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これ、ホントに呪いの指輪なの?  作者: 彩田(さいた)
一章 王都編
41/120

41:孤児院6


 ラトサリーは立ち上がらずゆっくりとその女性に体を向け、改めて頭を下げる。


「応じて下さりありがとうございます」


 女性は警戒心を感じさせる視線をラトサリーにぶつけながら問いかける。


「で、どういう話?」


「はい。ですが、話の前に少々お待ち頂けますか?」


 ラトサリーはそう言うとカトラに顔を向ける。


「カトラ、扉を押さえておいてくれる?誰も入って来られないように」


「分かったわ。って、あっちにもあるじゃない……」


 カトラはブツブツ言いながら廊下側の扉の方に進み、鍵がかかっている事を確認してから扉の横にある棚を静かに持ち上げて移動させる。廊下側の扉を棚で塞いだカトラは腕をプラプラさせながら間仕切壁にある扉へと歩きながらラトサリーに目線を送る。カトラに頷き返したラトサリーは改めて女性に顔を向け、軽く頭を下げてから口を開く。


「お待たせしました。これで姿を見られる事は無いと思います」


 そう言われた女性はカトラの方に顔を向けると、カトラは間仕切側の扉に寄りかかりながら笑顔で女性に向かって手を振っていた。女性は口角を少し上げるとフードを少し上げ、幼さを僅かに残したハシバミ色の瞳をラトサリーに向ける。


「気遣ってくれてありがとう。それで?」


「はい、それでは……あなたはこの施設がどういう所かはご存じですよね?」


「勿論」


「私達は養子をもらう為に此処にきました。できればこの子を養子に迎えたいと考えています」


「そう……」


「反対はされないのですか?」


「もらってくれるのなら別に」


「そうですか。それで、この後あなたはどうなさるのですか?」


「この後?…………あなたに言う必要は無いわ」


「一年以上の長きに渡りこの子を見守ってきたあなたの事です。私達がこの子を引き取ってからも見守るつもりなのではないですか?」


 女性はラトサリーから目を逸らす。ラトサリーはそんな女性に微笑みを向け、本題を切り出す。


「もし良ければ、この子の世話役として一緒に来て頂く事はできないでしょうか?」


 女性は驚いた顔をラトサリーに向けるが、目を泳がせて俯くと肩を震わせ始める。肩を震わせたまま女性はゆっくりと顔を上げ、ラトサリーを睨みつける。


「なぜ私が他人にこの子を……アドエルを託そうとしたと思う?」


 そう言うと女性はフードを乱暴に外す。ラトサリーはフワっと舞う綺麗な銀髪に目を奪われるが、髪と共に晒された耳を見て目を丸くする。


「っ!その耳……森の民?でも……森の民で褐色なんてこの大陸には……」


 褐色の肌でありながら長く尖った耳を持つ彼女を見て動揺するラトサリー。女性はそんなラトサリーを鼻で笑うと更に彼女を睨みつける


「この大陸には私が……この子を安全に育てられる場所が無い。森では褐色の肌の者の居場所は無いし、平野や山でこの耳を晒せばこの子にも危害が及ぶ。だからこの施設に託したんだ。そんなヤツに世話役が務まると?」


 厳しい現実を突き付けられたラトサリーは目を逸らして左手の平を左頬に当てる。その様子を見た女性は呆れたような笑みを浮かべてフードを被ろうとする。その時、扉に寄りかかるカトラは女性に声をかける。


「隠してれば大丈夫よ♪」


 女性は目を丸くさせて扉の方に目を移す。そこには両手を耳に当ててニヤニヤしながら女性に視線を送るカトラがいた。女性が動きを止めたのを見たラトサリーは慌てた様子で女性に向かって口を開く。


「そっ、そうですよ!隠せば良いんですよ!それに、私達は森の開拓をする予定ですので、安全に住まう場所もそのうち提供出来ると思いますよ♪」


「森の開拓?……だが、すぐには出来ないだろ?」


「いや、それは……それまでは……そう!外出が伴う用事は私がします。買い物とか、出来る事は私がしますから!」


「それでは世話役の意味があんまり無くないか?……何でそこまで食い下がる?」


「そうですね……」


 ラトサリーはそう言うと左頬から手を離し、女性にくっついて離れないアドエルに目をやりながら口を開く。


「この子はあなたと一緒にいたい様ですし」


 ラトサリーは女性に目を移し直して更に口を開く。


「それに、あなたはアドエルに気を遣わせずに一緒に暮らしたくはないですか?」


 そう言われた女性はハッとした顔をしてアドエルに顔を向ける。女性の視線に気付いたアドエルは女性を見上げて笑顔を見せる。アドエルに微笑み返す女性を見たラトサリーはすかさずアドエルに声をかける。


「ねぇアドエル?あなた、この人の事、好き?」


 アドエルは女性にくっついたままラトサリーに顔を向け、笑顔で答える。


「うん!だいすき!」


「この人と一緒にいたいわよね?」


「うん!でも、『このひと』じゃないよ。ミラテースだよ」


「そうなの?ミラテースって言うのね?教えてくれてありがとうアドエル♪」


 名前を出された女性は驚いた顔をアドエルに向ける。ラトサリーは動揺する女性を覗き込み、笑顔で語りかける。


「ねぇミラテース?アドエルはあなたと一緒が良いって言っていますよ?」


 ミラテースは困った顔でラトサリーから目を逸らせる。ラトサリーはミラテースの視線の先に回り込み意地悪げな笑みを浮かべて彼女に尋ねる。


「まさか、アドエルを置いて何処かに行ったりしないですよね?」


 ミラテースは恨めしそうにラトサリーを睨みつけるが、ラトサリーは笑顔でそれに応じる。膠着状態が暫し続いたが、ミラテースは上着が引っ張られる感触に気付く。ミラテースが顔を向けると、そこには悲しげな顔をミラテースに向けるアドエルがいた。アドエルは顔を歪ませながらミラテースに口を開く。


「ねぇミラ?どこかにいっちゃうの?やだよ、いっしょにいてよ」


 ミラテースは困った様子でアドエルに笑みを向ける。


「大丈夫ですよ。ずっと一緒にいますよ」


「ほんとうに?」


 心配そうに尋ねるアドエル。ミラテースはアドエルの肩に手を置き、笑顔で彼に頷き返す。アドエルが笑顔を取り戻した事を見て取ったラトサリーはミラテースに近づき、笑顔で囁く。


「それじゃぁ、アドエルと一緒に来て下さいますよね?」


 ミラテースは笑顔を引きつらせながらラトサリーに顔を向ける。


「アンタ……良い根性してるわ……」


 二人のやり取りを見ていたアドエルは不思議そうな顔をミラテースに向ける。


「ねぇミラ?ぼくたち、どこかに行くの?」


 返答に困るミラテースにラトサリーは笑顔で声をかける。


「ミラテース。あなたから説明して下さる?」


「アンタ……本当に良い根性してるわね……」


 ミラテースは諦めたかのように溜め息をつくが、急にニヤリと笑みを浮かべてアドエルに顔を向ける。


「アドエル。ここを出てこの人の家に行くの。それでこの人の子供になるの。嫌なら嫌って言いなさい」


 ミラテースはアドエルにそう言ってからラトサリーに顔を向け、不敵な笑みを浮かべる。ラトサリーは苦笑いを浮かべてミラテースを見返す。アドエルは二人を不思議そうに眺めながら首を傾げ、ミラテースに声をかける。


「いいよ。ミラもいっしょなら」


「ここに居たいなら嫌って言っても良いのよ」


 ミラテースはそう言ってから再びラトサリーに向かって不敵な笑みを見せる。ラトサリーは笑顔でミラテースを睨み返す。アドエルは二人の様子を不思議そうに眺め、急に笑顔を浮かべるとミラテースに顔を向ける。


「この人といっしょに行こうよ。二人とも、さっきからたのしそうだし♪」


 ミラテースは驚いてアドエルに顔を向け、顔を引きつらせる。ラトサリーも顔を引きつらせるが、無理矢理笑顔を作りミラテースに声をかける。


「ア……アドエルもこう言っていますし、決まりですね♪」


 ミラテースは上を向いて深いため息をつくと、鋭い視線をラトサリーに向ける。


「分かったわ……でも、あなた達がこの子の親として不適格と思ったら……分かってるわよね?」


 ラトサリーはミラテースの真摯な視線を正面から受け止める。


「そうね、そうならない様に努力するわ」


 そう言ってラトサリーは満足気な笑みをミラテースに向けた。




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