサリー達。追いついたミラテースはアドエルをマルコとティーナの横に降ろした。ラトサリー達に見守られながら仲良く歩いていた子供達だったが、馬車の準備をしているオグマに手を振られ、急に馬車へと駆け出す。慌てて追いかけるラトサリーとジーナをにこやかに眺めるミラテース。カリフを呼びに行っていたカトラはミラテースに追いつくとミラテースに並び、不思議そうな顔でミラテースに尋ねる。


「ねぇ、何でアドエルを追いかけないの?真っ先に追いかけると思ったのに」


 ミラテースはアドエルに目を向けながら口を開く。


「ラトサリーが行ったから良いのよ」


「ふーん……任せるって事?」


「えぇ。アドエルにラトサリー慣れしてもらわないといけないし、あの子にも母親として成長してもらわないとだしね」


「へぇ……ちゃんと考えてるんだぁ♪」


「当然でしょ……って、アンタ、なにその物騒な棒は?」


 眉をひそめて尋ねるミラテース。カトラは自分の身丈より頭一つ分長い鉄の棒を握る左手に目を向けながら口を開く。


「あぁ、これ?職人さんに指摘する時の指し棒に使うのよ。工具とか資材を使って機嫌を損ねちゃったら言う事聞いてもらえないじゃない♪」


「あぁ、そう言う事ね……でも、よりによってそんな鉄の棒を持って来るなんて、変な目で見られるとかそう言う事は気にしない訳?」


「変な目も何も、初めて会う職人さんだから大剣使う訳にはいかないし、かと言って、舐められたら言う事聞いてもらえないじゃない♪」


「あ……そう言う事ね♪」


 笑顔で棒を振るカトラにミラテースは呆れながらも笑みを浮かべる。そうしている内にカリフはカトラ達を追い抜き、早足のまま馬車へと向かう。馬車に到着したカリフは持ってきた二振りの短剣を御者席に置き、子供達とお喋りを始めたオグマの代わりに馬車の支度の続きに取り掛かった。




 ジーナ達を見送ったラトサリー達。馬車が門をくぐった頃合いでカトラはラトサリーに声をかける。


「ラトサリー。私はこれから職人さんと打ち合わせしてくるから、庭いじりを始める前に勝手口を封鎖して窓の鎧戸を閉めておいて頂戴♪」


「えぇ、分かったわ」


 すんなり了承したラトサリーを見てミラテースは怪訝な顔でラトサリーに尋ねる。


「ねぇ、今ってそんなにマズイ状況なの?」


「そうね……そこまででは無いと思うけど、何もしないよりは良いと思うわ」


 ミラテースは厩舎へと向かうカトラの背中に声をかける。


「ねぇカトラ、大丈夫なの?襲撃とかされそうなの?」


 カトラは振り返って肩をすくめる。


「どうかしらね?昨晩襲撃が無かったから大丈夫だと思うわよ。白昼に堂々と襲撃してくるとは思わないけど、まぁ、オグマ達が帰ってくるまでは手薄になる訳だし、備えはしておいた方が良いでしょ?」


 カトラは真顔でそう言うと向き直って厩舎へと再び歩き始める。ミラテースは厳しい顔でラトサリーに声をかける。


「ねぇラトサリー、襲撃される可能性があるなら、暫く侯爵家の別邸にいた方が良いんじゃない?」


「そうね……」


 ラトサリーは首を傾げながら目を上に向ける。


「そうした方が良いかもね」


 ラトサリーはそう呟くと厩舎の方を向いて大声でカトラに呼びかける。


「ねぇ、カトラ。落ち着くまで別邸に移動しない?」


 カトラは足を止めて振り返り、苦い顔をしながら右手で髪をいじり始める。不安げに返事を待つラトサリー。カトラは手を髪から離すとヤレヤレといった様子で笑みを浮かべる。


「そうね。そうした方が良いかもね。オグマ達が帰ってきたら準備しましょう♪」




 ラトサリーとミラテースは母屋に戻り、カトラに言われた通り鎧戸を閉め、勝手口に鍵をかけてカンヌキをかけた。一通り閉めた後、ラトサリーは暖炉脇にあった火かき棒を持って庭に出た。庭は舗装された通路以外は青い花を咲かせるクローバーで覆われていた。ラトサリーは歩きながら所々で立ち止まり火かき棒を地面に突き刺し、掘り返すように火かき棒を動かし顔を歪めた。

 ミラテースは母屋の近くでクローバーの上に座り、アドエルを向かいに座らせクローバーの花を編み込んで見せていた。ラトサリーは時々足を止めてアドエル達の様子に目を向け、アドエルがミラテースの真似をしてクローバーを編み込もうとしている光景に目を細めた。

 厩舎のカトラは外壁中央の柱の前で右手に図面を持ちながら職人の親方を睨みつけていた。左手で持った鉄の棒で柱と梁の接合部を指しながらカトラは『図面通りでは無い』と親方に文句を言うが、親方は渋い顔で首を横に振った。カトラはこめかみに青筋を浮かべながら親方の顔を覗き込み、文句を言いながら柱を蹴り始める。建物が軋む音と共に屋根組からホコリが落ち始め、慌てた職人達がカトラに駆け寄って止めに入る。職人達を吹き飛ばしたカトラは改めて親方を睨んで柱を蹴ろうとするが、足を止めて外の門の方に顔を向ける。カトラは顔を強張らせ、厩舎の外へ走り出しながら職人達に向かって声を張り上げる。


「あなた達!!死にたくなかったら武装して奥に隠れて!!!!」





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