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これ、ホントに呪いの指輪なの?  作者: 彩田(さいた)
二章 カタアギロ到着編
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2-14 住居



 応接室から出て帰路に就く一向。カトラに向けられるドートルの小言がある程度聞き取れる程の後方で並んで歩くラトサリーとサーブ。サーブはラトサリーに話しかけようと何度も視線を向けるが、話しかけられずにいた。ラトサリーは静かに笑みを浮かべ、サーブに声をかける。


「サーブ。私はあなたの妻になって良かったと思っています」


「なっ!きゅっ……急にどうしたの?」


 焦るサーブの様子を楽しみながらラトサリーは言葉を続ける。


「サーブ。さっき、ルイーゼ様がカトラの案を受け入れるように誘導しましたよね?子供の事を考えるようにと言って」


「そっ……それは……」


「私の案は全てを守る為に嘘をつく事になる。嘘をつけと人に勧める事に引け目を感じていたから、カトラが案を考えていた事を知ってあんなに喜んだのですよね?」


「いっ、いや、それは……」


「それで、カトラの案を推した事をどう詫びようかと、さっきから挙動不審になっていたんですよね?」


「あっ、あの、それは……」


「真っすぐで純真、アドエルに見せる背中として申し分ないわ。あなたの妻になって、本当に良かった。だから……」


 ラトサリーは頬を僅かに赤らめながらサーブに顔を向け、微笑む。


「何と言って詫びようかなんて考えないで頂戴♪」


「わ、わかった……」


 辛うじて返事をするサーブの様子に満足したラトサリーは前に向き直り、表情を曇らせ口を開く。


「それに……謝らないといけないのは私の方なの」


「なっ!なにを……」


 目を丸くして焦るサーブ。ラトサリーは言葉を続ける。


「あなたが嘘をつく案をどう思うか、分かっていて提示したのだから。あれしか思いつかなかったからと言っても、あなたに心労をかけてしまったわ。本当に御免なさい」


「いや!君こそ謝らないで欲しい!」


 声の大きさに驚いたラトサリーがサーブに顔を向けると、サーブは困った様な顔をラトサリーに向けていた。サーブは憂いを漂わせながら口を開く。


「ラトサリー。俺が……どうにかすると言って帰ったのに何も思いつかなかったのが悪いんだ。本当に済まなかった」


「それなら、やっぱりあなたが謝る必要は無いわ」


「え?な、なんで?」


「だって、言ったじゃない。『あなたが助けたいと思ったのなら私も助けてあげたい』って」


 思わず立ち止まるサーブ。ラトサリーも立ち止まり、サーブに体を向けて微笑む。


「サーブ。たとえ私と意見が分かれても、あなたは心の赴くまま動いて頂戴。気付いたら直ぐに軌道修正するから」


「えっ……でも……」


「あなたの純真さに……純真なあなたに付いて行きたいの。私は……そんなあなたの事を私は……好きになったんだから」


 言いながら顔を真っ赤にさせるラトサリー。サーブが顔のニヤつきを抑えられなくなっている所に前方からカトラの声が二人に向けられる。


「あなた達!人目をはばからずイチャイチャしてんじゃないわよ!早く帰るわよ!!」


 二人は慌てて歩を進めた。




 侯爵家別邸に戻ったラトサリー達はそこから二手に分かれる事になった。サーブは事件の事後処理で別邸に宿泊する事になり、ラトサリー達は引越しの続きに取り掛かった。別邸で待機していたカリフに御者を任せて一行はラトサリー達の荷物を積んだ馬車で引越し先へと向かった。町を東西に分ける川にかかる橋を渡り、西側の町に入って外周の防壁に接した敷地に馬車を乗り入れたカリフ。建物の前で馬車を停めたカリフは荷台に声をかける。


「皆さん、着きましたよ」


 先に降りたカトラは大きな石造りの建物を概観しながら呟く。


「……華奢ね」


 馬車の到着に気付いて表に出て来たオグマはカトラの元に向かいながら口を開く。


「贅沢言うなカトラ。お前が出した条件に合う物件を手配してもらったんだから」


「そうだけど……更に華奢ね」


 木造の厩舎を見ながらそう呟くカトラ。顔を引きつらせて言葉を詰まらせるオグマにカリフが声をかける。


「工程表だと、今日は休工日ですね。厩舎と倉庫の修理は明日からですね。どうします?」


「そっ、そうだな……。母屋の具合を確認しながら考えるか。カトラ、お前も一緒に来るか?」


「いえ、任せるわ」


 町を囲う丸太の防壁に目を向けながら答えるカトラを一瞥したオグマはカリフと共に石造りの建物へと向かう。馬車から降りたラトサリーはカトラに声をかける。


「カトラ。条件って、どんな条件を出したの?」


「大した事は言ってないわよ。森側の門の近くで馬車を回せる位の広い敷地で母屋と別棟があって大きな厩舎があって獲物の処理が出来て氷室に使える部屋があって排水経路がある所、って位よ。可能なら居住棟は石造りが良いって言ったけど」


「ふーん……全て揃っていそうね。なら良いじゃない」


「そうだけど、造りが華奢なのよ」


「そう?でも、ウチの厩舎より新しいし、良いんじゃない?」


「何言ってるの?あなたの家の厩舎、構造体はこれでもかって位補強されていたわよ。それと納屋も」


「え?そうなの?」


 二人が厩舎の外壁を見ながら話していると二人の肩に手が置かれる。二人が振り返るとミラテースが呆れ顔を二人に向けていた。ミラテースは軽く溜め息をついて口を開く。


「アンタ達、雑談は構わないけど、体は動かしなさい」


「「はーい」」


 息ピッタリに返事をした二人は馬車の荷台から荷物を降ろし始めた。




 石造りの建物の中は屋根裏部屋まで清掃され、寝具と家具は既に据え付けられていた。居住者を迎え入れる準備が整っている室内に荷物を運び終えたラトサリーとミラテースはアドエルと共に台所の使い勝手の確認を始めた。オグマとカリフはカトラの荷物の処理に忙殺されていた。開封された荷物から出される得体のしれない器具や壺を棚に並べながら楽しそうに指示を出すカトラ。カトラの荷物の処理が半分程度進んだ頃、カトラは不意に手を止め、窓へと進み外を覗いた。


「ラトサリー。お客様よ」


「お客様?」


 ラトサリーは首を傾げながら窓に近づき外を覗くと、道のかなり先に見える二つの人影が敷地に向かって来ていた。近づいてきた片方は大きな籠を持った見覚えのある男性で、もう片方は見知らぬ女性だった。二人が敷地に入って煉瓦で舗装された通路を中程まで進んだ所でラトサリーは扉へと進みながら手で髪を軽く整え、外に出て二人に頭を下げてから声をかける。


「エサンカさん。どうなされたのですか?」


 エサンカは手を振って応えると笑顔で口を開く。


「サーブから頼まれて、食材を持ってきたんだ」


 エサンカはそう言って籠をラトサリーに差し出す。


「あ、ありがとうございます。それで、そちらの女性は?」


 籠を受け取りながらエサンカに尋ねるラトサリー。女性はラトサリーに向かって頭を下げながら口を開く。


「エサンカの妻でジーナと申します、ラトサリー様」


 ラトサリーは慌てて頭を下げ返す。


「ラトサリー・ランダレアです」


 ラトサリーが頭を上げるとジーナも頭を上げ、ラトサリーに笑みを向ける。エサンカはジーナの背中に手を回し、ラトサリーに顔を向ける。


「移住して直ぐは分からない事が多いと思って、妻を連れて来た。明日から暫く通わせるから何でも言いつけてくれ。サーブには話を通してあるし、ジーナも快諾してくれているから問題無いぞ♪」


 ジーナは満面の笑みをラトサリーに向ける。


「私達の恩人の役に立ちたいの。何でも言って下さいね、ラトサリー様♪」


 何か圧を感じるジーナの笑みにラトサリーは引きつった笑みで頷き返すのが精一杯だった。





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