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これ、ホントに呪いの指輪なの?  作者: 彩田(さいた)
二章 カタアギロ到着編
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2-9 思案




「その頬はどうしたんだいラトサリー?」


 幌馬車の荷台の中で灯されたロウソクの明かりが照らすラトサリーの左頬は赤く腫れていた。ラトサリーはムスッとしながら答える。


「ミラテースにつねられた……『うるさい、早く行け』って……」


「そ……そう……それは災難だったね」


「全くよ……カトラったら……」


 苦い顔で頬を摩るラトサリーにサーブは微笑みかける。


「今度は何があったんだい?」


「それが、カトラったら……いいえ、言う程の事じゃないわ。本題に移りましょう」


 ラトサリーは顔全体を赤く染めながらそう言うとサーブの向い側に腰を下ろす。サーブはヤレヤレと肩をすくめながら口を開く。


「済まない、ラトサリー。君も休んで疲れをとりたいだろうに」


「良いのよ。あなたが助けたいと思ったのなら、私も助けてあげたいから」


「……本当にありがとう、ラトサリー」


「それじゃぁ……早速なんだけど、同郷の……エサンカさん?でしたよね。エサンカさんを呼んで来て」


「え?エサンカさん?もう寝てるかも……」


「起こして無理にでも連れてきて。情報が欲しいの。それで、連れて来る時に『みんなの減刑の為に情報が必要だ』と予め伝えておいて欲しいの」


「わ、わかった」


 サーブは答えながら立ち上がり、馬車から飛び降りて建物へと急いで向かった。




 エサンカを連れて馬車に戻ったサーブはエサンカをラトサリーの前に座らせた。サーブがエサンカの隣に座って口を開こうとする前にエサンカはラトサリーに顔を向けて口を開く。


「ここに来ながらサーブから事情は聞いた。俺が分かる事なら何でも答える。何でも聞いてくれ」


「ありがとうエサンカさん。それでは……まず、当主のルイーゼ様と子供達はケルマー侯爵の悪事を本当に知らなかったのでしょうか?」


「そうだな……知らなかったと思う。少なくとも俺が見聞きした限りではそう思うぞ」


「そうですか……では次に、今回のサーブの企てが上手くいったとして、不満を抱く人はいますか?」


 エサンカは腕を組んで上に目を向け眉間にシワを寄せる。


「うーん……そうだなぁ……積極的に関わった奴は処刑、人質を取られて仕方なく加わった奴は減刑、関与してなかった当主と子供達の身と爵位を守る……だったな……そうなると……」


 悩むエサンカにラトサリーは問いを加える。


「人質を取られていた方々とその家族の皆様はどうですか?当主である婦人と子供達が不問となる事についてはどう思うでしょうか?」


「……まぁ、あの家の状況はみんな理解しているから、あからさまに不満を口にする奴はいないと思うぞ。そもそもこっちは減刑される身だし、文句は言わないと思う」


「そうですか。それでは積極的に関わった者達の家族はどうでしょう?その方々は侯爵一家の実情をより詳しく理解していると思いますが」


 エサンカは目を丸くすると険しい顔でラトサリーを睨む。


「おい、アイツらの家族は処罰されないのか?あいつら、人質の監禁に協力してたんだぞ!家族ぐるみで加担して甘い汁啜ってた奴らを放免するとか言ったら、俺たちが許さない!」


 ラトサリーはエサンカの怒気を正面から受け止め口を開く。


「それは、積極的に関わっていた者の家族は皆協力していた、と言う事でしょうか?」


「あぁ!そうだ!!」


「そうですか……それでは、最後に……怒らないで下さいね」


 エサンカは眉をピクっと動かすとバツの悪い顔をしてラトサリーから目を逸らす。


「っ、済まない、つい興奮しちまった」


「いえ、大丈夫です。それでは……人質を取られていた皆様は、強盗に参加した際の報酬を受け取っていましたか?」


「……いや、何も受け取ってない。少なくとも俺と、俺の周りにいた奴らはな」


「そうですか……答えて下さってありがとうございます。ご協力ありがとうございました」


「そうか?もう無いのか」


「えぇ、とても助かりました。それで、この件は誰にも話さないで下さいね。漏洩すれば私達もあなたもタダでは済まないと思いますので」


「あぁ、分かってる。大丈夫だ、俺はサーブに命を託した身だ。信用してくれ」


「そう言って頂けると嬉しいです。それでは、何か新たに聞きたい事が出来ましたらお呼びしますので、その時はご協力お願いします」


「わかった。いつでも呼んでくれ、飛んで来るぞ♪」


 エサンカはそう言って立ち上がり、サーブと共に馬車の荷台から降りていった。二人を見送ったラトサリーは息を大きく吐き、左手を頬に当てて目を閉じた。


 エサンカを送り届けて馬車に戻ったサーブはラトサリーに目を向ける。目を閉じて座るラトサリーは左人差指で左頬をポンポン叩いていた。サーブは声をかけずにラトサリーの向いに座り、彼女が目を開くのを待った。



幌馬車の中を照らし続けて短くなったロウソクの交換をしながらラトサリーを待ち続けるサーブ。サーブが二度目のロウソク交換を終える寸前、ラトサリーは頬を叩く指を止め、目を開いてサーブに目を向ける。


「サーブ、ちょっと良い?」


「っ、何だいラトサリー?っ、ちょっと待って」


 サーブは火を灯したロウソクを燭台に急いで立て、ラトサリーの前に座る。


「何?」


「おとぎ話みたいな案を思いついたんだけど、聞いてくれる?」


 サーブは目を輝かせると両手でラトサリーの右手を掴み上げ、興奮ぎみに口を開く。


「本当かい?!流石だよラトサリー!聞かせてよ!!」


 ラトサリーは目を丸くして息を飲む。直後、ラトサリーの体は震え始める。ラトサリーは肩をすくめて顔を歪め、サーブから目を逸らす。


「……サーブ……ゴメン……離して……」


 サーブは慌てて手を離し、顔を曇らせてラトサリーから目を逸らす。


「……済まない、ラトサリー……つい興奮して……」


 ラトサリーは肩で息をしながら寂し気な笑みをサーブに向ける。


「ううん……大丈夫……それじゃぁ話すけど、これは誰も案を出せなかった時の最終手段にして頂戴」


「……うん、わかった。それじゃぁ、聞かせて」





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