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これ、ホントに呪いの指輪なの?  作者: 彩田(さいた)
二章 カタアギロ到着編
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2-15 来客



 エサンカとジーナが持ってきたパンと果物で夕食を済ませ、引っ越しを終えたラトサリー達は早めに床に就いた。そのせいもあり早起きしたラトサリーは隣のベッドで寝ているミラテースとアドエルを起こさないように静かに着替え、部屋を出て台所へ向かった。台所の扉の隙間から物音が漏れていた。ラトサリーは台所の扉をゆっくり開いて中を覗き込むと、カリフがレードルを手にして鍋の中を眺めていた。気配に気づいたカリフは振り向き、ラトサリーの顔を見て頭を下げる。


「おはようございます。って言うか、早いですね」


「おはようございます、カリフさん。カリフさんこそ早いですね。何を作っていらっしゃるのですか?」


「えぇ。昨日頂いた野菜でスープを作っている所です。あぁ、そうだ、味付けの希望はありますか?カトラさんの調味料があるから結構複雑な要望でもお応え出来ますよ♪」


「そうなんですか?スゴイですね♪そうですね……アドエルも食べるので、激辛以外の味付けでお願いします」


「……あれを口にした事があるんですね……分かりました。ちょっと甘めで調整しますね」


「ありがとうございます♪でも、使っちゃって大丈夫なんですか?」


「問題無いですよ。と言うより、自分が台所にいてカトラさんの調味料一式があるのに使わない方が怒られます」


「そうなんですか……そう言う事なら、調理はカリフさんにお任せしたいわ♪」


「本当ですか♪それじゃぁ、調査で自分がいない時以外は任されました!」


 カリフは嬉しそうにそう言うと箱の中身を物色し始める。ラトサリーは食器の準備を手伝いながら調味料の説明をカリフから受けた。そうしている内に馬の世話を終えたオグマが現れ、アドエルとフードを被ったミラテースが現れ、台所は賑わいを見せた。スープが完成して盛り付け始めた頃にカトラが台所に現れ、鍋の中を覗いて匂いを嗅ぐと嬉しそうに息を吐いた。




 朝食を食べ終わって片付けが一通り済んだ頃、カトラは窓の方に目を向け、オグマに声をかける。


「オグマ、職人さん達が来たわよ。対応しといて」


「おぅ、わかった。って、お前は行かないのか?室長だろ?」


 カトラは外に目を向けながら口を開く。


「もう少し図面の確認をしてから行きたいのよ。責任者にそう伝えておいて頂戴♪」


「そうか……程々にな」


 オグマは苦笑いしてそう言うと勝手口から外へ出て行く。カトラは窓の方を見たまま今度はラトサリーを呼ぶ。


「ラトサリー、お客様よ」


「え?お客様?どなた?」


「昨日の奥さんよ」


「えっ!もういらしたの?」


「ついでに子供が二人」


 ラトサリーは『子供』と聞いて考える素振りを見せ、ミラテースに恐る恐る声をかける。


「あの……ミラテース……」


 ミラテースはラトサリーに顔を向ける事無く口を開く。


「アドエルに社交性を養ってもらいたい、とか言うんでしょ?良いわよ」


 ラトサリーは安堵の息を吐くと勝手口から外に出てジーナ達を出迎えに向かった。




 門の横の通用口から敷地に入るジーナと子供達。女の子を抱っこして大きな籠を持ったジーナと手提げ袋を肩にかけて持った男の子は石造りの建物へと歩を進める。勝手口の扉が開いてラトサリーが現れたのを見たジーナは女の子を降ろし、歩み寄ってくるラトサリーに頭を下げる。


「おはようございます、ラトサリー様」


「おはようございます、ジーナさん。早速いらして下さって、ありがとうございます」


「いえいえ、とんでもないです。引越しして数日は何かと手が必要だと思いまして。何でも仰って下さい♪あ、これ、どうぞ」


 ジーナは食材が入った籠をラトサリーに差し出す。


「あ、ありがとうございます。それで、そちらのお二人はジーナさんのお子様達ですか?」


「えぇ。息子のマルコと、娘のティーナです」


 紹介された子供達は少しオドオドしながらラトサリーに頭を下げる。ラトサリーは受け取った籠を肘にかけ直してから腰を屈め、二人に笑みを向ける。


「マルコと、ティーナね。ラトサリーです、よろしくね♪」


 マルコとティーナは緊張を緩めて笑顔をラトサリーに見せる。ラトサリーは子供達に頷き返してから立ち上がり、ジーナに声をかける。


「とりあえず、家にお入り下さい。今日の予定はそこで考えましょう」



 居間にジーナ達を通し、アドエルとミラテースを紹介したラトサリー。ジーナはミラテースがフードを被っている事を気にする素振りを全く見せなかった。マルコとティーナはアドエルの髪の色に何やら羨望の眼差しを向け、アドエルは今まで向けられた事の無い同世代からの好意に戸惑いを覚えていた。そんなアドエルを静かに見守るミラテースの横で、ジーナは少し残念そうな顔で呟く。


「そうですか……片付けは終わってましたか」


「えぇ……清掃は終わっていましたし、荷物も少なかったので。宮総研の荷物は下手に触ると危ないので私も手伝えませんし……」


 申し訳なさげにそう言いながらラトサリーはお茶を入れたカップをジーナの前に置く。ジーナはションボリした様子で会釈してカップを取って口にすると、驚いた様子でラトサリーに顔を向ける。


「ラトサリー様、このお茶、とっても美味しいです♪」


「お口に合ったようで良かったわ♪それと、普通に『ラトサリー』って呼んで下さい♪」


「そうですか?それじゃぁ、私の事も普通に『ジーナ』って呼んで下さいね、ラトサリー♪って、お口に合った所じゃないですよ♪どこのお茶ですか?王都だとこんな良いお茶が手に入るんですか?」


「え?これは、郊外の町の市場で買った普通の安いお茶ですよ」


「そっ、そんなはずは……普通のお茶でこんな香りが出るなんて……買ったばかりのお茶なら……でもまだ買い出しに行ってないはずだし……有り得ないです」


 ジーナはそう言いながら目を閉じてカップを鼻に近づけ匂いを確かめる。ラトサリーが顔を引きつらせて困っていると扉が開き、勢いよく部屋に現れたカトラはラトサリーに声をかける。


「ラトサリー、お茶を入れたんなら呼んで頂戴よ♪って、なに困ってるの?」


 ラトサリーは困り顔をカトラに向ける。


「いえ、普通のお茶を出したのに普通じゃないって言われて……」


 カトラは目を上に向けながら首を軽く縦に振り、ラトサリーにニヤッと笑いかける。


「そろそろ言っておいた方が良いわね……ラトサリー、あなた……」


 カトラはそこで言葉を止めてラトサリーを見つめる。息を飲むラトサリーを面白そうに見ながらカトラは言葉を続ける。


「あなたが普通だと思っている事が、時々普通じゃない事があるのよ。このお茶はその中の一つね」


「え?でも、普通に市場で買った普通のお茶よ?」


「お茶はね。でも、入れ方が愛好家でも一部の人しかやらない入れ方だ……」


 カトラはそこで言葉を止め、ジーナに顔を向けて笑みを見せる。


「ごめんなさい、挨拶してなかったわ。カトラよ。ヨロシク♪」


「あ……ジーナです。はじめまして」


「ジーナね♪それじゃぁジーナ、そう言う事だから、お茶の入れ方を教えて貰うと良いわ。とっても面倒くさいけど、出来の良さは跳ね上がるわよ♪」


「はっ、ハイ!そうします!」


「それじゃぁラトサリー、そう言う事だから、教えるついでに私が飲む分、沢山入れて頂戴♪」


「カトラ……お茶飲みたいだけでしょ?」


 ラトサリーの冷やかな目をカトラは笑って受け流した。





調味料の種類や具体的な内容は……料理が出てくる話の時にシレっと出せたら良いなぁ、と思っています……

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