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これ、ホントに呪いの指輪なの?  作者: 彩田(さいた)
二章 カタアギロ到着編
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2-8 委託





 サーブはカトラの腕を掴んで必死な顔で懇願する。


「お願いします!カトラさん!行かないで下さい!協力して下さい!!」


「放しなさい!!あなたの仕事でしょ!自分で考えなさい!」


 物凄く嫌な顔をしてサーブの腕を振りほどこうとするカトラ。部屋から出て行こうとするカトラの腕をサーブは必死に引っ張る。


「そこをどうにか!カトラさんの知恵を貸して下さい!」


「そもそも一度みんなで打ち合わせしたじゃない!何でそんな超絶面倒な話にして帰ってくるのよ!!」


「だって可哀そうだったから!仕方ないじゃないですか!!」





 侯爵家当主ルイーゼの意向を汲む事に決めたサーブ。難題に取り掛かる前にサーブはドートルと話し合い、罪人の選別と拘置に取り掛かった。ケルマーと部下は庁舎の牢屋に運ばれた。牢屋の責任者は拘束され運ばれて来た面々を見て酷く狼狽したが、状況の説明をドートルから受け冷静さを取り戻した。サーブと同郷のエサンカ達の協力を受け、監禁・強盗に関与していた者達を侯爵家邸宅から洗い出し、捕らえて収監した。捕らえた男達の家族は侯爵家別邸の牢屋に収容された。

 サーブは人質を取られていた男達を侯爵別邸に集め、家族に引き合わせた。解放された事を喜ぶ声が敷地内に響き渡った。ある程度落ち着いた所でサーブは皆を集め、現状を伝えた。無罪放免とはいかない事と数日は別邸に留まる必要がある事が告げられ、皆は顔を曇らせた。だが、刑が軽く済むよう最大限努力する事をサーブは宣言し、彼らの表情は僅かに和らいだ。被害者である男達とその家族は別邸の部屋を分け合いながら留まる事となった。

 当日の処理を終え、サーブがラトサリー達の元に戻ったのは日が落ちてからだった。ラトサリー達は侯爵家別邸の一室を使わせてもらっていた。食事を軽く済ませたサーブは経緯をラトサリー達に説明し、良い案は無いかと尋ねた。呆れ顔をサーブに向けるラトサリー達。カトラは溜め息をついて部屋を出て行こうとしたが、サーブはカトラの腕を掴んで引き留めた。




「だからって!自分でどうにか出来ない事を安請け合いしてくるんじゃないわよ!!」


 左腕を掴まれているカトラは右手でサーブの手を剥がそうとする。カトラの腕を両手で掴むサーブは握る力を強め、カトラの腕を引っ張りながら声を張る。


「思いつくと思ったんですよ!でもダメでしたとか言えないじゃないですか!お願いしますカトラさん!!」


「イヤよ!今日は関係無い事に協力しすぎて疲れたの!もう寝るの!放しなさい!!」


「いやです!って、そうだ!何か良い案を考えてくれたら放してあげます♪!」


 その言葉にカトラはこめかみに青筋を浮かばせ、威圧的な笑みをサーブに向ける。


「そーゆー事言う?それなら私にも考えがあるわ……」


 カトラはそう言うと右手で持っていた制服の外衣を捨て、右手を自分の胸元に伸ばすと服の紐を解き始める。


「っ!何してるんですかカトラさん!!」


「寝る!ここで!脱いで寝る!……あなたは出て行きなさい♪」


 悪い笑みを浮かべてそう言ったカトラは右手で自分の襟を掴み、頭を襟に通して服を脱ごうとする。慌てたサーブは左手でカトラの右腕を掴んで叫ぶ。


「そんな幼稚な事やめて下さい!寝ても良いから何か案を出して下さい!!」


 カトラの胸元に目を向けないようにしながら必死にカトラを押さえるサーブ。


「いーやーだー!!ねーるーのー!!!」


 本気で服を脱ごうとしているカトラを見かねたラトサリーは溜め息をついて立ち上がり、カトラの背後に回り込んでカトラの右腕を掴む。カトラは動きを止めると後ろに顔を向け、ラトサリーを睨みつける。


「っ!ラトサリー……夫婦で良い度胸してるじゃない……」


 ラトサリーは呆れ顔で言葉を返す。


「カトラ……私の旦那様に何見せようとしてるの……」


 冷たい目でそう言ったラトサリーはその同じ目をサーブに向ける。


「サーブ。カトラを放してあげて」


「えっ?……でも!」


「放してあげて。お願い」


 ラトサリーの優しい口調とは正反対の眼差しに気圧されたサーブは反射的にカトラから手を離す。サーブから解放されたカトラは体から力を抜き、右腕を掴むラトサリーの手を左手でポンポンと叩く。


「もう放して大丈夫よ♪」


「全く……あなたって人は」


 ラトサリーは呆れ顔に笑みを混ぜながらカトラから手を離す。カトラは着衣の乱れを直し、投げ捨てた外衣を拾いながらサーブに向かって口を尖らせる。


「あなた、本気出し過ぎよ。他の人だったら折れてるわよ」


「……スミマセン」


 気を落としてカトラに頭を下げるサーブにラトサリーは声をかける。


「サーブ、馬車に行きましょう。アドエルも寝る時間ですし、他の部屋の皆様も休みたいでしょうから」


「……わかった」


 トボトボと扉へと進み部屋から出て行くサーブ。ラトサリーはアドエルに歩み寄りながらミラテースに声をかける。


「ミラテース。アドエルを宜しく」


「分かったわ」


 ラトサリーはアドエルの前で膝に手をついて屈み、アドエルの頭を撫でる。


「アドエル、おやすみなさい」


「うん、おやすみなさい」


 笑顔で答えるアドエルにラトサリーは微笑み返して立ち上がり、カトラに歩み寄って声をかける。


「カトラ、左腕は大丈夫?」


 カトラは手首をクルクル回しながら首を傾げる。


「まぁ、これ位だったら大丈夫でしょ。朝になっても気になる様だったらオグマに回復してもらうわ」


「そう?……ごめんなさいね、サーブにはしっかり言っておくわ」


「そうして頂戴。私の就寝時間を奪わないように言っておいて」


「っ、そっち?……腕のほうじゃないの?」


「え?……折れてないし、問題無いでしょ」


「でも、アザになってない?ちょっと見せて」


 そう言ってラトサリーが伸ばす右手をカトラは掴んで阻止する。


「アザ程度なら大丈夫だって。実験とかで負った傷とか沢山あるし」


「そう?……分かったわ。あと……その……」


 ラトサリーは左手をカトラの手に添え、目を下に向ける。


「ん?何?あと、何?」


 首を傾げるカトラにラトサリーは俯いたまま口を尖らせて囁く。


「あんまり……肌を晒すような……さっきみたいな事はしないで……」


 首を更に傾げたカトラはラトサリーの様子を伺い、眉をピクっと動かすと怪しい笑みを浮かべてラトサリーの顔を覗き込む。


「あら、御免なさいね♪あなた以外の人に肌を見せようとして♪そんなに好意を寄せてくれてるなんて、嬉しいわ♪」


 ラトサリーは顔を上げてカトラを睨む。


「変な事言って誤魔化そうとしないで!あなたはもっと……もっと……」


「もっと、何よ?」


 ニヤニヤして尋ねるカトラにラトサリーは真剣な眼差しで答える。


「……もっと、自分が魅力的だという事を自覚して自重して!」


 予想外の指摘に目を丸くするカトラ。ラトサリーは憂いを滲ませた顔をカトラに向けるが直ぐに目を逸らし、躊躇いがちに口を開く。


「サ……サーブが、あなたの事を……その……気に……気になり始めたらって…………」


 顔を赤らめ言葉を詰まらせるラトサリー。カトラは暫し思いを巡らし、眉をピクっと動かすと再び怪しい笑みを浮かべてラトサリーの顔を覗き込む。


「あらぁ?やっぱり私に好意を寄せてくれてるんじゃない♪嬉しいわ♪」


「だから!そうやって誤魔化そうと……」


「冗談よ♪」


 カトラはラトサリーの言葉を遮り、右手でラトサリーの上腕をポンっと軽く叩くと柔らかい笑みを浮かべる。


「御免なさい、今後は気を付けるわ♪だから安心して♪」


 やけに素直な謝罪を口にするカトラに言葉を失うラトサリー。その動揺に気付いたカトラはラトサリーに顔を寄せ、少し照れた様子で口を開く。


「お詫びに良い事を教えてあげるわ」


「っ?……な……何?」


「私の好きな男はね……背が高くて、細身なのに強くて、知性と品性を備えた落ち着いた男なのよ。強くて良い奴なだけのサーブは眼中にないし、襲われそうになったら返り討ちにするから安心して♪」


 カトラは頬を少し赤らめてそう言うと満面の笑みをラトサリーに向ける。ラトサリーは笑みを返しながらもこめかみに青筋を浮かばせる。


「……安心はできたけど、私の旦那様を悪く言わないで」


 カトラとラトサリーの小競り合いは暫く続いた。





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