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これ、ホントに呪いの指輪なの?  作者: 彩田(さいた)
一章 王都編
44/120

44:孤児院9


 サーブは馬車を利用して体に負荷をかける鍛錬をしながら皆の帰りを待っていた。建物の方からする物音を聞いたサーブは手を止めて馬車から手拭を取り出し、汗を軽く拭きながら馬車の後方に目を移す。通用口からラトサリー達が出て来て馬車へと向かって来るのを見たサーブは身なりを軽く整え、彼女達へと歩み寄る。ラトサリーはサーブへと歩み寄りながら微笑みかける。


「サーブ、お待たせしました」


「全然♪それで、その子だね?紹介してくれないか?」


 はたから見ても高揚しているのが分かる様子でそう尋ねるサーブ。ラトサリーは半身になり後ろを手で指す。


「アドエルよ。それと、世話役のミラテースよ」


「世話役?そこまで決めてくるなんて、流石だねラトサリー♪」


 サーブはラトサリーに笑顔でそう言うとミラテースに抱っこされるアドエルの前に移る。サーブは膝を少し曲げ、アドエルに目線を合わせて笑顔を見せる。


「アドエル。これからよろしく!」


 アドエルは若干顔を強張らせながら頷き返す。サーブはクスっと笑って身を起こし、ミラテースに微笑みながら頭を下げる。


「ミラテースさん。よろしくお願いします」


「こちらこそ」


 素っ気なく答えるミラテース。特に気にする事無くサーブは笑顔のままラトサリーに声をかける。


「それじゃぁ、帰ろうか」


 サーブはそう言って馬車へと移り足台を出し始める。ミラテースはカトラに近づき小声で尋ねる。


「ねぇ、良い奴だってのは分かる気がするけど、この能天気男、頼りになるの?」


「そうねぇ……どういう頼り方をしたいかによるわねぇ。謀略を巡らすより引っかかる方の人種だし」


 そう言われ眉をひそめるミラテース。カトラは静かに笑いながら言葉を続ける。


「でもこんな奴だから、この子の幸せの為なら何でもすると思うわよ」


 そう聞かされても釈然としないミラテース。そんな彼女に向かって馬車の方から声が上がる。


「当然です!アドエルの為なら何でもしますよ!!」


 ミラテースは慌ててサーブに目を向けと、サーブは屈託の無い笑みを見せていた。ミラテースは顔を引きつらせながらサーブに尋ねる。


「あの……どこまで聞こえてました?」


「全部聞こえてましたよ。俺、耳いいんで♪」


 笑顔で答えるサーブを目にして狼狽えるミラテース。カトラはケラケラ笑いながらミラテースの肩に手を置く。


「コイツに聞かれたくないなら、もっと小さな声で話さないと♪」


 そう言われミラテースは恨めしそうな目をカトラに向ける。


「そう言う事は予め言っておいてよ!」


「無茶言わないでよ、そんな話の流れじゃなかったでしょ♪」


ニヤニヤしながらミラテースの怒気を飄々と受け流すカトラ。サーブは笑顔を崩す事無くミラテースに声をかける。


「ミラテースさん、俺の事を良い奴だと思ってくれて嬉しいです♪それに……」


 意外な言葉に目を丸くするミラテースに対してサーブは笑顔のまま言葉を続ける。


「色々と言われ慣れてますから大丈夫ですよ♪」


 そう言われたミラテースは引きつった笑みをサーブに向け軽く頭を下げる。サーブは笑顔で応えてから足台の準備の続きに取り掛かる。そんなサーブを見てラトサリーは軽く溜め息をついて手を動かすサーブの横に歩み寄り、静かに声をかける。


「サーブ。言われ慣れているなんて、そんな悲しい事は言わないで下さい」


 サーブは手を止めてラトサリーを見上げると、ラトサリーの目は悔しさを漂わせていた。ラトサリーは少し顔を歪めながらサーブに向かって口を開く。


「あなたが能天気と言う言葉を甘受すれば、アドエルが不利益を被る事になります。これまでは言われても我慢する必要があったと思います。でも、新天地に移る訳ですし、今後は苦言を呈する位はして下さい」


 サーブは目を丸くして動きを止めるが、決まりが悪い顔をしてラトサリーから顔を逸らすと作業の続きを始める。足台の準備を終えたサーブは立ち上がると軽く息を吐き、ラトサリーに真剣な顔を向ける。


「……君の言う通りだと思う。これからは気を付けるよ」


 サーブはそう言ってから緊張を緩めてミラテース達に声をかける。


「お待たせしました、乗って下さい」


 促されたカトラは馬車へと移り乗り込む。ミラテースもそれに続くが、乗り込む前にサーブの前で足を止め、サーブの方を見ないで口を開く。


「あの……さっきのは……あれだ。上手い言葉が出て来なかっただけだ。悪意はない」


 言い終えると同時に急いで馬車に乗り込むミラテース。目を丸くするサーブの横でラトサリーはその様子を見て満足そうに笑みを浮かべる。そんなラトサリーに馬車の上からカトラが声をかける。


「ちょっとラトサリー。悦に入ってないで早く乗ってよ」


 ラトサリーは慌てた様子でカトラを見ると、カトラはニヤニヤしながらラトサリーに向かって手を差し出していた。ラトサリーは頬を赤らめながらカトラの手を取り馬車に乗り込んだ。




 孤児院からの帰り道、ラトサリーは約束通りミラテースにカトラとの関係について話した。頭の中で音が鳴り指輪が外れないと聞かされたミラテースは怪訝な顔で指輪に目をやったが、口を挟む事無く聞き続けた。宮総研に外せるか試してもらって上手く行かなかった事、国に指輪の能力を知られ保護観察対象となった事が話された。時系列を追った話を聞き終えたミラテースは驚きと疑惑の混ざった眼差しをカトラに向ける。


「アンタみたいな奴が室長って、……大丈夫なの?その組織」


 カトラは安定のヘラヘラ顔をミラテースに向ける。


「ダメなんじゃなーい?♪」


 顔を歪めるミラテースを見て嬉しそうにヘラヘラするカトラ。ラトサリーは呆れた顔に笑みを混ぜミラテースに声をかける。


「ミラテース。この人、普段はこんな感じだけど、潜んでいたあなたを見つけたのは彼女よ。それに、さっきも要所で機転を利かせて助けてくれたじゃない?」


「機転って、酷い目にあったわよ!何よハゲって!…………でも、そうね」


 ラトサリーは同情するかのように引きつった笑みを浮かべながら口を開く。


「確かに、カトラより室長が似合いそうな人に心当たりはあるけどね」


 その言葉にカトラは目をラトサリーに向け、不敵な笑みを浮かべる。


「それってウヌカの事を言ってる?でも、あの子の本性知ったらそんな事言えなくなるわよ♪」




 時系列を追って話をしたラトサリーだったが、王子との件は話さなかった。それを自ら話せる程に回復していないと判断したからだ。カトラもそれを察して口を合わせた。ミラテースがある程度質問を重ねていれば話さざるを得ない状況になっていたであろう。だが、カトラのいい加減な受け答えに振り回されたミラテースは気を削がれ、そこに辿り着かなかった。




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